ペンタックス オプティオSについて


OptioS
デザインはシンプルだが個性的なモールドが主張する。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


OptioS OptioS
 ライカ判換算で35〜105mmF2.6〜4.8の光学ズームレンズを搭載する。
 嬉しいSMCペンタックスの銘記。

OptioS OptioS
 ボディ幅より長い伸長したレンズに注目。

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 ボタン類はかなり小さい。
 プッシュ式十字キーの操作性はやや犠牲になっている。

OptioS
 AF測距点は十字キーで選択できる。

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 常識的なインターフェイス。

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 液晶ビュワーは小型だが、これが原因で撮影できないことはないだろう。

OptioS OptioS
 バッテリーの交換はボールペンがいる。
 小型のバッテリーの持ちはそれなりである。

OptioS
 スピニング加工というレンズと同心円状のモールドが刻まれている。
 ボディ形状は扁平なので、この摩擦でグリップするのだ。


 新世紀になってもデジカメ戦線でペンタックスは苦戦していた。一部の上層部ではデジカメなど真面目に写真を撮るカメラではないという認識があったとも聞く。確かに、拙僧もAPSで懲りて新ジャンルには慎重だという公式アナウンスを聞いたことがある。しかし、デジカメで基軸となるモデルが無いことはペンタックスを追い詰めていた。そこで戦略モデルとして開発されたのが本カメラなのである。発表時にはペンタックスの役員からして、現在のペンタックスはデジカメ市場の競争の土俵にも立っていないと言わしめたのだから危機感の高さが伺える。
 そこで、本カメラである。コンセプトはズバリ「世界最少・最軽量」だ。これはスクリューマウント時代の一眼レフから継承されている伝統的なペンタックスのポリシーである。ペンタックスは過去に何度も悩むとこの解決策に行きついてきた。それ自身は悪いことでは全くない。本カメラの登場時に画期的とされたのは「スライディングレンズシステム」である。これは簡単に言うとズームレンズの中群を沈胴時にスライドしてボディ上部に格納するというものだ。これによりボディ幅よりも長い光学3倍ズームレンズの搭載が可能となった。本カメラはそもそも名刺サイズよりも小型なくらいで、幅も2cmくらいしかなったから不釣り合いなほど長く見えるレンズは戦場で使えそうな雰囲気をかもし出していた。まさに光子力ミサイルである。300万画素級は当時としても標準的なものだったが、圧倒的な小ささは十分魅力に映ったのである。まさに胸ポケットのサブアームである。それで拙僧も欲しいなあと思っていたのだが何せ6万円もするカメラである。実力は「SMCペンタックスレンズ」だから折り紙つきである。
 そのうち、1万円くらいの中古で並ぶこともあったが手が届く代物ではなかった。そうこうするうちに、ジャンク駕籠に後裔機の400万画素級モデルや、血統のつながる500万画素級のカシオのエクスリム EX−Z55が転がるようになるのだが、何故か300万画素級のオリジンモデルの本カメラが出てこない。随分売れたと思うのに。やっと手に入ったのは2010年になってからである。ジャンク半額セールで525円だった。早速、家に帰ってから電池を詰めてみる。専用電池はフジのファインピクスで広く使われているNP−40と互換のあるもので、手持ちで間に合った。ちゃんと動くので安心する。
 電源を入れて伸長するレンズを眺めると、確かにボディ幅より長くて気分が良いものである。しかし、よくよく考えてみるとフィルムコンパクトカメラではニコンライトタッチズーム140とかボディ幅よりはるかに長いズームレンズを格納するものは珍しくない。調べてみると、どうもデジカメ用レンズというのは多段ズームにするのが難しいようだ。つまりデジカメで必要とされるCCDまで真っ直ぐに光線が届く光学設計は、フィルムコンパクトカメラで広く使われている3〜4段階の伸長ズームレンズよりもシビアということらしい。実際、本カメラが登場するまでコンパクトデジカメの搭載するレンズは2段ズームまでが限界だったようである。本カメラでは、まず3段ズームが先に設計され、格納方法が検討されたようである。
 そこで「スライディングレンズシステム」である。これはレンズの中郡が折り畳みルーペのように一軸でレンズ沈胴時に退避するものだ。これを見ていてよく似ている機構を思い出した。かつてのフィルムコンパクトカメラのニ焦点レンズである。ベースとなる広角レンズに内蔵のテレコンを咬ませて望遠(標準)レンズとして使うことができ、2つの焦点距離の実現を可能としたカメラである。ズームレンズより簡単な機構で実現できるため、コンパクトカメラに本格的にズームレンズを搭載する前にかなり流行った。中にはリコーR1のように広角がベースで更に広角に切り替えるカメラも存在する。このテレコンの動きに「スライディングレンズシステム」は似ているのだ。当時画期的だとされたギミックは実は完熟した技術だったのである。もちろん、完熟した技術を再度評価し、新しい商品としてパッケージングするのは立派なアイデアであり、本カメラの名声を損なう理由にはならないだろう。
