カシオ QV−R40について


QVR40
オーソドックスでよく出来た優良機。

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


QVR40 QVR40
 ライカ判換算で39〜117mmとちょっと望遠側に振ったレンズ。
 コニカ製らしいが・・・。

QVR40 QVR40
 シンプルなボディ上面。
 電源ボタンは小さく押し辛いが使い勝手を悪くしない工夫がある。

QVR40
 ボディ背面もシンプル。ここで注目していただきたいのが、緑と赤の丸いボタンだ。

QVR40
 これが本カメラの使い勝手の工夫。緑の「PLAY」ボタンを押下すると速やかに再生モードになり、赤の「REC」ボタンを押下すると速やかに撮影モードになる。

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 センター付き十字キーの使い心地は悪くない。
 メニューも階層が深く入り組むことも無く、合格点。

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 電源は嬉しい単三型電池採用。記録媒体はSDカード。
 廉価機にもかかわらず、液晶ビュワーにはヒストグラムを表示する。

 デジカメを世に普及するパイオニアとなったのが名機QV−10だ。これには異論を唱える方は少ないだろう。そのQV−10を送り出したのがカメラメーカーではなく、電子機器メーカーのカシオだったのは興味深い。初戦はそのコンセプトが市場に受け入れられたのだが、その後、カシオは数年にわたってQV−10をベースにした改良型を出し続けてしまい、画質を重視する市場のニーズと差異が生じてしまう。あのメガピクセルデジカメのマイルストーンとなったフジのファインピクス700の登場と同じ頃、カシオはまだQV−10から半歩しか前進していないQV−770などと言うカメラを登場させていた。これには我ながら危機を覚えたのか、その後画質向上に力を入れ、コンシューマー向けとしては初となる300万画素級デジカメのQV−3000を登場させるが、「どうせカシオだから」という理不尽な理由で然程盛り上がらなかったようだ。しかし、神はカシオを見捨てていなかった。カードサイズの本格メガピクセルデジカメのエクシリム(EXILIM)で一躍ヒットを飛ばす。これまた、コンセプトの勝利だ。その後、単焦点固定焦点だったエクシリムシリーズもペンタックスとの協力で薄型で標準ズームを搭載する主力モデルとなり、QVシリーズは単三型電池を使用する廉価モデルと位置づけられてしまった。キヤノンのパワーショットシリーズで言えばAシリーズにあたるだろう。2003年8月に登場した本カメラはそんな廉価なカメラと言う位置付けで登場した400万画素級デジカメである。しかし、なかなか馬鹿に出来ないよく出来たカメラだ。ちなみに、実売価格は3〜3.5万円位だったようである。
 外装はアルミで高級感がある。デザインは厚みはあるもののコンパクトで上位機種のエクシリムシリーズの雰囲気をかもし出している。実際、この位の厚みがあるほうがグリップしやすい。手元には後裔機のエクシリムEX−Z55があるが、背面など大型の液晶ビュワーがボディ面積を占めて親指の置き場に困るほどである。また、本カメラの液晶ビュワーは当時の廉価機としては標準的な物だが、欲張って大きくない分十字キーなどのインターフェイスにボディ面積を割くことができ、操作がしやすい。また、その厚みのおかげでズームレバーを上部に置くことができた。センターにレリーズボタンを置いたレバー式のズームレバーなのだが、エクシリムEX−Z55の背面に置かれたボタン式に比べて節度があり使いやすいと拙僧は思う。また、本カメラの操作性の向上に貢献しているのがダイレクトON機能の存在である。これは、緑色の三角形をイメージした「PLAY」ボタンと赤色のカメラマークの「REC」ボタンで、それぞれのボタンを押下すると電源のON/OFFに関らず、「PLAY」ボタンなら再生モードに、「REC」ボタンなら撮影モードにワンプッシュで移行するのである。本カメラの電源ボタンはボディ上面にツライチで小さく存在して、必ずしも操作しやすい物ではないが、このダイレクトボタンのお陰で素早い起動が可能である。このクイックボタンの存在は、本カメラの最大の特徴である「約1秒の素早い起動」や「0.01秒のレリーズタイムラグ」の存在を大きく色めかすこととなる。
 デジカメの発展は歴史的にもそのレスポンスとの戦いであったといっても過言ではないだろう。今では誰もそんな事は言わないが、「デジカメ画像のクオリティがフィルム写真に迫った」と言われたメガピクセル世代になっても起動時間や撮影間隔など、多くのデジカメの運用にはそれなりに待たされる時間と言うのが存在した。三洋の爆速デジカメやオリンパスのE−100RSのような例外はあったが、固定焦点(パンフォーカス)だったり非常に高価だったりで色々と制約があった。なので、本カメラのようなベーシッククラスのデジカメが「撮りたい時に素早く撮影できる約1秒の素早い起動」「シャッターを押した瞬間が撮影できる0.01秒のレリーズタイムラグ」を実現したのは大したものだと思う。実際、起動時のレンズの伸長は素早く、その瞬間から撮影が可能である。また、レリーズ後にデュレイを感じることも無い。但し、撮影画像の記録についてはバッファリングをしていないようで記録中は撮影できない。これは記録速度の遅いSDカードを使用する場合に影響が生じる事になるが、拙僧の使う安SDカードでもイライラ待たされる事は無かったので殆ど問題にならないだろう。
