オリンパス X−3について


X3
ヘアライン加工が美しい高級感ある外観だが・・・。

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能



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スライド式レンズカバーの開閉にて起動するカプセル型カメラ。
オリンパス伝統のスタイリングである。

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美しいフロントパネルに「6.1MEGAPIXEL」の輝かしい文字。


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38〜111mmF2.8〜F2.8〜F4.8の光学3倍ズーム。



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X−1/2に比べて若干大型化した液晶ビュワー。

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コマンドダイヤルはボディ上部に移動している。
オリンパス伝統のスポット測光付き。

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バーチャルキーとセンター付き十字キーの組み合わせは悪いものではないのだが、階層メニューの設計はどうも。

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光学ファインダー装備は象徴として嬉しいものである。


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専用電池は初期のμデジタルと同じタイプ。
何かと使い勝手の悪いxDピクチャーカードである。

 オリンパスと言えばペンデジでカメラ女子やフィルムを知らない若い世代に支持されている。デジカメの黎明期からオリンパスはキャメディアのブランドで参戦していた。35万画素級のC−400シリーズや当時として格別に高画素であった81万画素級のC−800シリーズなど、当初から意欲的で高画質のカメラとして幅広く認識されていたようである。その後、ニコンやキヤノンと言ったカメラメーカーの重鎮が出遅れたこともあってオリンパスの黄金時代が幕開ける。フジフィルムやリコーといったカメラメーカーとしてはマイナーなメーカーやソニーやカシオといった電機メーカーが初期のデジカメをリードしたのである。その栄光は旧世紀までは続いた。ところが、ベーシッククラスのカメラも400万画素級に突入し始めた新世紀になって、その輝きに陰りが見え始めたのである。当時、キャメディアは高級・ハイテク路線から一眼レフに昇格したEシリーズと普及機から上級機までの幅広いターゲットをカバーしていたCシリーズに分かれていた。危機を感じたのかオリンパスが立ち上げた新しいシリーズがXシリーズである。400万画素級のX−1と500万画素級のX−2が用意された。その当時、コンパクトカメラに500万画素級の受光素子は奢ったものだが、従来のオリンパスのイメージである「実用」を覆した高級路線を狙った物であった。高級感あふれるステンレスボディにヘアライン加工(X−2のみ)。やや厚さがあるが金属感覚を前面に出した直線基調のマッス。無論、オリンパスらしい細かなマニアル設定にスポット測光と実用面でも遜色がない。端的に言うと、仕様的にもクラス的にもキヤノンのIXYデジタルとパワーショットSシリーズの中間にあたる。これで新たなるニーズを開拓したいというのがオリンパスの目論見だったのだろうが、果たしてそれは上手くいったのであろうか?その結論を探る前に本カメラの素性を見てみよう。
                    ☆             ☆
 本カメラは簡単言うと500万画素級だったX−2の受光素子を600万画素級に換装したものである。まだ、やっと手に届く一眼レフデジカメが600万画素になった頃である。他に目立つところでは液晶ビュワーが若干大型化されて、背面に位置していたモードダイヤルがボディ上面に移動した。これは実際に使う分には大した違いに見えないが、兎に角少しでも液晶ビュワーが大型化すれば記事になった時代もあるのだ。使い勝手から見ると、常識的な半回転式だったズーミングレバーがシーソースイッチに変更されたが、先が尖って使いづらく、これは大きなマイナスと言えよう。
 ステイタスである金属ボディはそれなりに存在感があってよいものである。IXYデジタルがライバルだとするとボディマス、特に厚さがあるが取り立ててマイナスではないだろう。本カメラはポイントアンドシュートカメラではなく、本格的なマニアル露出を備えた高級路線なのだから、手に重量感は必要だし実際大き目なボディはホールディングに良好だ。光学ファインダーを使用すれば相当なスローシャッターにも対応できよう。
