ユニデン UDC−5Mについて


UDC-5M

エグいデザインだが案外常識的なコンパクトデジカメ。

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能


UDC-5M UDC-5M
 500万画素級撮像素子に常識的なレンジの光学3倍ズームレンズを組み合わせる。


UDC-5M UDC-5M
 大胆にも凹面で構成するフロントパネルが印象的である。


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 人間工学的な配慮がされているとも思えないのだが、グットデザイン賞を受賞したそうだ。


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 大型で見やすい液晶ビュワー。
 オープニングはユニデンロゴ入りのアニメーション。


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 操作系は常識的。


UDC-5M
 アイコンや階層メニューから三洋の血筋を感じる。


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 単三型電池2本で駆動。エネループがこんなに似合うカメラは珍しいだろう。


 我々の生理的な感覚からすると、手に取って触れる物体は大抵の場合は中央が膨らんでいるものだ。いや、コカコーラのボトルは絞りが入って普及したのではと言われるかもしれないけど、あれだって中央部が膨らんでいるから絞りこんだカービングがセクシーなのである。特に日本人は工業製品を正面から見た時に顔を連想するそうなので、昔のインテグラとか4つ目ライトの四ツ輪は売りづらいそうだ。アルファロメオのスパイダーとかは、他人が選ばない選択肢をあえて選ぶニーズによるものだろう。カメラに話を転ずると、多くのカメラがフロントパネルの中心部にレンズを配置している。フィルム時代に比べるとデジカメはパッケージングの自由度が高いから、奇抜なレンズ配置のカメラもあるが、X軸かY軸かどちらかは中心部に近い。例外はニコンが熱心だったレンズ+撮像素子が回転するスイバルタイプやリコーが熱心だったPDA端末タイプだが、それらがメジャーな地位を確立していないのはご存じのとおりである。
 本カメラを眺めて違和感を持つのが鏡筒周りのフロントパネルが陥没しているのだ。丁度、ヴィテッサTを反対にした感じである。電池室の部分だけ陥没を回避して、グリップを形成しているのもテキトーな仕事っぷりを感じてイイ感じである。デザイナーも競作を3つくらい提示して、まさかこれが通るとは思っていなかったのではないか。拙僧が幼いころにウルトラセブンに登場する怪獣のルックスのキレ具合が抜きに出ていたが、成人して聞いた噂によると、怪獣のデザイナー氏は常識的に出っ張った部分をあえて凹ませて違和感を与える手法を取ったと聞く。あの生理的な嫌悪感は意図した産物だった(らしい)。なんでも、本カメラはグットデザイン賞を取ったらしいから、やはり玄人には違いが分かるのであろう。ネーミングもイイ。「Uniden UDC−5M」。ユニデンと言うのが分かったような分からないような響きである。直観的にわかるのは海軍の局地戦闘機だろうということくらいだ。「UDC−5M」は「ユニデンのカメラ−500万画素級」を意味するのだろう。日本放送局くらい気の利いた採番である。フジテレビをCXなんて呼ぶ大衆にすらなりきれずにxxアニメーション学院でぬるま湯に浸かる連中には思いつくまい。
 それで、アバンギャルドなルックスとミステリアスなネーミングで、拙僧のような無位な人間には使えぬショップブランドのトイデジカメだと思って手に取るのも面倒くさいと思った。しかし、見つけたのは2年は前で、つまり2009年の時点では、ひとまず500万画素級であれば右から左へ動かすだけでも利ザヤが稼げると思って拾ったのだ。しかし、ちゃんとしたデジカメもフィルムカメラも夏の晴海ふ頭くらい列を並んで待っているから、ブースを出している友人からセラーチケットを買うとか裏技を使うわけにもいかずに野ざらしにしておいた。ところが、大粛清の時代が訪れると、ひとまず兌換性の基準である500万画素級を満たすカメラとして稼働の御鉢が回ってきた。すると、意外と普通のデジカメとして使い物になるので驚いた次第である。ネットで調べても意外と多くのヒットがある。AVOXなんかとはえらい違いだ。しかし、評価は「素晴らしい」か「クズだ」の両極端である。もうちょっと精査すると、「パブリシティ系ニュースで高評価なのが許せない」ということらしい。その辺は拙僧もレポートしてみたい。
              ☆              ☆
 ユニデンのブランドネームバリューは拙僧が知らないだけで案外有名なのかもしれない。親子型電話機や通信機の分野では一定のシェアがあるらしい。そういえば秋葉原界隈で見かけたこともある気がする。パブリシティ系ニュースによると2006年の発売で、通販のルートで発売された。ユニデンのブランドでは初のデジカメであり、700万画素級の後裔機の存在が確認できるが、現在のユニデンのHPを見る限り現在はデジカメの取り扱いはないようだ。目玉はずばり13800円の低価格。ついでに言えば単三型電池2本で駆動する経済性と内蔵メモリ26MBによるパッケージイン。燃費の良さはエネループ使用時に600カットの撮影が可能だというから大したタマである。この、公称燃費でエネループが登場する辺りから、このカメラの素性が見え隠れする。
