カシオ QV−3000EXについて


QV3000EX
コンシューマー向けカメラとして始めた300万画素級に達した逸材。

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


QV3000EX QV3000EX
 レンズはキヤノン製の光学3倍ズームレンズ。
 ライカ判換算で33〜100mmF2.0〜2.5と明るく使い甲斐がある。

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 300万画素級越えを初めて果たしたカメラとしてキヤノンパワーショットS20と争っている。
 グリップは効果的。

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 このトップラインのエグさが本カメラのスタイリングの評価を下げているようなのだが。

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 レリーズボタンの周りに複数の機能ボタンを配置するのは、混乱を招く。

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 液晶ビュワーの見え具合は世代なり。

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 メニューの操作系デザインは理にかなっていてよい具合。

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 モード変更は仮想ダイヤルにて行う。
 これは意外と面白い物で、カシオのユーザーへの演出を重視した姿勢を感じるな。

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 基本的には1ボタン1機能をポリシーとしている。
 この指先で押しこむズーミングレバーは節度も建付けもイマイチだなあ。

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 全体的にプラスチッキーで安っぽい。
 それは良いのだが、やっぱり電池蓋が外れたりして安分身なボディである。

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 電源は単三型電池4本使用。記録媒体はコンパクトフラッシュ。

 デジカメ史の中で金字塔と言えばカシオのQV−10である。このカメラによって、コンシューマにデジカメマーケティングが発生した。スタートラインを共にしたリコーやコダックが及ばなかったのは何しろ高額だった。本体だけ何とか購入しても、実用レベルまで撮影可能枚数を増やすためにメモリを増強したり、PCに転送してメールで送ろうとしようと思ったら、平気で15〜20万円もした。1995年の物価である。QV−10はひとまず、ボディと電池だけで100枚近い画像を撮影できた。無論、再生もできたしサムネイル表示も倍率を変えたり、それなりに凝ったことができた。レンズが回転するスイバル式だから、打ち上げで隣り合った派遣社員の女子と2ショットを撮ることもできた。大した画像ではないが、当時のネット環境だから、画像が大きくてもメールに載せるのは不都合だったのだ。ワードのファイルですら分割して送信した時代である。カシオが優れていたのは演出だった。その後、カシオはQV−10の画質を少々改善したQV−11や、燃費の悪い液晶ビュワーを非表示にしても撮影できるように、光学ファインダーを搭載したQV−70を送り出す。しかし、その頃にはオリンパスはハイエンド機として140万画素級のC−1400Lを出していたし、コンパクトデジカメのジャンルでも、コダックが109万画素級でズームレンズを搭載したDC−210Aズームを出しているし、次代のニーズは画質になっていったのだ。
 その後もカシオは回転レンズ(スイバル)式に拘って、光学8倍ズームレンズを組み合わせた意欲作も出している。しかし、あえてカシオを買うコアターゲットを確立するには至らなかったようだ。それで、カシオが正攻法で挑んだのが本カメラだ。何しろ、コンシューマー向けコンパクトデジカメとしては初の300万画素級の撮像素子を搭載した。その名誉はキヤノンパワーショットS20と争っているのだが、これはどうも海外発表と国内発表に時間的なズレが生じた結果らしい。少なくても、国内では本カメラの方が先のようだったから、本コンテンツではそのように話を進めることにする。
                 ☆              ☆
 撮像素子は1/1.8型の334万画素級原色系CCDである。原色系といっても現在ではピンとこないが、そもそもCCDは光の量を感知しても色までは感知しない。なので、カラーフィルターをCCDに組み合わせて、読み取る光を制限するのだ。つまり、光の三原則であるR(赤)G(緑)B(青)の各フィルターを通して、その光だけを感知するのである。これが原色系CCDである。一方でRGBではなく、その補色であるC(シアン)M(マゼンダ)Y(イエロー)のフィルターで各色をピックアップするのが補色系CCDである。双方に一長一短があるのだが、拙僧の個人的な理解の範疇を越えるので、「違うのだな」と理解していただきたい。単純には補色系の方が暗い被写体でも粘り、原色系の方が色再現が鮮やかだとされる。原色系と補色系の違いはあるが、このスペックの撮像素子を採用するデジカメは非常に多い。多分、フィルターは違っても同じものなのだろう。勿論、根拠はないがそうでないというのはちょっと不自然な気がするな。レンズはキヤノン製のライカ判換算で33〜100mmF2.0〜2.5の光学3倍ズームレンズである。明るく、使い勝手の良いレンズである。これも良く知られるように、東芝やエプソンも供給を受けた。本カメラは電源とバリアングル液晶モニターの違いを除いたら、極めてパワーショットG1に近い。なので「プアマンズ・パワーショットG1」とも呼ばれている。本カメラが定価ベースで88000円。パワーショットG1が115000円だから、実売ベースでも2〜3万円は違っただろうな。
