キヤノン パワーショットS1ISについて


PowerShotS1IS
キャノンの豊富なノウハウでてっとり早くまとめた手振れ補正機構付き高倍率ズームレンズ機

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 手ブレ補正機能付きライカ判換算で38〜380mmF2.8〜3.1の明るい光学10倍ズームレンズを搭載。
 ズーミングはキヤノンお得意のUSMで行い、静粛かつ迅速。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 有機的なデザインの軍幹部にフラッシュを搭載する。
 オート撮影モードなら勝手にポップアップするらしいのだが、この個体は手で開け閉めする必要がある。その方が事故が無くて便利だ。
 グリップも効果的でEOSシリーズのノウハウが活きている。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 電源ONはロック付きレバーで行うが、バリアングル液晶ビュワーを開くことでも起動する。
 これは迅速で便利だ。


PowerShotS1IS
 液晶ビュワーは完全に隠すことが出来る。
 EVF(電子ビューファインダー)を使用時には液晶ビュワーを鼻の油で汚さずに済む。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 マルチモードAEの他、豊富な機能で凝った撮影ができる。
 操作系は機能が独立しているので使いやすい。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 記録媒体はコンパクトフラッシュを採用。
 キヤノンの上位機としては珍しい単三型電池使用。
 

 2001年春にオリンパスからコンパクトデジカメのボディに高倍率ズームレンズを搭載したC−700UZシリーズが登場し、コンパクト高倍率ズーム機というジャンルを開拓した。C−700UZの光学10倍ズームレンズはライカ判換算で38〜380mmF2.8〜F3.5とフィルム時代では考えられない明るさを誇っていた。撮像素子は200万画素級で、1/2.7型と普及コンパクトデジカメ並みであり、パワー不足を懸念したパブリシティの供給者やガジェット好きからは批判的な意見も散見出来た。しかし、そもそも普及クラスのボディに光学高倍率ズームレンズを組み合わせ、気軽に高倍率ズームレンズの楽しさを市場に提供するのがコンセプトなのである。そして、そのコンセプトは大当たりしてシリーズ化する。結局文句を言うのは自分の金で買わない連中か、既に高額なシステムを組んでしまって損をした気分になった方々だったのだろう。オートバイの大型免許が教習所で取れるようになって、一番批判的だったのが苦労して試験場で限定解除を果たした方々だった。翌年には300万画素級のC−720UZC−730UZになって画質的な不安は粉飾した。200万画素級の撮像素子で描く画像が劣るとは思えないが、手頃とはいえ実売6万円台のカメラなのだからメンタル的な満足も必要だ。その頃には光学12倍ズームレンズに手振れ補正機構を組み合わせたパナソニックのルミックスDMC−FZ1が登場するが、著しく小型の撮像素子を採用しており、画質的にはオリンパスの敵ではなかった。C−700UZの撮像素子で文句を言っていた連中が、DMC−FZ1は褒めていたりして勝手な物である。パナソニックが画質面でオリンパスと対抗するには翌年の2003年に登場するルミックスDMC−FZ10を待たねばならない。ただ、これは画質の打撃力は非の打ちどころは無いが、それなりに嵩張るレンズと相応のボディで、コンパクトと言うには少々過ぎた。
