エプソン CP−800について


CP_800
金属製ボディが好印象だが、一寸垢抜けないデザインがエプソンか。

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


CP_800
 ライカ判換算で38mmF2.4と一寸明るい単焦点レンズ。

CP_800
当時はコンパクトとされたボディ。
現在の視点では大柄だが、ホールディングはしっかりとしやすい。

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 撮影画像のクオリティは☆マークで表示される。解りやすい。
 モードの切り替えダイヤルにはロック付き。

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 無記名のボタンが液晶ビュワーの脇にずらりと並んで威圧感が有る。
 その用途は液晶ビュワー内に表示される。

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 「CP−800」のロゴ。

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 マニアル撮影(露出)モード。ゾーンフォーカスでMFも可能。

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 プログラム撮影(AE)モード。ノーマルを含めた4つのシーンモードを搭載。

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 カメラ設定モード画面。

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 電源は単三型電池2本。記録媒体はコンパクトフラッシュ。

 流石の拙僧も、200万画素以下のデジカメの購入は慎重になっている。理由はネットオークションでも捌けないからだ。実際にはPC上に展開する画像などは200万画素級で沢山だと思っているのだが、市場は冷酷なのだ。なので本カメラを見たときも、過去に手に入れた色違いのCP−800Sだと思い、その100円と言う刺激的な価格にも関らずスルーするつもりだった。しかし、よく見ると何か足りない。何と本カメラはSが抜けた「CP−800」だったのである。どの辺りが違うのかは分からないが、と言うか多分殆ど同じ物だと思えたが、一寸琴線に触れる物があって拾い上げた。実際に調べてみるとデジタルズームのファームウェアが更新になったほか、カラーバリエーションが増えた位で違いは無いようだ。もっとも、価格は2万円くらいCP−800Sの方が安い。その点が一番の違いだろう。もしかしたら安いチップを使っていたりするのかもしれないが、運用上は変わらないな。しかし、実際に使ってみると、本カメラの多彩な機能を改めて実感したので報告させていただきたい。
 まず、本カメラの大きな特徴を3つ上げてみよう。それは、本来200万画素級の受光素子から300万画素級出力画像を得る補完処理「Hypict」、メニューの階層化を極力廃したインターフェイス、そしてマニアル露出やMFなどの多彩な撮影モードである。まずは基本的な諸元を紹介を経て、撮影しながらそれらの特徴を取り上げたい。
 受光素子は前述の通り200万画素級であり、レンズはライカ判換算で38mmF2.4と少々明るい単焦点レンズを搭載している。電源は単三型電池2本を使用し、記録媒体はコンパクトフラッシュである。デザインはエプソンらしい垢抜けなさがあるが、金属製外装がそれなりに高級感を持たせている。当時は200万画素級デジカメとしては最もコンパクトなボディマスだったそうだ。どうも、本カメラが登場した1999年と言うのはこういったプロパティを持つ金属外装で単三型電池2本仕様の単焦点デジカメが高級デジカメとしてプチ流行したようである。勿論、フィルムカメラの同様な流行で登場したニコン28Ti/35TiやミノルタTC−1等に比べれば格に差はあるが、耐久年数の少ないデジ物としては力が入っている。レンズはオリンパスのC−21や三洋のDSC−SX150と同じ物のようだ。DSC−SX150万画素級だが受光素子の大きさが同じなので焦点距離は変わらない。開放の近接撮影では2線ボケが目立つが絞り込むとフォーカスもきりりと締まった良いレンズである。同じ150万画素級のファインピクス1500も同じプチ流行の範疇に入るだろう。
                 ☆              ☆
 では、撮影してみよう。電源はカメラを構えてボディ右肩のロック付きコマンドダイヤルの回転とボディ前面のスライドレンズカバーのスライドによって行う。操作が2系列に至るのは少々煩雑に感じる。論理的にはコマンドダイヤルを撮影モードにし、レンズカバーのスライドによって電源のON/OFFも行えるが、そういう運用はエプソンが公式に止めてくれと公示しているらしい。ロックが付いているのはこの種の構成のカメラはカバンの中で勝手に電源が入っている場合があるのでありがたいだろう。コマンドダイヤルに設定されたモードは電源OFFを中心にしており、端から「連射モード」「液晶ビュワー使用撮影モード」「光学ファインダー使用撮影モード」「電源OFF」「再生モード」「PC転送モード」「カメラ諸設定モード」が割り当てられている。