 本カメラをネット検索すると、案外、多くのコンテンツに辿り着くと思う。特にパブリシティ系ニュースを読むと、どうも、おかしいなと気づく。いかに素晴らしいカメラかを雄弁しているのだが、撮影結果のサムネイル画像の出来が酷いのである。本カメラはそれほどパワフルなカメラではないが、長所を生かした撮影をしようと思えばできたはずだ。どうも、そのコンテンツはタイアップ広告めいた金の匂いがする。恐らく、ライターもしぶしぶ書いたのではないか。その端々を敏感に察知したガジェット好きの連中が囀っているのではと勘ぐりたくもなる。まさかとは思うが、経営陣・資本系に宗教関係の関わりがあって、不用意に批判すると面倒なことになるのだろうか。
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 ゴタクはこれくらいにして、実際手に取ってみよう。フロントパネルはアルマイトのようにツルツルで、ボディの枠にあたるフレームは細かいマットのシルバーである。本カメラはロクに使っていないのかコンディションが良く、エグいデザインに惑わされがちだが、表面の仕上げは一種の高級感がある。我々、大和民族はギラツキ感が気になるのだが、ゴージャス趣向の北米を意識したのだろうか。そう考えると、やっつけっぽい外観も納得する。ロンドンドラッグでビビターあたりと同じ所に並んでいそうだ。前述の通りレンズ周辺が方形に窪んでおり、残された電池室がグリップを形成している。表面がツルツルだからグリップの効果はある。あまりエルゴノミクスとか考えているふりをするよりも好感が持てる。
 見た目が「流通業者・ショップブランドのトイデジカメ」然を感じさせるエキセントリックさなので、初めは気づかなかったのだが、ちゃんと眺めると光学3倍ズームレンズを搭載してる。てっきり、単焦点・固定焦点(パンフォーカス)のトイデジカメだと思っていた。撮像素子は2006年当時ではスタンダードな500万画素級で、電源は単三型電池2本。記録媒体はSDカードで、光学ファインダーは非搭載だが大型の液晶ビュワーを持つ。案外常識的なパッケージングのカメラなのだ。
 実際撮影してみると起動もAFも記録も人並みのカメラとしての水準にある。望遠側のAFがちょっと甘い気がするが、2006年の水準から大幅に劣っているとは判断し辛い。手振れ補正機構は付いていないが、価格的に問題にならないだろう。レリーズ直後にカメラを動かすと被写体がひん曲がったりもしない。実に普通のカメラだ。ショップブランドの廉価カメラというとジャスコが発売したポラロイドPDC2070を思い出すが、あれは人並みにカメラとして使うには気合のいるクオリティだった。それにくらべれば、随分とちゃんとしたカメラが登場したものである。
 撮影画像の話をすると、確かに晴天下ではビビットで美しい描写をする。エッジの強調とかハーフトーンのノイズとか気にしようと思えば気になるのだろうが、拙僧は500万画素級撮像素子で撮影した画像を等倍にしてPCで鑑賞して四隅の解像度の修正具合を見るといった楽しみは無いので気にならない。付け加えれば、雲天や日陰では思う以上にシャッター速度が遅くなるので注意が必要だろう。
 ところで、これは肝心なことなのだが、本カメラは多分、三洋が設計して製造もしていると思われる。メニューやアイコンが三洋ブランドのデジカメと同じかきわめて似ているのだ。ユニデンは液晶テレビも手掛けているし、多分、三洋の方からOEMのアプローチが有ったのではないだろうか。そう考えると、ベンチマークのテストでエネループを起用しているのも合点がいく。
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 本カメラの存在意義の危うさは価格帯である。確かに普通のデジカメとして使い物になるが13800円は妥当だろうか。拙僧は2006年次のデジカメの相場は正確には知らないが、あと数千円出せばパワーショットAシリーズとかファインピクスAシリーズに手が届く気がする。中古ならもっと選択肢が広がるだろう。かといって、トイデジカメのカテゴリーでは高すぎるし、第一普通に撮れすぎる。
 流通業者・ショップブランドのカメラはジャスコにしろ無印良品にしろ時折見かけるが、成功した話を聞いたことが無い。台湾や大陸の安デジカメを見ると、日本でそこそこの価格を付ければ商売になるのではと思うのは分からなくもないが、世界で最もカメラの期待が高い日本人を相手にするのは難しい。現在でもDPE屋ブランドの安デジカメを見かけるが、キタムラで1400万画素級デジカメが8000円福袋で並んでいるのを見ると、商売的には難しいだろうな。そんな中でも、ケンコーはなかなか健闘していて、興味深いトイムービーデジカメを出している。何れ紹介したい。

   では、撮影結果(覚王山縁日編)を見て下さい。

(了:2011/11/23)

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