 その後、各社が送り出したコンパクト高倍率ズームレンズ機だが、キヤノンの参戦は慎重であった。C−700UZの登場以降、3年に渡って沈黙を守っている。キヤノンが高倍率ズームレンズに消極的かといえば、そんなことは全くない。それまでも、手ブレ補正機構付き高倍率ズームレンズをオリンパスに供給したし、同じレンズを搭載した自社ブランドのパワーショットPro90ISをC−700UZの登場直前に発売している。これはキヤノン製デジカメの最上位機種(一眼レフを除く)であるパワーショットG1のボディをベースにしており、定価16万円の物だからC−700UZシリーズやDMC−FZシリーズとはクラスが違う。それでキヤノンも滅多に廉価な高倍率ズームレンズ機を出せなくなってしまったのだろう。そうでないと、10数万円出してパワーショットPro90ISを買ってくれた方々に申し訳が立たない。それで3年越しの2004年に満を持して本カメラの登場となったかといえば、どうもそうでは無いようだ。本カメラの登場はパブリシティ関係者やファンにとってはインパクトが有ったようだが、しばしば語られるように意欲的なモデルとは思えない。前年、キヤノンは廉価機のパワーショットAシリーズの一つの理想形と思えるパワーショットA80を発売している。パワーショットAシリーズは単三型電池を使用する普及機である。伝統的にキヤノンは単三電池使用のデジカメは普及機として位置付けていた。しかし、パワーショットA80は、400万画素級で1.8型の撮像素子を搭載し、バリアングル液晶ビュワーを搭載したパーフェクトなモデルであった。誰もが専用電池でスクエアボディのIXYデジタルを良しとする訳ではない。パワーショットA80は広いニーズに応えるものだった。一方で、更に半年ほど前に登場した一つ前のモデルである、パワーショットA70は300万画素級で1/2.7型の平凡な撮像素子を搭載する。無論、パワーショットA70とて、実売4万円のカメラとしては良心を感じるこなれたカメラだったが、普及カメラの常識を逸脱してはいない。本頁の主人公であるパワーショットS1ISが単三型電池を使用するのは、別に緊急時にコンビニのアルカリ電池が使えるとか、充電式単三型電池が専用電池より価格的に廉価だとか、積極的な理由で決めたのでは恐らくない。多分に廉価機のパワーショットAシリーズのボディを流用したのであろう。それも、完成度の高いパワーショットA80ではなく、より普及クラスのパワーショットA70をベースとしていると思われる。キヤノンの技術からすれば、実際値5.8〜58mm程度のレンズに手振れ補正機構を組み合わせるのは大した手間ではないだろう。有機的なボディラインが前衛的で印象に残るが、冷静に見ればフィルム一眼レフカメラのEOSキス5のラインが見れる。割と大体な感じでてっとり早く作ったカメラだと思える。殆ど忘れられているが、キヤノンは本カメラと同時にパワーショットPro1を発売している。これは800万画素級と当時のフラグシップであるEOS1Dと画素数は同等で(サイズは違う)、当時は珍しいライカ判換算で28〜200mmの光学7倍ズームレンズを搭載していた。しかも、そのレンズにはキヤノンの高級レンズの代名詞である「L」の称号を与えていたのである。これは、合併したコニカミノルタが社運を賭けたディマージュAシリーズと競合する、ハイクラス高倍率ズームレンズ機であった。キヤノンとしては真打はパワーショットPro1であり、本カメラは既存の技術と部品で手早くまとめた前座と位置づけていた。しかし、市場が受け入れ、シリーズ化したのは本カメラである。パワーショットPro1はディマージュAと同様に歴史に埋もれる。
 では本カメラがキヤノンが手を抜いて作った魅力の薄いカメラなのかというと、そうではない。本カメラは魅力的なカメラである。その魅力はキヤノンが自身のポリシーでガチガチに固めたのではなく、大体で作った緩さにこそある。大人が褒める優等生より、ちょっとだらしないけど抜群の1芸を持った同級生のほうが魅力があるのは世の常だ。
                  ☆            ☆
 レンズはライカ判換算で38〜380mmF2.8〜3.1の明るい光学10倍ズームレンズを搭載する。これにキヤノンの強力な手振れ補正機構の技術を組み合わせるから、破壊力は十分だ。鏡筒には超音波モーターを意味する「ULTRASONIC」の記載があるが、これはズーミングに使用するもので、その甲斐があってズーミングは静粛で素早い。本カメラの売りの一つが動画撮影だから、モーター音を拾わないのは大きな長所になるだろう。ただ、超音波モーターはフォーカシングの駆動には使っていないようだ。
 撮像素子は300万画素級で前述の通り小型の普及型を採用している。ライバルのC−755UZやDMC−FZ10は既に400万画素級の撮像素子を搭載しているから、若干のパワー不足を感じなくもないが、拙僧のようにデジ画像はせいぜいキャビネ程度にしかプリントしないのであれば、大した問題ではない。