 本カメラは旧世紀デジカメらしく、液晶ビュワーの他にモノクロ液晶モニターを搭載しており、光学ファインダーと組み合わせて液晶ビュワー非表示でもそれなりに撮影できるように構成されている。これは、古いデジカメが電池消耗に弱く、特に液晶ビュワーが電気を消耗する事に端を発している。液晶モニターには感度、画質モード、ホワイトバランスモード、露出補正、フラッシュモード、撮影可能枚数を表示する。エプソンのカメラは伝統的に感度などを数字情報としてではなくアイコンイメージで表示する傾向にあり、感度は「>」でISO100、「>>」でISO200、「>>>」でISO400相当を表現する。また、画質モードはCP−500からの伝統を踏襲し、「★」マークの数で表現している。「★」で35万画素モード、「★★」で200万画素モード標準圧縮、「★★★」で200万画素モード低圧縮、「★★★H」で300万画素モードを表している。
 本カメラの特徴の1つである300万画素モードだが、エプソン独自の補完処理「Hypict」にて行う。受光素子が特殊なフジのスーパーCCDハニカムと違い、汎用的な受光素子のデータを内部的に補完しているのであろう。そういう機能は130万画素級デジカメのCP−700Zにも搭載されていた。ただ、フジがファインピクス4700Zで行ったように、補完出力画素数を本来の受光素子の画素数のように謳ったりしなかったので混乱は無かったようだ。実際に300万画素モードで撮影した画像と200万画素モード低圧縮で撮影した画像にどの程度の違いがあるのかは拙僧には分からない。或いは画像の一部を拡大すればエッジの解像度などに違いが生じるのかもしれないが、そういう鑑賞の仕方は拙僧の本意でないので問題にはならないだろう。むしろ、記録に7秒ほど掛かり、更に後述する画像記録時のバッファリングが行われず、運用上大きく制限を受けるなど効果の割には見合わないと感じる。もっとも、有るのと無いのでは大違いであろうから、気分的な違いで重宝する見方も有る。当時と現在ではコンパクトフラッシュの容量対価格も違うから、300万画素級のデータ量も負担ではない。
 起動は約2秒ほどで完了し撮影可能状態に至る。レリーズボタン押下からフォーカシング、データ記録開始まで「★★★」モードでも約2秒と、レンズが単焦点であることを差し引いても高速である。これは新世紀初頭のベーシッククラスデジカメと比べても評価できる。データ記録には2秒弱掛かり、その間、液晶ビュワー使用撮影モードの時のみプレビューの表示を行う。実際には光学ファインダー使用撮影時の方がプレビューは重要なのでこの点は残念である。プレビューも鬱陶しいと言う方はカメラ設定モードで「通常撮影」から「速写撮影」に切り替えるとデータ記録時に画像7枚までバッファリングを行い、その場合は撮影間のタイムラグは殆ど無いと言ってよい。これは特別評価しても良いくらい優れたレスポンスだ。
 本カメラの2つめの特徴がメニューの階層化を極力廃したインターフェイスである。本カメラは電源OFFの状態だと背面に機能を記述されていない7つのボタンが液晶ビュワーの周りに無機質に配置され、その操作方法は直感的に分からず不安になる。実は、これらのボタンの機能は液晶ビュワー内にスーパーインポーズで表示されるのだ。例えばコマンドダイヤルで「カメラ諸設定モード」を選択すると、液晶ビュワー右側のボタンは上から「日付」「撮影モード」「カラー/モノクロ」「通常撮影/速写撮影」の設定を表示し、下のボタンは左から「カメラ設定」「ABC」「メモリ設定」のメニューを表示する。これは撮影モードや再生モードでも同様な次第であり、逆に右側のボタンであれば「+」「−」、下のボタンであれば左から「MENU」「ISO」「WB」のシルク印刷があるが、これは撮影モードや再生モードにより使用目的が異なるので返って無いほうが混乱を招かない。実際に使い慣れてくると成るほどと思うほど痒いところに手が届くが、直感的には分からないので本カメラが持つ多彩な機能はマニアルがないと気がつかないであろう。実際、拙僧はCP−800Sのコンテンツ作成時では使い込みが足りず、本カメラの機能の半分も把握していないことに気づいた。これは評価が分かれる点である。実際には本カメラの機能を発揮するには7つのボタンでは充分でなく、撮影モードやカメラ諸設定モードではメニューの切り替えを行うボタンが割り当てられており、事実上1段の階層メニューとなっている。現在のデジカメの殆どがコマンドダイヤル+十字キー+少数のボタンになっている所から、その結論は現れているとも思われる。
