NEC ピコナについて


Picona

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


Picona Picona
 液晶ビュワーを展開したところ。
 明るさ調整ダイヤル付き。

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 ライカ判換算で35mmF3.8の単焦点レンズ。
 固定焦点(パンフォーカス)で2種類のマクロモード付き。

Picona
 ボディサイドのスライドスイッチで電源OFFと再生モードと通常撮影モード、連続撮影モードを切り替える。


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 黒い丸がレリーズボタン。
 手ブレを誘発しやすい。

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 電源は単三型電池2本を使用。

Picona
 撮影時の液晶ビュワー。追随性は悪い。

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 レリーズボタンを押下すると画面が一瞬小さくなって記録中に遷移する。

Picona
 再生時の液晶ビュワー。


Picona
 記録媒体はコンパクトフラッシュ。


 デジカメの黎明期にはどちらかと言うと主要光学メーカーの方が参戦には消極的で、電子機器メーカーや家電メーカーが積極的に個性的なカメラを発売していた。何しろ爆発的にヒットしたTheデジカメはカシオのQV−10だった。フジやコダック(チノン)は光学メーカーとしての一面は持っているが、どちらかと言うとフィルムメーカーとしてのイメージの方が大きいだろう。実際の利益の主軸とは別の話である。リコーもカメラメーカーであるが主要メーカーかというと一寸違う気がする。家電メーカーのシャープも熱心にデジカメを出していた。もっとも、本カメラの登場した1997年は煮え切らないならもキヤノンもデジカメを出していたし、ニコンもクールピクス100でデジカメ市場に参戦した。主要光学メーカーも途中半ばで消えていったメーカーも一先ず戦列に参加したスタートラインといえるだろう。
 NECと言えばキューハチ、つまりPC−9801である。かつてはドメスティックPCとして国内市場で覇権を握っていた。一太郎とか花子を活用していた高校時代も懐かしい。もっとも、どっこい公営機関では民族系の一太郎が健在なようで、メールで添付された文章ファイルが謎の拡張子を持っていたのも懐かしい話である。その拙僧にとっては電子機器メーカーとしてのイメージが強いNECがかつてデジカメを出していた。初めは1996年に登場した知る人ぞ知るPC−DC401で、これはCマウント(!)のレンズ交換式本格的一眼レフデジカメだった。一見「すげー!」と思えるものの、実際には受光素子は常識的なデジカメと同じ1/2型であり、実用になる焦点距離は6〜8mmとかの類だろうからレンズの選択は限定的になるだろう。上手く8mmシネ用のものが見つかれば捨て値だろうが、探そうと思って見つかる物ではない。MFに実絞りで、どちらかと言うとキワモノ扱いだったようである。市場に出回ることは滅多に無いし、現在では専用リチウム電池はぱーになっているだろうから実運用は無理だろうが一寸気になる。あまりの熱の入れすぎに懲りたのか、翌年の1997年3月に当時最軽量最コンパクトのライトクラスの本カメラを発売する。
 1996年後半から1997年の前半に発売されたデジカメと言うと、フジのDS−8やリコーのDC−2E、エプソンのCP−200そしてカシオのQV−11がライバルとして上げられる。公証最軽量とされたボディだが、実はQV−11の方が軽い。しかし、QV−11は単三型電池4本使用に対し本カメラは単三型電池2本を使用するため、トータルとしては本カメラの方が軽いと言うことになるらしい。当時、単三型電池2本で駆動することは画期的だったようだ。もっとも、本カメラは電池2本だと30分しか駆動せず、標準で電池4本パックが付属していたようだ。この場合、2時間30分の駆動が可能だそうで、電池自体は2倍になっただけなのに随分駆動時間が違うが理由はよく分からない。何れにしろ電池事情がよくなかった頃のデジカメで、光学ファインダーは無く液晶ビュワーの使用が必須のカメラだから電池が持つのはありがたい。画像はコンパクトフラッシュに記録し、カードリーダーで簡単に読み出しが可能である。まだまだ、内部メモリー式で専用PC転送ソフトが一般的だった時代だから、かなり進んだカメラだと言うことが言えるだろう。
 ボディは縦型だがファインピクス700のように表面積が広い面を正面に持つのではなく、デジタルムービーカメラのように構える。折りたたみ式液晶ビュワーもそのように開き、知らない方(殆どだろう)にはムービー撮影をしているようにしか見えない。パクリと言えばその通りだが、ミニチュア感があって可愛らしい物である。フラッシュは付いていないがホットシューと搭載しており、別売りの専用ストロボの使用が可能だ。汎用フラッシュが使用可能かは調べていない。レンズはライカ判換算で35mmF3.8の固定焦点(パンフォーカス)。2種類のマクロポジションつきでそれぞれA4大と名刺大の被写体を画像内に収めることが可能である。正確な撮影距離は不明である。露出はプログラムAEのみで、露出補正は出来るがホワイトバランスはオートのみ。シャッターは1/7〜1/10000の電子シャッターで絞りは開放のみらしい。通常撮影モードでは35万画素級の640x480ピクセルを撮影するが、6枚を連続撮影する連続撮影モードでは320x240ピクセルとなる。連射の間隔は1/4〜10秒を設定可能である。
