リコー キャプリオ RDC−i500について


CaplioRDCi500
最後のPDA端末型カメラ

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能



CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
当時は薄型と言われがボディ。
カメラだけが能とは思わせないスタイリング。


CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
光学3倍ズームレンズを搭載。
レンズ脇の縦位置用レリーズが効果大。


CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
液晶ビュワーを開けると電源ONする。
残念ながら液晶ビュワーを閉じても電源OFFしない。


CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
液晶ビュワー角度の自由度は高い。
撮影・再生には不足はないが、高機能を発揮するには足りない操作系。


CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
液晶パネルと独立した操作ボタンで、液晶ビュワー無しので撮影も快適である。


CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
モードダイヤル上部にズーミングレバーを配置するのはイマイチだと思う。
ダイヤル自体も抵抗力が少なく、しばしばずれている。


CaplioRDCi500 CaplioRDCi500
記録媒体はコンパクトフラッシュ。バッテリーはフジフィルムなどが広く採用したNP−80。

 ふと気づくとリコーは好きなメーカーである。リコーの半導体商社に就職してかなり酷い目にあったのだが、これは別にリコーが悪いわけではない。実は戦前からカメラを生産する伝統あるメーカーなのだが、あまりそういう威厳が表に出ない感じに好感を持つのだろう。拙僧はアル中の酷い父親で泣かされたから父権権威主義は大嫌いだ。その点、リコーはフィルム時代からリケン35だのリコーオートショットだのリコーオートハーフだのアバンギャルドなルックスのカメラで先を行っていた。リコーオート35なんて先を行き過ぎて時代が置き去りになっている感があるが、KMZがしっかりとゾルキー10/11でリスペクトされている(コピーとは言うまい)。それでいて写りは結構いい。なので国産レンズシャッターファンは「リコーに外れなし」と高く評価しているのだ。
 デジカメの黎明記からリコーは熱心であった。初期のリコー製デジカメはDC−2LのようなPDA端末タイプであった。これをオペラグラススタイルと称しているコンテンツもあるのだが、これは液晶ビュワーが別体で、本体のみでも発売していたことによる。信じられないかもしれないが、そういう中途半端な状態で購入し、光学ファインダーとモノクロ液晶パネルの組み合わせで使うニーズがあったのだ。それ程、初期のデジカメは高価だったのである。エプソンのCP−200も液晶ビュワーが別売りで、しかも再生にしか使えなかった。DC−2Lはかなり高価だったこともあって、続くDC−3は比較的価格を抑えたのだが、液晶ビュワーも標準装備となる。次の、DC−4ではオーソドックスに傾いたが、やはり回転レンズ式でフィルム時代とは一線を画すニーズをターゲットにしていた。その後もパソコン通信(当時)との親和性を高めたり、文字記録モードやボイスレコーダーの機能を付加したり、オフィス機器メーカーらしいビジネスユースを取り込んだデザインに固定のファン層を形成した。しかし、オーソドックスなスタイリングのモデルはイマイチ市場に響かず、シェアの広がりは鈍かった。そこから派生した工事カメラの分野では順調な滑り出しだったが、これもビジネスユースの一角であろう。
