キヤノン パワーショットA550について


PowerShotS1IS
キヤノンの良心を感じる完成度の高い廉価機

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 手ブレ補正機構は搭載しないが、使いやすい光学4倍ズームレンズを搭載。
 グリップを形成する保守的なスタイリングに好感を持つ。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 レイアウトもオーソドックスで嫌味が無い。
 グリップも効果的でEOSシリーズのノウハウが活きている。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 今どき珍しい光学ファインダー付き。
 適度な大きさで見やすい液晶ビュワー。


PowerShotS1IS PowerShotS1IS
 操作系もオーソドックス。
 電源は単三型電池2本使用。
 

 拙僧には原体験が無いのだが、デジカメが勃興する以前に電子カメラとういうジャンルが存在した。細かい説明は割愛するが、概ねムービーカメラの1カットをスチル映像として小さなフロッピーディスクに記録するものである。再生はAVケーブルをつないでTVで鑑賞する。いわゆる液晶ビュワーは持たないので、撮影結果はスグには確認できない。なにせムービーカメラのストップモーションという画質だからプリントに堪えるクオリティではない。速度が最優先の報道では一定のニーズを満たしたようだが、コンシューマーユースにおいては失敗と結論付けていいだろう。カシオなど、この時の大失敗で担当者は随分冷遇されたと聞く。その後の困難な道のりを経たQV−10の起死回生はプロジェクトXでも紹介している。キヤノンのQ−PICは比較的売れたようで、拙僧も1台持っている。しかし、35万画素級デジカメにも劣る画像では、流石の拙僧も使用に躊躇するところだな。なんで、そんな不足不便だらけの商品が成立していたかというと、当時のムービーカメラはデカかったのだ。Q−PICで撮影した画像にチラリと写りこんでいたのだが、まずスティンガーかRPG位の大きさがある。なので、プレゼン用に「写っていればよいのでコンパクトなカメラを」という需要もあったのだろうな。
 電子カメラのノウハウもあってか、キヤノンのデジカメ大戦参入は速い方だった。しかし、当初の数モデルは実験的な物である。本格的に市場に投入したのはパワーショットA5である。これはやたらと図体がデカい以外は、現在のデジカメン基本的なコンポーネンツと同様である。パッと見はIXYに近いスマートなのだが、手に取るとサイズが大幅に大きいので戸惑う。しかし、当時のデジカメとしては標準的である。85万画素級撮像素子もほほえましい。その後、パワーショットAシリーズはズームレンズを搭載したパワーショットA5ズームや撮像素子を130万画素級に更新したパワーショットA50に続く。しかし、デジカメの主力はそれ以降、1999年からパワーショットSシリーズにシフトする。これもガリバーズIXYといっていいモデルだったが、コンシューマ用途のデジカメとしては速い時期に300万画素級撮像素子を搭載し、本格的な作画派に評価を受けた。そして2000年には待望のIXYデジタル(初代)が登場する。これは、フィルムのIXYに比べれば幾分大柄だが、当時としては画期的にコンパクトなデジカメであった。無論、大ヒットし、ニコンなどは苦しい戦闘を展開することになる。
 それで、Aシリーズは途絶えたと思われたが、2001年にはパワーショットA10A20が登場する。これは大型のグリップが特徴的で、電源は単三型電池4本を使用するオーソドックスなデザインでまとめてある。グリップのフィッティングはEOSを思わせ効果的である。また、当時はデジカメの電源が専用電池か単三型電池かで論争が広がっており、保守的な層ほど単三型電池を支持した。本カメラは、クールなIXYデジタルに対し、保守的なニーズに応えたものである。価格も安めに抑えていた。その後、Sシリーズはアッパーミドルを形成し、Aシリーズはベーシック層を対象とする。とはいえ、何しろキヤノンの作るカメラだから、廉価機とはいえ後裔のモデルでは両優先AEにMFモードを搭載し、A80などはバリアングル液晶ビュワーを搭載し、もはや廉価機のクラスを越えているな。
                  ☆            ☆
 本カメラは撮像素子は710万画素級、これにライカ判換算で35〜140mmF2.6〜5.5の光学4倍ズームレンズを組み合わせる。マクロモードでの最短撮影距離は広角側で5cm、望遠側で33cmである。常用的な使い方では不足はない。手振れ補正機構を搭載するのは次のモデルからである。充分な照度があれば申し分ない写りをするが、日陰の被写体は急にコントラストが落ちる。また、手ブレも発生するので撮影には注意が必要だろう。
 パワーショットA80ではマルチモードAEにバリアングル液晶ビュワーを搭載していたが、本カメラは基本的にはオートカメラであり、液晶ビュワーもリジットである。上位機種になるとバリアングル液晶ビュワーも搭載しているようだ。Aシリーズの中でもクラスを細分化している。
 好感が持てるのはオーソドックスなパッケージングである。光学ファインダーを搭載しているコンパクトデジカメは稀である。また、単三型電池を採用するモデルも珍しくなった。電池室を兼ねたグリップはフィット感も良く、Aシリーズのアイデンティティにもなっている。
         ☆            ☆
 廉価機としては良くできたパッケージングである。流石、キヤノンだけあって隙がない。レスポンスやAE/AFの正確さは申し分ないが、低照度では急にコントラストが低く、立体感の欠けた画像になってしまう。もっとも、日陰の被写体というのはそういうものなのだが、そこはあえてプルーフに寄ったキヤノンのポリシーなのかもしれないな。

   では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2012/7/12)

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