                    ☆                 ☆
 では撮影に使ってみよう。液晶ビュワーをカメラを構えて左側に開き、レンズ右側のスライドスイッチの操作にて電源をONする。電源スイッチは上から「PLAY(再生モード)」「OFF」「CONT(連射撮影モード)「REC(通常撮影モード)」が割り当てられている。ピッチが狭く、また節度もイマイチなため、中間のポジションに位置させるには慎重な操作が必要である。レンズ左側には「NOMAL」「A4/LT」「CARD」の撮影距離ポジション切り替えレバーがある。液晶ビュワーでの合焦確認は不可能なので、このポジションには注意する必要がある。マクロモードの撮影距離は公開されていないようなので、これは不親切だ。液晶ビュワーの明るさは設定可能で、晴天下でもそれ程見づらくはならないので当時としては優秀な方であろう。但し、追随性は悪く、カクカクとリフレッシュされるので気持ちのいい物ではないが、QVシリーズなどにも共通することで慣れないことは無い。
 問題は操作である。ボディ背面には大きな丸いボタンと楕円形の小さな4つのボタンが縦に並んでいる。大きなボタンはレリーズボタンで4つのボタンはメニューを操作するボタンだが、コンパクトなボディに纏める必要性かボタンは小さく、爪で操作するほどである。また感触もイマイチな上、レスポンスも悪いのでしっくり来ない。このボタンは無記名で用途は液晶ビュワー内に表示される。本カメラの最大の欠点はこのボディ後部に位置する親指で押下するレリーズボタンの位置で、これは片手で操作するパッケージングと相まって手ブレを誘発する。拳銃を構えるように両手でホールディングできないことも無いが、構造上手ブレは軽減できない。ムービーカメラなら大きな問題ではないだろうが、スチルカメラでは致命的である。一般的な8mmシネカメラのように人差し指で操作するトリガー式にすれば良いのにと思うが、NECの公式見解ではこの方が人差し指の位置にレリーズボタンがあると誤動作がしやすいとの事である。
 撮影モードや再生モードの待機時の液晶ビュワー内にはフレームが浮かび、その中に受光画像を表示する。フレーム周辺にはカメラのモードやボタンの用途を表示する。なかなかユニークで面白い。撮影モード時にレリーズボタンを半押しすると画面全体が受光画像になり、レリーズボタンを全押しすると小さな撮影画像を一瞬表示してシャッターが切れ、再び画面全体に撮影画像を表示して画像の保存を行う。3〜5秒ほどで保存は完了し、その後フレームが浮かぶ待機画面に遷移するが、このときにもカメラ内部では保存した画像の圧縮処理を行っており、その旨の表示が液晶ビュワー内で確認できる。圧縮処理には20〜30秒ほど掛かるがバッファリングが行われており、この状態でレリーズボタンを半押しすれば、再び画面全体に受光画像を表示し、撮影が可能である。最大で何枚までの画像のバッファリングできるのかはわからないが、連続して撮影を行ったところ5枚目で保存時間が長くなったところから、この程度が限界だと思われる。圧縮処理中は電源OFFも出来ず、「お待ちください」を表示し待たされる。
 撮影モードでは操作ボタンは上から「再生モード切替」「諸情報設定」「露出補正+」「露出補正−」が割り当てられている。一部で酷評されている操作系だが、ボタンの良し悪しは兎も角、撮影モードから速やかに画像再生に遷移できる点は評価しても良いと思う。諸情報設定の階層化メニューも特別矛盾の生じる物ではない。諸情報設定時にはファイル形式のJPEGとBMP切り替えや4種類の圧縮モード等を選択できる。再生モードではレリーズボタンは「拡大」が割り当てられており、9分割した拡大画像の表示が可能である。ただ、精度はイマイチなので合焦の確認までは難しいだろう。操作ボタンは上から「情報」「メニュー」「▲(送り降順)」「▼(送り昇順)」が割り当てられている。「情報」を押下するとファイル形式や圧縮率のほかシャッタースピードまで表示される。「メニュー」を押下すると表示形態の選択や画像の削除を行うことができる。
 液晶ビュワーを畳んだ上体でも電源がONになるのは如何なものかと思ったが、そういう状態だと通常より早い時間でスリープ状態になるようだ。なかなかよく考えられていると思う。スリープ状態からの復帰はレリーズボタンを半押で可能だ。
                    ☆                 ☆
 QV−10のときも多彩な再生機能に感心したが、本カメラは遙かに近代的で芸が細かい。レリーズボタンの一件から想像するに本カメラはカメラ好きの発想から出発したのではない。情報端末としての発想が見受けられる。それは肝心の撮影画像にも表れており、正直なところ色の鮮やかさではCP−200に劣り、シャープネスでDS−8に劣っている。但し、CP−200は基本的に液晶ビュワーレスでデジカメの特性は限定的にしか発揮できない。勿論、外付けの液晶ビュワーは存在するが、本カメラとは問題にならないほど嵩張ってしまう。
 PC−9801で大成功したNECと、その互換機で勃興したエプソンのデジカメに対するスタンスがこれだけ違うのは興味深い。ただ、その後、細々だが新機種を投入し続けたエプソンに比べ、NECのデジカメは本カメラで終了となった。主要光学メーカー製のデジカメが目立つ現在の視点で見るに、それは正しかったのだろうな。
 

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2009/11/4)

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