 電源スイッチはレリーズボタンと同軸のシーソースイッチを「REC」に傾ける。レンズが伸長し撮影可能状態になるまでにフラッシュを発行禁止にすれば。4〜5秒程かかる。フラッシュモードは起動中でも変更できるので、さっさと発行禁止にした方がイイだろう。レスポンスは、当時のデジカメとしては標準的である。残念なのがフラッシュモードを電源オフ時に記憶しないことだ。なので、電源オンの度にフラッシュモードを設定する必要がある。レリーズボタンを押下するとAFユニットが駆動しシャッターが切れて撮影画像をプレビューする。残念なのが、レリーズ後に液晶ビュワーが一瞬消えてしまうのだ。これはパワーショットG1でも同様だったので当時としては仕方ないのだろう。AFのレスポンスは良い方で、案外、サクサク撮れる。但し、パワーショットG1程、AFにパワーが無いようで、歩きながら向かってくる被写体をとっさに撮影した場合の歩留まりは、パワーショットG1に比べると悪い。パワーショットG1が比較的もっさりした画像再現なのに対し、本カメラの方が色彩的にもやや鮮やかなのだが、画質がイマイチだなと思うのはAFが間に合っていないか、シャッター速度が遅くなって手ブレ・被写体ブレしているのだろう。
 フォーカスも合っていて、手ブレ・被写体ブレをしていなければ、画質で不満を感じることは少ないだろう。やはりパワーショットG1と兄弟同士なのか、苦手な被写体は同じである。これは撮影結果を見ていただきたいのだが、周辺が明るく日陰の被写体がコントラストが低く、眠い画像になる。一方で、本カメラの方がダイナミクスレンジの飽和に対する処置が良好で、パワーショットG1では白とびしていたアスファルトが、本カメラでは粘っていた。撮像素子は同じものなのだから、AEや画像処理が巧みなのだろうな。
 パワーショットG1は専用電池だし、電池やチャージャーはびっくりするほど高いから、確かに取っつきにくいところはある。基本的に同レベルの画像が撮影できるのなら、本カメラの選択肢もありうる話だ。確かに向き不向きが若干あっても、本カメラがパワーショットG1に拮抗する画像を撮影するのは確かだ。しかし、ボディは比べ物にならない程安普請だ。アウターシェルが安っぽい樹脂なのは問題ないにしろ、コンパクトフラッシュの蓋や電池蓋の建付けが悪く、拙僧の個体も脱落した。簡単に治ったが、定価ベースで9万円に極めて近いカメラとしては如何な物だろうか。また、インターフェイスデザインも問題である。モードダイヤルを廃して仮想ダイヤルを液晶ビュワーで再現するのは、カシオらしいユーザーに対する演出なのだが、ボディ上部のレリーズボタン周りにボタンが4つもあるので、とっさの撮影の時に混乱する。つまり、レリーズボタンを押下したいのに違うボタンを押下してしまうのだ。これは思うよりも問題が大きい。多分、モードダイヤルを省略してコストダウンを図る意味もあったのだろうが、レリーズボタンの周辺に、機能ボタンをいくつも並べるのはルーフプルーフとして良くないな。それと指の腹で操作する背面のズーミングスイッチの節度も建付けもイマイチだ。もう少し、使い勝手を考えてほしかったな。
                 ☆              ☆
 なにかと使い勝手に問題はあるが、画質は当時最強であった。好みもあるだろうが、パワーショットG1よりも、多々のケースで美しいと思わせる。AFやインターフェイスデザインがイマイチなのは、やはり伝統的光学機器メーカーに一歩譲るところである。それでも、使い様だろうな。本カメラは3種類のシーンモードの他、シャッター優先AEや絞り優先AEを搭載し、MFモードも搭載する。その気になれば様々なプロパティを任意で選択が可能だ。
 何しろ安いし、画質も綺麗なのだが売れ行きは今一つだったようだ。どうも、「カシオだから画質はイマイチに違いない」との先入観が販売の足を引っ張ったらしい。確かに、このルックスのエグさと安っぽいアウターシェルは実売70000円を出すのに勇気が必要だっただろうな。カシオの評判を更に悪くしたのは、1年後に本カメラに若干の改修を行ったQV−3500EXを出している。違いはベストショットを搭載してレンズにフィルター用の溝を切ったくらいなのだが、そんな程度の改修で定価88000万円は変わらなかった。良い面の皮というか、知らないでQV−3500EXを買った方は騙されたと思うだろう。型落ちの本カメラが基本的には同じもので実売3万円以下だと知ったら二度とカシオのカメラは買わないだろうな。
 しかし、現在の視点では電源は単三型電池だし、記録媒体もコンパクトフラッシュだから64MBあたりの半端物が転がっていたら使ってみるのも一興だと思うな。
 カシオに必要なのはイメージ戦略だと思うのだが、安易にタレント・著名人を使わず、機能性やユニークな製品キャラクターで勝負する姿勢は好感が持てる。

   では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2013/6/5)

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