 ボディ前面には効果的に見えるレンズカバーがあり、デザイン的にもアクセントになっているが、これをスライドさせてレンズを露出するとズームレンズが伸長し、撮影可能状態になる。オリンパスがフィルムコンパクトカメラのXAで確立したカプセルボディである。デザイン的にも動作的にも重要なアクセントとなるが、伝統があり効果的なものである。起動は案外早く1GBのxDピクチャーカードを挿しても3秒ほどで撮影可能状態になる。全然早くないじゃないかと思いだろうが、大して世代の変わらないμデジタル20は10秒くらい掛かるのである。本カメラの待たされ度は実用の範囲だ。
 レリーズボタンを押下してから記録までのレスポンスは平凡である。本カメラの特徴としてコンパクトデジカメとしては一般的なコントラストAFと併用して外光パッシブAFの搭載が挙げられるのだが、μデジタル10あたりと比べても、格別効果があると思えない。液晶ビュワーも凝った技術が使われているらしいのだが実感はないな。
 レンズはライカ判換算で38〜111mmF2.8〜4.8と平凡。最短撮影距離も広角側で20cm、望遠側で30cmと冴えない。4cmまで寄れるスーパーマクロ機能を搭載しているのだが、階層メニューの奥なので使う気にならない。そもそも、本カメラのメニュー設計はかなり頂けない。スーパーマクロのような効果的な機能が階層の奥にあって、一度設定したら大して使わない日時設定がルートにあるのはどういう事だろう。カードセットアップもルートにあるべき機能ではないだろう。オリンパスのお気に入りであるバーチャル十字キーは液晶ビュワーの表示に十字―キーのボタンを組み合わせた機能なのだが、メニューからの退避にもOKボタンを要求するのは如何なものかと思う。これは右ボタンで入ったメニューは左ボタンで退避する方が生理的に良い。先ほどのカードセットアップも間違って入ったら、例えアイコンが「中止」を選択していてもOKボタンなど押したくないのが心情だろう。オリンパスのデザイナーは間違って画像を消してしまった悔しい思いをしたことが無いのだろうな。
 フラッシュモードとスポット・マクロモードの切り替えは独立したボタンで行う。もっとも、スポットとマクロは独立しておらず、AUTOモード以外では「スポット/マクロオフ」−>「スポット測光」−>「マクロ」−>「スポットマクロ」と切り替わる。スポットこそルートメニューに置くべきだと思うのだが、カメラ雑誌を読むといかにスポット測光が優れているかと高らかに述べられているので、必要な方には優先度が高いのだろう。頂けないのはフラッシュモードの設定を電源OFFでカメラが覚えていないのだ。AUTOモードなら兎も角、P/A/S/Mモードなら覚えてくれていてもよさそうなものだ。しかも、肝心な「発光禁止」までは「オート発光」から「赤目軽減」−>「強制発光」−>「スローシンクロ」−>「赤目・スローシンクロ」−>「発光禁止」と5回もボタンを押さなければならない。スナップ撮影時には嫌がらせだとしか思えない煩雑さだ。更に、本カメラは過剰に逆光補正を恐れているらしく、ちょっとでも光線状態が気に入らないと途端にフラッシュを発光してしまうのである。空気読めないカメラである。
 肝心の写りはどうだかというと、世紀末から新世紀初頭のオリンパスのカメラはコントラストが高く、高画質なように見えて実はシャープネスが強く諧調も粗削りで潤いが無いのだが、本カメラも例外ではない。格別言えるのがラチュードが狭いということだ。簡単にハイライトが飛んでしまう。日陰の被写体の発色も悪い。X−2の時はレンズが悪いのかと思ったが、どうも受光素子にも問題がありそうだ。
                    ☆             ☆
 オリンパスが高級路線として登場させたXシリーズだが根本的なポテンシャルは及ばなかったようである。実際にまとまった形はマツダ=ベリーサと言ったところであろう。しかし、悪いことに本カメラは実売6万円くらいしたらしい。誰だってベリーサがマークXの価格帯だったら見向きもしないだろう。ほぼ同時期に、キヤノンからは500万画素級だが28mmからズームの始まる上位コンパクトカメラのパワーショットS50が登場している。広角に振ったレンズと100万画素ほど多い受光素子ではどちらがコストがかかるのか、拙僧には正確には分からないが、市場のXシリーズの評価からして答えは出ているだろう。停滞時代のオリンパスには、格に合わない基本性能のカメラを高額に発売して、瞬く前に値を下げて投げ売りする悪い傾向があった。これでは、発売当初に購入した方は騙されたと思うだろう。本カメラも当初は6万円代という法外な値付けがされていたが、末期には1万円代前半で売られていたようだ。こういうのはメーカーの価値を下げる。また、悪いことに高級路線で始まったと思われてXシリーズなのだが、すぐさまオリンパスは最も廉価な価格帯のカメラにもXの冠を与えてしまう。こうなると、最早Xシリーズは防水機能の省略された廉価シリーズである。
 不明瞭な舵取りだったオリンパスが命脈を保ったのは防水機能のμデジタルシリーズとウルトラ望遠ズームのC−7xxシリーズがヒットしたからだと拙僧は思っている。双方とも、従来のデジカメに明瞭なプラスアルファの価値を付加した点が市場に受け入れられたのだろう。思うにX−1/2/3で目指したオリンパスの高級路線は、オリンパス自身も完成像を描けていなかったのではないか。

   では、撮影結果を見て下さい。

(了:2011/2/28)

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