マクセル WS30SLIMについて


WS30SLIM
元箱、アウトフィット一式

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


WS30SLIM WS30SLIM
 パールホワイトが樹脂の良い特性を引き出し、ポップなルックスに好感が持てる。
 これでガラスレンズ、マルチコートだと言うから恐れ入るな。


WS30SLIM WS30SLIM
 操作系はシンプルそのもの。電源、諸設定は背面の3つのボタンで行う。
 ボディサイドには標準とマクロモードの切り替えスイッチがオフセットされ、その下にはゴムカバーに端子が隠されている。
 後はボディ上部のレリーズボタンを押下するだけ。


WS30SLIM WS30SLIM
 「MENU」ボタンで設定モードを変更し、「SELECT」ボタンでプロパティを変更する。
 左の画像はセルフタイマーモードを表している。
 光学ファインダーの下の2つのLEDは、フラッシュチャージとマクロモードを表す。


WS30SLIM
 電源は単4型電池を2本使用。
 単3型電池を2本使用するLV−20に比べると持続力は落ちるけれど、そもそも電力消費の少ないカメラなので欠点にはならないだろう。


WS30SLIM
 まあ、こういうものが最初の被写体となるのだな。


WS30SLIM
 フラットな色再現と聞いていたが、なかなかのじゃじゃ馬である。


WS30SLIM
 これはパララクスで被写体が切れてしまった例。
 マニアルにも固定焦点のフィクス値は記述されていないが、恐らく2〜3m前後であろう。


 旧世紀の終わりから今世紀の初頭にかけて「おもちゃデジカメ」というニーズが存在したことは既に拙僧の方々のコンテンツで書き散らした。初めは「ちゃんとしたデジカメが高くて買えない」という後ろ向きの発想から始まったのだけれども、その特出した携帯性や消費電力の少なさによる持続性。そして、様々なユニークなキャラクターの登場によって、画質を上回る魅力が認識されたのである。ロモグラフィーやホルガのムーブメントに匹敵するカルチャーと言っても良いな。そんな「すっとこどっこい」な画像を取り上げてカルチャー扱いなんて「ちゃんとしたデジカメ」のメーカーやユーザーからすると笑止千万って感じなのだけど、まあ、世の中にはホンダのモンキーに中古のCBR600位のお金を捨てる方や食玩欲しさに「大人買い」ってのは今でもあるんだから柔らかい目線で見ていただきたいものである。
 当初はタカラのスティックショットみたいに10万画素級で電池を抜くと画像はパー。その電池だって入れっぱなしにしておくと何もしなくても1週間でパーになってしまう代物というか色物が多かった。これをコンテンツで好意的に取り上げるのは、「高校卒業前に2ショットダイヤルで知り合って、1発目の道玄坂のラブホで出来ちゃった結婚のカップル。」を、優秀な成績で卒業したと原稿をでっち上げなければならない司会者の苦悩に匹敵したと思うのだけれども、幸い世紀を跨いだ辺りで市場にデビューする物件はそれなりに使い物になったので、親戚の紹介に「xx村の清流保護組合役員補佐」とか、とにかく聞き流してくれそうな肩書きを考えなくても済むようになった。助かったワイ。
                   ☆               ☆
 もうぼちぼち、話題の矛先を本カメラ、「WS30SLIM」に向けねばなるまい。まず、「何故マクセル?」ってのが拙僧の一番初めの印象だった。拙僧はオーディオ分野に関心が無いので、マクセルというとカセットテープとかMDとかオーディオ関係の媒体や消耗品のイメージしかないのだけれども、よく取説を見ると「日立マクセル」なんて書いてある。日立とマクセルの合弁企業なのか?しかし、メジャーなおもちゃデジカメメーカーの一つに「日立リビングサプライ」というのがある。また、薄型おもちゃデジカメの草分けとしてアクシアの「eyeplate」が有名だが、これも取説には「富士アクシア」なんて書いてある。うーむ、実に不思議だな。まあ、この種のおもちゃデジカメや廉価デジカメは、実は供給元は華南か台湾辺りの同じ企業で、冠だけ貸しているってのは有りうるというか多分そうなので深くは考えないことにしたいな。