 そして3つめの特徴が多彩な機能である。一見、ただのオートカメラに見えるのだが、本カメラはカメラで撮影すると言う行為に必要な充分のプロパティの設定が可能である。もしかしたら、一番これが本カメラを高級カメラと分類できる因子かもしれない。まず、本カメラの「撮影モード」には「フルオート撮影」「プログラム撮影」「マニアル撮影」の3種類のモードが存在する。しかし、コマンドダイヤルが「液晶ビュワー使用撮影モード」「光学ファインダー使用撮影モード」時にはモードの変更は出来ない。モードの変更は「カメラ諸設定モード」で行う。カメラの諸設定を変更するのにいちいちコマンドダイヤルを変更し、液晶ビュワーを切り替えるのは実際の撮影フィールドにおいてはかなり煩雑だが、この辺りが本カメラのインターフェイスの限界ともいえる。また、「プログラム撮影」「マニアル撮影」で設定可能な各プロパティは「液晶ビュワー使用撮影モード」でしか設定できない。本カメラはその登場時には電池の消耗にナーバスで運用上に支障がでる程であったが、現在ではエネループなどを使用していれば液晶ビュワーを常に使用して殆ど問題にはならないだろう。
 「フルオート撮影」時にはデジタルズームと標準フレーム/パノラマ撮影モード/マクロ撮影モードの切り替えしかできない。液晶ビュワーには「x1」と「標準フレーム」とボタンの機能を表示しているだけで「x1」がデジタルズームなのは感覚的に分かるものの、「標準フレーム」がマクロ撮影モードに切り替わるとは気づきずらいと思う。これも、本カメラのインターフェイスの限界であろう。
 「プログラム撮影」時には「ノーマル」「スポーツ」「ポートレイト」「風景」の4つのシーンモードが用意されている。詳細は分からないが露出設定やフォーカシングが各モードに適切に設定されるのであろう。また、露出補正や感度の設定、ホワイトバランスの設定も可能だ。但し、ホワイトバランスは「AUTO」「固定」「CUSTOM」と表示が出るものの、それぞれが何を意味しているのかは分からない。これは一般のデジカメのように「日光」や「蛍光灯」と具体的なシーンで選択できたほうが良かった。
 そして「マニアル撮影」である。これはフジのファインピクスシリーズの露出補正やフラッシュ調光だけが出来る簡易マニアル機能ではなく、シャッタースピードや絞りを任意に設定する事が可能なのである。また、開放のF2.8と絞り込んだF8の2種類しか選択できないと限定的ながら絞り優先AEも搭載している。シャッタースピードは1/2〜1/750が選択でき、ISO100〜ISO400相当の感度の選択も合わせ相当きめ細かい露出設定が可能である。また、MENUボタンの2秒以上の長押しで画面が切り替わり、「AF」と「バストショット」「フルショット」「遠景」のゾーンフォーカスの選択が可能なのである。当時とすれば「うひょー!すげー!」と言うくらい多機能満載なのである。実際、このくらい諸設定が可能なコンパクトデジカメは現在(2009年)でも少ないだろう。
 また、インターバル撮影も可能で、コマンドダイヤルの「連射モード」で設定できる。更に再生モードで任意の画像にボイスメモを記録する事が可能だ。正に至れり尽くせりである。もっとも、ボイスメモの方は本カメラにはスピーカーが搭載されておらず、再生は出来ない。音声データはWAVファイルで格納されるが、画像とどのように関連付けられているのかは不明で、恐らくエプソン純正の音声再生機能付きビュワーソフトが付属したのであろう。
 一寸どうかなと思ったのが節電設定である。これは「カメラ諸設定」で10秒から3分まで設定できるのだが、設定時間が経過すると完全に電源がOFFしてしまい、撮影再開にはコマンドダイヤルをOFFまで一度戻す必要がある。これは煩雑な操作で一般的なスリープ状態に入り、何かしらの操作で復帰する方がよいだろう。また、既に記載済みだが本カメラの一番の欠点は電池の消耗にナーバスなことで、昨日まで使えた電池が朝の気温低下で使えないこともあった。このことはエプソンも認識していたようで、発売時には4本の単三型充電池と充電機が付属していたようだ。消耗したら予備を持てばよいという考えも一理あるだろうが、メモリー効果もあるだろうから一概にはどうかと思う解決策だ。
                 ☆              ☆
 本カメラはパナソニックのルミックス DMC−FX7やカシオのQV−R4と同時に運用した。流石にそれら新世紀デジカメと比べると画像は高照度で白飛びしたりと馬脚を現す。また、高コントラストでメリハリの利いた絵作りは鮮やかで美しいとも見えるし誇張気味とも見え、評価が分かれるかもしれない。しかし、多彩な機能を駆使して甲斐のある画像を得られるカメラだと拙僧は判断できる。
 CP−800Sと合わせると割とよくジャンク籠に見かけるので意外と売れたのかもしれない。尤も、投売りされていた形跡もあるのでお安く市場に出回っていたのかもしれないな。いずれにせよ、エプソンの主力製品であるプリンターに良質な画像ソースを提供するカメラとして申し分の無い物である。

   では、撮影結果を見ていただきたい。

(了:2009/11/04)

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