 本カメラは2001年の4月に登場した、PDA端末タイプデジカメの末裔である。本カメラの前年ににはRDC−i700という、この種のカメラの集大成と言っていい超弩級カメラが登場している。RDC−i700については大佐殿のコンテンツをご覧いただきたい。タッチパネル搭載で操作をし、Web閲覧も出来る凝りに凝ったカメラだ。いや、リコーは自社の製品をデジタルカメラとは言っていない。「イメージキャプチャリングデバイス」である。ネットワークやその他のオフィス機器とのリンケージをアピールしたのだ。拙僧は本カメラを前年に登場したRDC−7のファインチェーンバージョンだと思っていたのだが、RDC−i700を簡易化した後裔機という位置づけのようだ。RDC−i700は目指すところは意欲的だったが、図体もでかくて価格も高く、普及にはなかなか難しい代物であった。それで大幅に機能を省略してスリム化したのが本カメラということなのだが、見た目もサイズもRDC−7と極めて似ており、実質的には後裔機の関係にあるだろう。
 リコーは本カメラからキャプリオブランドを与えている。英数字のモデル名では売込みし辛いと営業側から何かしらのアプローチがあったのだろう。リコーのモデル名は採番が画素数を表しているわけでもなく、直感的は分かり辛い物であった。それにペットネームがあったほうが、市場も受け入れやすい。
                    ☆             ☆
 現在ではPDA端末型というカテゴリーは消滅してしまったので、撮影する姿は知らない方には奇異にみえるだろう。もっとも、レンズの存在は目立つから、撮影する機械だとは容易に想像できる。折りたたんだ液晶パネルを開くと、測量機器か放射物の計測機器に見えるな。当時の本カメラを紹介したコンテンツを見ると「薄型ボディ」と書かれているのだが、どう贔屓見ても薄型には見えない。いかに、旧世紀には薄らでかいデジカメが多かったのかがわかる。本カメラの多機能性を考慮すれば、よくコンパクトにまとまっていると言えなくはない。あまり語られることはないが、金属ボディで質感もよい。ボディ下部の三脚穴の周辺にラバーが貼っており、横位置で撮影したときに指の引っかかりになっている。それに、特に縦位置でのホールディングの良さは特筆できる。横位置でのレリーズボタンのほかにボディ前面にも縦位置で構えた時に便利な縦位置用レリーズボタンがあるのだ。これにより、パナソニックのD−snap SV−AV50や三洋電機のザクティのようなムービーカメラライクな運用が可能だ。本カメラの運用については興味深いコンテンツ「モバイルキャリアウーマンAIKOの場合」を見つけたのでご覧いただきたい。このコンテンツをみるとリコーの思惑が安易にわかると同時に、本カメラの限界を垣間見る事が出来る。こういうのは囃し立てるほど、踊らないものだ。
 撮像素子は300万画素級でサイズは1/1.8型と普及コンパクトデジカメとは一線を画す。レンズはライカ判換算で35〜105mmF2.6〜3.4の光学3倍ズームである。当時の大抵のカメラは気が利いても広角側F2.8だから、少々気合が入っているな。勿論、気合が入っているのはマクロモードで最短1cmまで被写体によることができる。マクロモードではズーム位置を望遠側に固定するが、被写体を歪みなく撮影するブツ撮りは望遠側で撮影するのが常なのである。マクロモードで広角側に固定するカメラもあるが、子供だましと言っていいだろうな。
 本カメラの神髄は撮影だけに留まらないところだ。つまりネットワークとの親和性であり、本体単体でメールの送受信やFTP通信が可能なのだ。具体的にはAIKOさんのように、見本市でサンプル品を撮影してメールを作成し、画像を添付して送信できるのだ。感度はISO800モードを搭載するので屋内の見本市でも効果的だ。今では携帯電話で簡単にできることだが、2001年当時ではユニークな機能だったのだ。但し、タッチパネルを採用したRDC−i700なら兎も角、十字キーとコマンドボタンの本カメラでアドレスを設定したり、メールを作成するのは込み入った作業であるな。当時はコンパクトフラッシュ型の無線LANカードがあったそうで、本カメラの拡張はコンパクトフラッシュで行ったらしい。今となっては入手は難しいだろう。しかし、コンパクトフラッシュを採用しているのは福音である。RDC−7はスマートメディアだったのだ。64MBとか128MBとか半端物のコンパクトフラッシュが活用できる。これがスマートメディアだったら、32MBのものだってカメラ本体より高い。