 レンズは39〜117mmF2.8〜F4.9とちょっと望遠側によっている。なんでも受光素子とレンズはコニカのKD−410Zと同じらしい。カシオは光学メーカーではないのでレンズはキヤノンやペンタックスのものを過去にも採用していたが、コニカの物も採用しているとは知らなかった。という事は、このレンズもヘキサノンになるのかもしれないが、ペンタックスのレンズが「SMC」の記載を掲げているのに対し、本カメラは無記名である。どのような事情があるのかは知らないがヘキサノンと言う名に心地よさを感じる拙僧などは少し寂しい思いだ。なんでもKD−410Zも起動1.3秒と高速を謳っており、受光素子を含めたレンズユニットは丸ごとコニカから供給されているのだろう。カシオが勝負するのはあくまでも操作性や運用性といったコンセプトだ。レンズの最短撮影距離は60cmとかなり物足りない。マクロモードなら10cmまで寄れるが焦点距離が広角側に著しく制限される。このあたりは廉価機として割り切った点なのだろう。数値上で優秀でも望遠側でマクロが物足りないカメラと言うのは実は割と存在する。反対に優れているのは5点マルチオートフォーカスである。これはこのクラスのカメラとしては奢った機能だと思う。
 また、カシオのデジカメと言うとベストショット機能の紹介を避けることが出来ない。これは拙僧も使わないのでよく分からないのだが、焦点・測光方式・露出補正量・彩度などの諸設定が予め用意された「人物を写します」「風景を写します」の他に、過去に撮影した画像の諸設定をベストショットとして保存できる機能らしい。つまり、マクロモードで任意の露出補正と彩度を設定して撮影した画像の過去の諸設定を呼び出して同じ設定で撮影できると言うものだ。なんだか、ミノルタのα7700iのインテリジェンスカードを思い浮かべる。これが、絞りやシャッタースピードを設定できるカメラならその存在意義もありうるのだろうが、本カメラは基本的にオートカメラで任意に設定できる項目は少ないので存在意義は少ないような気がする。まあ、カシオのデジカメを使い慣れた方なら無いと物足りないのかもしれない。
 尚、ISO感度はオート、80、160、320に設定できる。それが快か不快かは兎も角、ちょっとノイジーな画像を再現するので気になる方はISO80モードで固定するのが良いだろう。レンズも望遠側が長い割りに一寸暗いので薄暗いシーンは得意ではないということになる。
 そのほか、カレンダー機能と連動したサムネイル表示や記念写真などで3枚連続で撮影して最も気に入った画像を残す「トリプルタイマー」、Webブラウザーで表示できるアルバムをHTML言語で出力する「アルバム機能」など、込み入った機能が沢山有ってそういうことが好きな方には飽きさせないカメラになっている。
                            ☆              ☆
 では、早速使ってみよう。丸いカメラマークのダイレクトボタンを押すとレンズが素早く伸長し、撮影可能状態になるのは心地よい。撮影モードは「通常モード」「ベストショットモード」「動画モード」の3種類が用意され、十字キーの左右で切り替わる。「ベストショットモード」だと、起動時に現在のシーンモードのイメージアイコンと同時に「SETでシーンを選択」を表示する。このとき、SETボタンを押下するとイメージアイコンと同時に「子供を写します 色強調が肌色、感度が高めに設定されます。」等と、そのシーンモードの意味と設定される諸設定の簡単な説明文が表示される。実に親切だ。動画撮影はオマケみたいな物だと考えた方が良いだろう。また、液晶ビュワー左下にはヒストグラムが表示され、こういったデータを扱うのに長けた方には便利だと思われる。このクラスのカメラの機能としては中々の物だ。
 前述のように基本的にオートカメラなので任意に設定できる項目は少ないが、そういったこともあってメニューは簡単でボタンも少なく設定はしやすい。また、撮影時に頻繁に使う機能は十字キーに割り当てられていて簡潔である。十字キーの上のボタンはは押す度に「通常」−>「マクロモード」−>「無限大モード」−>「MF(マニアルフォーカス)モード」と切り替わり、「MFモード」では左右のボタンでフォーカシングを行う。このクラスのカメラでMFが出来るのは素晴らしい。下のボタンはフラシュモードの切り替えを行う。嬉しいのがこういった諸設定を電源OFFでも覚えていることだ。スナップ撮影で不用意にフラッシュを焚いて罰の悪い思いをすることが無くなる。これはありがたい。日付も含め、こういった諸情報は電池を抜いても2日間は保持するそうである。
 AFもクラスの割には素早く迅速で正確である。これは5点測距が効いているのであろう。もっとも、花や昆虫を撮影していると最短撮影距離の長さに悩まされる。フォーカスが合わないとき液晶ビュワーのカーソルが赤く光るが、そのような時は大抵被写体との最短撮影距離を割っているときである。ボディ上部に位置するズームレバーは節度があって扱いやすい。この点、薄型ボディと大型液晶ビュワーに追いやられて小さなボタン式になってしまったエクシリムEX−Z55より遙かに扱いやすい。同じような厚さのルミックスのズームレバーはちゃんと上部に位置し、扱いやすいレバー式なのでこの点はカシオもよく考えて欲しかった。
                            ☆              ☆
 専用電池を使用する上位機種に対し、単三型電池を使用し機能を限定化させた廉価機を出すと言うのは色々なメーカーが取り入れている方法である。本カメラもその一つだが、汎用性の高い電源とシンプルな操作性で上位機種よりも扱いやすい場合もある。本カメラなど、そういったカメラの一つといえるのではないかと思う。独特のノイズが乗り、再現色が少々多過に鮮やかなのが気になるが誰でも簡単に扱える好感の持てるカメラだと思う。
 

   では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2009/09/30)

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