 デビューは2001年の中頃。35万画素級の受光素子で内臓メモリーに画像を記録する。レンズは固定焦点(パンフォーカス)でフラッシュを標準装備。PCにはUSBケーブルで接続し、添付ソフトで転送する。液晶ビュワーは無く、光学ファインダーでフレーミングを行い、諸設定と撮影枚数はイメージマークと7セグメントの液晶パネルで表示する。おもちゃデジカメに液晶パネルと外部媒体ユニットが標準装備されるのはもう少し後になる。電源は単4型電池を2本使用。ガチのライバルは同年に発売されたカシオのLV−20になる。他にもおもちゃデジカメメーカーとしては草分けのニチメンやNHJもそれなりの物件を出していたはずだけれども、どちらかというとトリッキーなキャラクターで売り込みを図っていて、スタンダードなスタイルの良く売れた代表的なおもちゃデジカメといえば本カメラとLV−20と言えそうだ。双方とも様々な共通点を持っているのだけれども。特に興味深いのは双方とも同じように前年に前出となるモデルが存在することだ。前年といえば2000年、つまり世紀末な訳で、世紀を跨いだ後裔モデルとしての本カメラやLV−20の見方も面白いと思えるな。
                   ☆               ☆
 まずは世紀末に発売された兄貴分の「WS30」と本カメラを比べながら掘り下げていきたい。本カメラは「SLIM」と名が付いたように、旧モデルのWS30(以下、旧WS30)に比べてずっとスリムになった。そのため、電源は単3型電池から単4型電池に変更になったし、ボディ上部に位置していた液晶パネルは背面に移動した。電池の持ちは少し悪くなったはずだけれども、そもそも電力を消耗するようなカメラではないので、その点では大した問題ではないだろう。ただ、拙僧のように単3型電池を使用する複数のカメラで電池を使いまわす者にとっては都合が悪いのだけれども、まあ、100円ショップで手に入れたアルカリ電池で300枚以上は撮影できそうな雰囲気だからとやかく言うのは野暮だろうな。また、レンズがライカ判換算で35mmF4から42mmF3.47とかなり望遠よりになった。F値が中途半端に明るくなったのも気になるけど、35mmなら広角レンズだけれども42mmなら標準レンズと言っても良いくらいだから、これだけで旧WS30を選択する方もいるだろう。シャッターも旧WS30が「1〜1/10000」だったのが「1/2〜1/10000」とスロー側で一段選択肢が減った。まあ、本カメラの性格上大した問題ではないと思うけど、後退といえば後退である。高速側で「1/10000」っていうのも凄いけど、本カメラは絞りが無いから常に開放だし、物理的にシャッター羽が走るわけではないから不思議ではないのだろう。素晴らしいのはレンズがガラス製でマルチコートが施されていることだ。また、固定焦点(パンフォーカス)ながら20cmのマクロモードを搭載しているのも偉い。LV−20では適わなかった接写が可能なのである。感度がフィルム換算にするとどの程度になるのかは調べても分からなかった。
 LV−20の名が出たところで、こちらと比べてみよう。LV−20のパワーソースは単3型電池なので本カメラよりも随分むっくりしている。しかし、前面から見た表面積は一回り小さく、ころっとした小柄なボディである。撮影枚数といった諸情報を液晶パネルに表示するのは同様だけれども、LV−20はボディ上部に位置する。操作系は本カメラが「MENU」とか「SELECT」といった無機質な表記がなされているのに対し、フラッシュやセルフタイマーのボタンをイメージマークにして分かりやすい表記になっているのに好感が持てる。ボタンもゴム製の本カメラに対し、樹脂製でタッチングも良好である。本カメラのレンズ部が突き出でているのに対し、LV−20はほぼ平面で構成されているから、それらしい紙で包んだらクッキーかブロックチーズに見るだろうな。