 液晶ビュワーの立ち上げで電源がONする。但し、これにはセットアップメニューで「モニター開時電源オン」を「する」に設定する必要がある。撮影可能状態に遷移するまで約4秒ほど掛かるが、当時としては標準レベルである。液晶ビュワーの他に撮影可能枚数や画質モード、フラッシュモードを表示するモノクロ液晶パネルを搭載し、液晶ビュワー非表示で光学ファインダーを使用した撮影が可能である。ボディ上面にはフラッシュモード、内蔵メモリとコンパクトフラッシュの切り替え、画質モード、マクロモードの4つの設定ボタンを用意しているので、大抵の撮影は液晶ビュワーを使用しなくても可能だ。光学ファインダーは視度調整機能付きだが、覗いても近接パララクスの指標がある他は特に何を表示する訳ではない。それでも、見栄えは良好である。横位置での撮影は既に絶えた110判ポケットカメラを髣髴させる。縦位置の撮影ではシングル8カメラとスタイリングが重なる。拙僧のようなオールドファッションには好ましい感覚である。個人的には縦位置で液晶ビュワーを開いた状態が、若干ホールディングが不安になるが気に入ったスタイルである。縦位置で撮影した画像が再生時にはちゃんと縦位置で表示するのも好感度アップである。本カメラのスタイリングを決定づけるのがバリアングル液晶ビュワーである。9万円という価格帯からして、AIKOさんのようにバーで知り合ったイケ面男子と本カメラで自分撮りというニーズはあまり考えられないだろう。むしろ、縦位置やボディを逆さまにしてカメラを高く構え、仰角で群衆の頭越しの撮影などに効果的だ。なお、本カメラはカメラ内で独立したフォルダーの作成と切り替えが可能なので、AIKOさんも仕事の画像とプライベートな画像を切り分ければトラブルの可能性が減る。7MBの内蔵メモリも搭載するので、フレキシブルに画像のカテゴリーを切り替えることが可能だ。
 電源は初期のファインピクスやコダック、東芝が採用したかまぼこ型のNP−80である。流石に10年近く前に登場したものだから、経年劣化は避けられない。それでも、3時間の散歩、60枚ほどの撮影はこなした。モノクロ液晶パネルにバッテリー消費を表示しても粘る。但し、この頃のバッテリーは自然放電が激しいのか、前日にちゃんと充電しておかないと急速に減るようで、4〜5日前に充電した予備バッテリーがあっても安心はできない。本カメラはジャンク・ボディのみで拾ったものなので、当然、ACケーブルは付属していなかった。5VなのでファインピクスのACケーブルが使えるかと思ったのだが、本体充電はしないようだ。なので、ファインピクス2900Zでバッテリーを充電して使った。
 フォーカシングはのんびりしているが、外すことは滅多にないのでストレスは感じない。暗いところでも確実に会うので見本市でも困らないだろう。リコーも気を利かして「FOCUSING」と表示して気を紛らわせる。AEも大体合っていると思うし、逆光も強い。但し、肝心の画像については新世紀早々の300万画素級デジカメとして割り切る必要があるだろう。ラチュードが狭いのか、明暗の差があると簡単に白とびする。案外、見本市で新製品のアンダーな口上書きを残すようなセッティングになっているのかもしれないな。カメラとしての基本性能はクールピクス880の方が高いが、それは野暮というものだろう。
                    ☆             ☆
 拙僧の知る限り、この種のPDA端末タイプのカメラは本カメラで絶えたようだ。2002年頃にはイノベーターとは隔世の拙僧だってカメラ付携帯(電話)で、当時恋人の妻を待ち受けにしていたから水戸黄門のように社会的役割を終えたのだろう。
 既にデジカメの市場の立ち位置は確定しており、奇抜な機能を誇ってもソフトウェアで実現するようなものばかりだ。がっつりハードウェアで実験的ニーズを開拓するような大勝負が見られないのは残念である。

   では、撮影結果その1(秩父散歩編)を見て頂きたい。

(了:2011/12/16)

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