キヤノン パワーショットプロ90ISについて


PowerShotPro90IS
今どき「プロ」の名を冠しても誰も関心を持たないが。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


PowerShotPro90IS PowerShotPro90IS
 キヤノン自慢の手振れ補正機構付き光学10倍ズームレンズ。


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 334万画素級の撮像素子を搭載しながら、280万画素分しか使っていない。

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 操作系オーソドックスな物。
 マルチモードAEとマニアル露出、シーンモードを搭載。

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 インターフェイスデザインは常識的である。

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 液晶ビュワーはパワーショットG1譲りの可変アングル。
 金がかかっているらしく、晴天下の見え具合もそれなりだ。


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 EVFの出来も良い方なのだが。
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 バッテリーは初期のEOSが採用したタイプ。
 記録メディアはコンパクトフラッシュだ。

 拙僧のコンテンツを資料性の高い信頼できる物と思っていら者る方はいらっしゃらないだろう。しかし、あまりトンチンカンなことを書いても見向きもされないだろうから、コンテンツを作成するにあたりネット検索でそれなりに調べている。個人の方の情報も有用なのだが、いわゆるプロの作成したカメラレビューのコンテンツをあてにしたいとは、拙僧のような旧世紀人にとっては安易に考えてしまいがちだ。プロのカメラレビューと言っても、プロの何のプロかによって我々のニーズにフィットするか限らない。まず、カメラライターとかメカライターという方々がいらっしゃる。次にプロカメラマンという方々がいらっしゃる。後は、稀にだがプロ写真家の方々がカメラレビューを書く場合がある。ここではカメラマンと写真家は区別したい。別にどのジャンルの方が偉いとかそうではないということではない。やはり、スタンスが異なるのだ。カメラライターやメカライターの方々は、カメラの新機能やメカニズムについて紹介・解説するのが主体となる。プロカメラマンというのはサラリーの為にカメラを扱うプロなのだから、少ない労力でパフォーマンスを得られるかが関心の主になる。写真家の方は自分の写真作り。つまり、アートだったり記録だったりするのだろうが、そのテーマにレヴューするカメラが適当かどうかが重要である。写真家の方にとっては、それが大勢の方々と一致するニーズなのかどうかは全く関係が無い。本カメラは手振れ補正機構付き高倍率ズームレンズ搭載機としては初期の物であり、そのギミックから多くの方々が素性を語っていらっしゃる。勿論、それは本カメラが登場した12年も前の話なのだから、2013年の現在に単純に照らし合わせるのはフェアではない。しかし、12年前だって運動会は運動会だし、紅葉は紅葉なのだから、その時代に適切なカメラだったかは掘り返してみると面白いのではと思う。あまり、意味のない行為なのは承知なのだが、本コンテンツはそういう趣旨なのだ。
                  ☆            ☆
 本カメラの登場は2001年2月である。正に新世紀のカメラであるな。当時、キヤノンはデジタル一眼レフのEOS D30、コンパクト型デジカメの最高であるパワーショットG1、普及クラスのステイタスであるIXYデジタルの3軸を主力に戦線を展開していた。それらの中間の位置を補完するカメラはパワーショットの各タイプで補っていた。本カメラは基本的にはパワーショットG1のボディに手振れ補正機構付き光学10倍ズームレンズを搭載したものである。このレンズは既にオリンパスに供給していたもので、C−2100UZとして本カメラよりも一足先に登場している。オリンパスが200万画素級の比較的廉価なボディを選択したのに対し、本カメラはコンパクト型デジカメとはいえ、ハイエンドのモデルを採用したのは興味深い。C−2100UZが定価ベースで138000円だったのに対し、本カメラはなんと16万円もした。当時、プロユースに堪えうると言われていたオリンパスの400万画素級撮像素子を搭載したレンズ一体型デジ一眼レフのE−10が198000円だから、相当高い。現在では信じられないことだが、最も安いデジ一眼レフのEOS D30がボディのみ358000円だったから、レンズ交換式デジ一眼レフはおいそれと手を伸ばす代物では無かったのだ。なので、手ブレ補正機構を搭載するライカ判換算で37〜370mmF2.8〜3.5の光学10倍ズームレンズの組み合わせは、それなりに魅力があったのだ。