 電源ONはボディ上部のロック付きトリガーレバーの左右で行う。レバーの回転軸には電源OFFボタンを埋め込んでいる。トリガーレバーを左に動かすとスチル撮影モードで起動し、右に動かすと動画撮影モードで起動する。他のカメラと同時に使うと少々特異な操作なので混乱するが、すぐ慣れるだろう。トリガーレバーの操作から撮影可能状態に至るまでは4秒程と標準並みである。レリーズ後のタイムラグは少なく、フォーカシングもこの世代のこのクラスとしては良いほうであろう。設定で撮影画像の確認を「切る(表示しない)」に設定すれば、ほぼ待たされること無く連続して撮影できる。プレビュー画面の表示がもう少し短いと使い勝手が向上するのだが。運動会など、クリティカルな撮影シーンでも、ほぼ満足のいくレスポンスであろう。本カメラはMFモードを投資足、設定すれば拡大表示もするので、徒競走などでは置きピンが有功だ。一報、近代のカメラと比べてフルさを感じるのがEVFだ。EVFは現在の視点からすると難しいが、同世代の標準的なものに比べて、特別劣るわけではない。しかし、特に望遠側では揺れがちょっと気持ち悪くなってしまう。やはり、ライバルのファインカムM400Rに比べると見劣る。横開きのバリアングル液晶ビュワーは使い応えがある。本カメラのような高倍率ズームレンズ機の使い方として、マクロ的な撮影は期待するところであり、有効である。面積がかなり小さいが、MFモードでは中央部が拡大することだし、必要に充分である。無論、自分撮りも可能だ。例え面積が一回り大きくなっても気分的に嬉しくはなっても、実用には大した差は無く、それで撮れる画像が変わるとは思えないな。
 本カメラの長所は、大体で作った感じなのだが、その利点が出ているのが操作系である。操作系の合理化が極端に進んでおらず、機能とボタンの組み合わせがおおらかなので、多くの機能がひとつのボタンに割り当てている。諸設定は大きく2つに分かれている。ISO感度やフラッシュモードなど撮影に直接かかわる設定は「FUNC」ボタンの押下で行い、AFモードや日付設定など補助的な設定は「MENU」ボタンの押下で行う。モードダイヤルで「SETUP」モードを選択するより、迅速で感覚的に使いやすい。メニューの階層化も控えめで、感覚に理解しやすい。任意の設定をしたカスタムモード登録もできて、かゆいところに手が届く。
 本カメラの売りの一つが動画撮影である。拙僧は使わないので簡単な説明に留める。軍艦部のモードセレクトダイヤルを動画撮影モードにし、ボディ背面のファインダー横の赤点ボタンの押下で撮影の開始ができる。本カメラはズーミングも静粛なUSMを使っているから、音声を拾う動画撮影には何かと都合がよかろう。ボディ背面のボタンの押下で撮影を開始するのはムービーカメラでは一般的なので感覚的に良いのかもしれないが、拙僧にはレリーズボタンとの明確な棲み分けが分からない。動画撮影モードでレリーズボタンを押下すると静止画が撮影できるとか、静止画撮影モードで赤点ボタンを押下すると動画撮影モーを開始するとかの工夫があれば、より使い勝手は向上したと思う。
         ☆            ☆
 キヤノンとしては詰めの甘さを感じる本カメラだが、無論、キヤノンのことだから手手抜かりは無く、翌年には500万画素級撮像素子に36mm〜432mmの光学12倍ズームを搭載した本気モデルのパワーショットS2ISが登場している。多分、パワーショットPro1が残念な結果になって、パワーショットS1ISを更新した方が商売になると思ったのだろう。記録媒体もコンパクトフラッシュからSDカードになって、近代の戦闘にも耐えるようになった。
 割と前座のような扱いで搭乗した本カメラだが、キヤノンのカメラだけあって安定的に良い画像を写しだす。手ブレ補正も効いているらしく、夜間戦闘も可能である。2004年頃のカメラでも光線状態によってシオシオのパーな画像になってしまうカメラもあるのだが、その点はキヤノ品質で耐える。電池もエネループを詰めればよく持つので、半端物のコンパクトフラッシュをお持ちなら、拾い上げてもらいたい。

   では、撮影結果(秩父祭り編)を見て下さい。

(了:2012/1/16)

クラデジカメ系列メニューへ戻る

inserted by FC2 system