                ☆           ☆
 手に取ってみるとその小ささは心地よい。これで1000万画素級の受光素子を搭載していたら現在のカメラとして通用するかもしれない。外装は金属(アルミニウム合金)で高級感がある。添付画像では分かりずらいのだが表面にレンズ同心のサークル状のスピニング加工がなされている。背面は同様に十字キーを同心とした加工がなされている。これを好むか好まざるかは人によって様々なようだ。本カメラはグリップを持たないシンプル構成なので、事実上指の引っ掛かりはスピニング加工の摩擦に期待することになる。背面には親指がかかる凹みがあるが、ホールディングが良好なカメラではないので、指につい力がかかってしまうのだろう。拙僧の個体は右指のかかるボディ全面右側が微妙に凹んでいる。これはプラスチックならてかてかになっても変形はしないだろうな。
 操作系はとにかくコンパクトにまとめられたものなのでボタン類は小さい。しかし、配置もよく考えられており、出っ張りが大きいので特に操作に不安はない。ただ、本当に限られたスペースで辛うじて自立している十字キーは流石に使うのには慎重になる。この十字キーは選択がプッシュなのだが、この大きさならこれ以上の節度を求めるのは酷であろう。すぐ下にはスピーカーが位置するし、よく十字―キーを搭載できたものと感心する。
   起動は素早く、フォーカシングのレスポンスもよい。ボタン類の操作系を重視したのと、おそらく消費電力の節約のために液晶ビュワーは小型である。この小さな液晶ビュワーにフラッシュモードやらAF測距点やらフォーカスインディケーターやらの撮影諸情報を表示すると、ごちゃごちゃするというよりいじらしくなる。この小さなボディに機能は満載である。その機能は使いもしない98種類のシーンモードとかではなく、撮影にとって重要なプロパティが設定できるのだ。これは実際に撮影に使う方が設計したものである。フラッシュモードは記憶し、不要にスナップで光るようなことはない。なかなか冴えているのはズーム域まで記憶しているのだ。これを煩わしいと思う方もいらっしゃるだろうが、スナップ撮影である程度望遠側に固定したい場合は意外に多いので便利である。フォーカスモードは7点AFの他、スポットAFやMFモードの選択可能である。スポットモードは優れており、7x7の49点からAF測距点を選択できる。これを十字キーで選択するのは感動的だ。MFモードは液晶ビュワーで中央部が拡大されフォーカシングを行うのだが、正直液晶ビュワーがフォーカシングを確認できる精度には至っていない。MFモード有効なのは3mあたりにフォーカスを固定することによって、フォーカシング時間を短縮し、素早くスナップ撮影できることにあるだろう。
 レンズはライカ判換算で35〜105mmF2.6〜4.8と明るさも頑張っている。最短撮影距離はマクロモードで18cm。これはズーム全域なので有効だが、更にスーパーマクロモードを搭載して6cmまで寄れる。この時、ズームはライカ判換算で80mm前後に固定されるのだが、この状態で約4cmx3cmの被写体を画面一杯に写すことができるそうだ。素晴らしく優秀なマクロ機能である。
                ☆           ☆
 本カメラはカシオとのコラボレーションで実現した。同時期にカシオからは同じベースを持ったエクスリムEX−Z3 が登場している。ペンタックスとカシオの関係はQV−10まで遡るというのだから歴史は深い。大まかにはレンズユニットをペンタックスが供給して電子ユニットをカシオが担当しているようだ。ユーザーからすると、両者の大きな違いはバッテリーと液晶ビュワーである。EX−3が搭載するバッテリーは本カメラのものよりも大型でタフである。実際、本カメラのアキレス健はバッテリーで、撮影可能枚数が少ないのはともかく経年劣化に弱い。現在、ジャンク駕籠に転がっているNP−40は大抵の場合使用不可能ではないが膨らんでいて出し入れにプライヤーが必要なほどである。エクスリムのバッテリーはそんなことはないから、そもそもの設計思想がそのくらいなのだろう。もう一つの違いは液晶ビュワーの大きさでEX−Z3の方が1回り大きい。しかし、本カメラの液晶ビュワーが見えづらいということはないから別に欠点にはならないだろう。これらは小型軽量を最優先した本カメラと日常的な使い勝手を重視したEX−3のコンセプトの違いである。
 本カメラの欠点はバッテリー蓋を外すために、ボールペンの先で強くキーを押さないといけないことである。これは外出先のバッテリー交換には煩わしく感じるだろう。
 小さな十字キーをちまちま操作するのはせせこましいが、ミニチュアを扱っている楽しみもある。コンテンツ掲載用のスナップ画像なら期待に応えるカメラなのでなかなか気に入っている。なんていったってSMCペンタックスレンズである。

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2010/10/31)

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