 ところで、本カメラの搭載する撮像素子はパワーショットG1と同じものだから330万画素級である。しかし、本カメラでは真ん中の280万画素級に相当する面積しか使用していない。しばしば、本カメラを300万画素級のデジカメとして紹介するコンテンツがあるが、実際のところは300万画素に届いていないのだ。そういう例は、ソニーのサイバーショットDSC−P3を挙げることができる。どうして、そんなにもったいないことになったのかは、レンズのイメージサークルの大きさによるのだろう。つまり、C−2100UZの搭載する1/2型の211万画素級の撮像素子には充分であったイメージサークルが、パワーショットG1の搭載する1/1.8型の334万画素級の撮像素子では足りなくなってしまったのだ。C−2100UZに遅れること、2か月後にパワーショットG1が登場しているが、キヤノンはオリンパスにこのレンズを供給する段階で、自社製ボディに組み合わせるつもりが無かったのだろうか。そういう意味で言うと、当時のキヤノンの布陣は300万画素級のモデルは旧然としたスタイリングのパワーショットS20で、これは1/1.8型の撮像素子だった。普及クラスのIXYデジタルやパワーショットA20は1/2.7型だったが、これらは基本的にはオートカメラで、任意の絞り値や両優先AEを搭載しておらず、錦のズームレンズを搭載するには足りなかったのだろう。キヤノンの一眼レフ用レンズやムービーカメラのノウハウからすれば、この程度の手振れ補正機構付き光学10倍ズームレンズを設計・製造するのは容易ではあったが、当時のキヤノンはデジカメのプラットフォームの拡張に慎重だった。なので、とにかく上位機種のパワーショットG1に搭載することにしたのだろう。まだまだ、この種のデジカメは少なかったから、画素数が50万画素くらい無駄になっても、大型の撮像素子のいい所を使ってやれば、顧客も納得すると考えたのだろうな。
         ☆            ☆
 本カメラのインプレッションは簡単にしたい。何故なら、長いこと使いたいカメラでないからだ。こういうカメラを買う方はどういうニーズを持っているのだろうか。なにせ2001年の16万円である。もっとも、可処分所得は現在よりも高かったかもしれないが、まとまった金額なのは確かだ。手振れ補正機構付き光学10倍ズームレンズを使いたいニーズと言えば、まず、子供の運動会を想定するのではないだろうか。しかし、結論から言ってしまうと、そういう用途には絶望的に使えないカメラである。
 まず、起動が遅い。これは予め電源を入れておけばある程度は対応できるので対処は出来る。しかし、AFも遅いのは如何ともし難い。特に、相手が動いているときには合焦に恐ろしく時間がかかる。更に、レリーズボタンを押下してから実際に記録を始めるまでのタイムラグがかなりある。また、レリーズボタンを押下した直後に液晶ビュワーが真っ黒になってしまうのも、かなり悪い使い勝手だ。勿論、その後にはプレビューを表示するのだが、肝心のシャッターチャンスは往々にして逃している。本カメラで動く被写体を撮影しようとしたら、兎に角、被写体を中央に置いて、3〜5秒間レリーズボタンを押下し続け無ければならない。これでは元気に動くお子さんを撮影するのは不可能だろう。
 また、拙僧が気分を害しているのがズーミングである。これはレンズ先端のリング状のスイッチの左右で行うのだが、そういう位置には普通フォーカスリングがあるものなので、どうしても頭が混乱してしまう。一見、ダイヤルのように見えるが、実際に稼働する角度は小さく、一種のシーソースイッチである。節度は大雑把で微妙な調整は難しい。どうも、北米のデザインらしく、大雑把に作ってある。ちょっと、エグいスタイリングがあまり評価されていないが、拙僧は割と好んでいる。しかし、スタイリングがもっさりしているのは構わないが、動作がもっさりしているのは頂けないな。撮影画像は満足な物である。発色がパワーショットG2のように演出過剰でないので安心して見れるな。晴天下でフレアがかるというか、露出オーバー気味になってしまうパワーショットG1に比べてそこそこ安定した画像である。撮像素子や画像処理ソフトも全く同じではなく、チューニングしてあるのだろう。          ☆            ☆
 気になるのが、本カメラに与えられた「プロ」のネームである。一体、どういうプロに向けたものなのか分からない。21世紀にもなったら「プロ仕様」なんてのに憧れる方も少ないだろうから、返って安っぽく思われると思うのだが。冒頭で「プロ」のジャンルを紹介したが、拙僧が本カメラを知ったのは、確か学研の「中古カメラGet」だったと思う。その中で、「型落ちデジカメでも使えるよ。」というスタンスで本カメラを紹介していたのだ。確か、本カメラが発売されてから1.5〜2年くらい経過した頃だと思う。確かに、画素数なんて280万画素級で十分だし、手振れ補正機構付き光学10倍ズームレンズは魅力である。しかし、実際に手に取ってみると、こんなレスポンスの悪いカメラなんて使い道が限られる。少なくても動く被写体には全く通用しないだろう。その紹介をした「プロ」が、冒頭の3種類のプロの中でどれに当たるのかは拙僧も忘れたのだが、写真家ではないのは確かだな。
 キヤノンの手振れ補正機構付き高倍率ズームレンズ搭載機の後裔機として登場したパワーショットS1ISは「プロ」が消えてデザインもカジュアルになった。それでキヤノンが懲りたのかと思えば、2004年にパワーショットプロ1を出している。800万画素級撮像素子に、当時は珍しいライカ判換算で28mmから始まる光学7倍ズームレンズを搭載する。ご丁寧なことにこのレンズは「Lレンズ」である。価格は定価ベースで13万円だ。しかし、前年には待望のEOSキスデジ(初代)がボディのみ12万円で登場しているし、どの程度「プロ」としてのアドバンテージがあったのかは疑問である。

   では、撮影結果(明神祭り編)を見て頂きたい。

(了:2013/5/29)

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