レンズはそれらしい記述が無いので断定できないけど、少なくてもコーティングはさいるようだ。覗き込んだ感じでは本カメラの方が「レンズ濃度」が高いように思えたけれど、ライカ判換算で42mmF2.8とLV−20のほうが明るい。ただ、ぱっと見は同じに見える。受光素子も似たようなものだから同じサプライヤー製の可能性は高いな。尚、本カメラの内蔵メモリが8MBで120枚以上撮影できるのに対し、LV−20は4MBは半分の60枚の撮影が可能。この解りやすい差からしても処理・記録系も出所は同じなのかもしれない。光学ファインダーは明らかにLV−20の方が手間がかかっている。基本的に本カメラの光学ファインダーが素通しなのに対して、LV−20は淡いシアンがかっていて、これは恐らくハレーション防止のためにコーティングされているのであろう。しっかりブライトフレームも浮かんでいるし、スナップ撮影に限定してさくさく撮影するならば、LV−20のファインダーの方が覗く方が遥かに幸せな気分になるので、それでこちらを選ぶ方もいらっしゃるだろう。もっとも、本カメラもおもちゃデジカメとしては上出来の部類だと思う。
 決定的な違いは既に記述したけれども、LV−20にはマクロモードが存在しない。これはカシオの決定的なミスだと思うな。もちろん、ただでさえあてにならないならない光学ファインダーで正確なフレーミングなんて不可能だけど、有ると無いとでは大違いだ。低画素級デジカメは、遠景はどうにも救えないものだけれども近接撮影で意外な実力を発揮する場合もあるだ。35万画素級デジカメでどこまで性能を引き出せるか纏めたコンテンツもご参照いただきたい。
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 そろそろ、撮影してみよう。電源ONは背面のゴム製ボタンを押下する。あまり、感触の良いものではないが、まあ目くじらを立てるほどではないだろう。操作シーケンスはMENUボタンの押下でモードが「フラッシュモードー>撮影枚数表示ルール(順算式or逆算式)−>セルフタイマー−>1枚画像削除−>前画像削除」と切り替わり、各モードの諸設定はSELECTボタンで選択し、決定はレリーズボタンの押下にて行う。この辺りはLV−20も似たようなものだ。単4型電池を使用するため、フラッシュのチャージに時間がかかってしまうが、大した欠点ではないだろう。問題は電源OFFでフラッシュモードを忘れてしまうことで、日陰や屋内で不用意にフラッシュを焚いてしまう恐れがある。これはスナップ写真を撮影するのには具合がよろしくないのでマイナスポイントだな。もっとも、待機消費電力などタカが知れているので電源をONにしたままにすれば構わないだろう。オートパワーオフは2分なので、戦闘的にスナップ撮影していれば気がついたら電源がOFFになっていたという事は無いだろう。ちなみにLV−20は電源OFFでもフラッシュモードを覚えている。こう言うのは、一度気になると不快なので、これだけでLV−20の選択肢は有りうると思う。
 レリーズボタンの感覚は良好で押下後のタイムラグも無く、記録時間も無視して構わないほど短いのでさくさく撮影できる。この辺りは低画素級おもちゃデジカメの醍醐味だな。8MBの内蔵メモリで120枚以上撮影が可能であることを紹介したけれども、意外とあっさりフルになってしまうだろう。この種のカメラは頭で考えるよりも先に指が動いてしまうようなスパンで撮影する方が快感だ。マクロ撮影はストラップの長さが最短撮影距離という鉄板の取り計らいになっている。拙僧はどうせ光学ファインダーはあてにならないだろうから、ストラップとレンズの光軸を合わせて撮影した。満更、外しは少ないと思われる。
 肝心の画質は、まあ、クラス相応のものである。ノイズや偽色が走りまくるが、これはそういうカメラなので欠点は言えないだろう。ただ、拙僧の事前の調査では「比較的ナチュラル」と証された色調だけれども、かなりのじゃじゃ馬である。オートホワイトバランスが非搭載というが、えらくビビットな画像を作り出す。場合にもよるが明らかに実際の被写体より誇張された色を表現する。ただ、照度の低い場合は自然色に近い色を再現するようだ。照度の高い被写体に弱いというのは、本カメラより後の世代のおもちゃデジカメでも何らかの形で存在するので、この辺りがおもちゃデジカメというか廉価CMOS受光素子のデジカメの限界なのかもしれないな。ラチュードは勿論狭いが、不思議とメインの被写体を優先させて空を白飛びさせたり暗部を潰したりしている気がする。もっとすっとこどっこいな処理をする廉価な本気デジカメだってある。それほど、クレバーな処理ユニットを搭載しているのではないだろうから、コロンブスの卵的なびっくりするほど単純な機構で調光のさじ加減を行っているのであろう。程度の問題だけれどもLV−20の方が自然色に近い表現をするような気がするけど、大きな違いは無いと思う。
 っで、そのノイジーな画像だけれども、最早、600万画素とか800万画素とかの画像に慣れた我々の目には破滅的に見えてしまうのだけれども、ちょっと待っていただきたい。拙僧のコンテンツはフィルムカメラで撮影した写真をスキャナーで取り込んだ場合も、デジタル一眼レフで撮影した画像も、撮影結果としてコンテンツに掲示する場合はフリーソフトの「縮専」で320x320ピクセルに圧縮しているのだけれども、本カメラで撮影した画像も縮専で圧縮するとそれなりに引き締まった画像になるのだ。これはLV−20で撮影した画像も同様だった。多分、縮専で圧縮する際、自動的にノイズ除去のフィルター処理を行っているのではと思われるのだけれども、お陰で軽いコンテンツ作成用としては使えなくもないというのは、あながち嘘ではないことになる。どの程度使い物になるのかは、個人によっても印象は異なるだろうから撮影結果でご判断いただきたい。
 ちょっと残念なのが転送ソフトの出来がイマイチ芳しくないのである。一括転送や一括削除といった操作に少しばかり戸惑いを覚えるし、転送速度も遅い。この辺りはどのおもちゃデジカメも似たようなものである。
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 本カメラのような35万画素級おもちゃデジカメは星の数ほど存在し、その多くは同じようなパッケージングであったと思う。要はどこに重きを置くかという点で、本カメラの場合はマクロ撮影、LV−20はファインダーに重点を置いたのだろう。
 改めて言うほどのことでもないのだけれども、この種のおもちゃデジカメはメーカーが一から設計するなんて事はなく、汎用品や準規格品をかき集めてメーカーがイメージしたカメラを設計するか、あるいは華南や台湾の中小のメーカーが売り込んだカメラをブランドを冠して売っているのだろう。ユーザーがその冠に期待するのはアフターフォローなのだけれども、日立マクセルという既に会社はないようだ。少なくても、HPからドライバーをダウンロードする手段はない。もしかしたら、サプライヤーのHPに該当するドライバーが存在するかもしれないけれども、英語や繁体漢字を駆使して探し回るよりは、そのエネルギーをちゃんとしたカメラで撮影するほうに回したほうが良いだろうな。
 カシオは初期のQVシリーズのドライバーの供給を今でも(2007年現在)供給していて好感の持てる企業だけれども、いつのまにかLVシリーズのドライバーの供給は止めてしまったようだ。カシオにLVに対する愛が無いのか、あるいはベンダー企業とのお金に関する事情なのかわからないけど、この種のおもちゃデジカメのプロパティを象徴しているな。

 では、撮影結果を見て頂きたい。
 今回はさくさく撮影できるのが楽しくて画像が多くなったので2つに分けさせて頂いた。どうか、お付き合いいただきたい。

秋葉原散歩編
三河花散策編

(了:2007/5/31)

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