ペンタックス オプティオ230について


Optio230
一見オーソドックスに見えて一芸を持ったカメラ
その一芸でレッドオーシャンのデジカメ市場を生き抜くことは難しかった

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


Optio230 Optio230
 オーソドックスな光学3倍ズームレンズ搭載。

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 レンズは無銘。

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 シーンモードをナイトモードに限定したのは実用的。

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 適度なボディサイズ。光学ビュワー付き。

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 180度水平に回転する液晶ビュワー。

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 普及価格ながらMFモードを搭載。

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 MFモードではフォーカスインディケータを表示する。
 スケール(距離指標)が無いので実用性は今一歩。

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 記録媒体はコンパクトフラッシュ。電源は単三電池2本を使用。
 電気消耗に弱いのでCR−3Vの使用が現実的。

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 標準で3Dビュワーが付属する。


 本カメラの登場は2002年4月である。200万画素級というのは同期のIXYデジタルやパナのルミックスDMC−L20と同等だとしても、見てくれはどうということのないオーソドックスで、フィルムコンパクトカメラのエスピオと比べても半歩も前進していない。ちょっと、21世紀のデザインとは思えないな。新世紀初頭はデジカメ共和国軍の勝利が決定的となり、それまでそれなりにデジカメを作っていたカメラメーカーでさえも、開発力や生産力を転換する必要に迫られた。飛行機が複葉機から単葉機に切り替わった時も技術的なハードルは高く、いくつものメーカーが脱落したというから同様であろう。感のいいメーカーは新時代に相応したパッケージデザインを構築できたが、伝統的なメーカーほどフィルム時代の資産も足かせになって持続力の有る勝てる戦略を描くことが難しくなった。ディマージュF300のようなスマートなデジカメを輩出したミノルタでさえ、翌年にはコニカと合併して数年後にはコンシューマ市場から撤退してしまう。オリンパスだってC−700UZシリーズμデジタルといった業物がヒットしていたから時間が稼げたものの、レンズ一体型のE−10/20の優位性をオリンパスが公言するほど、オリンパスファンはオリンパスには21世紀型のビジネスモデルが無いのではと不安に思ったものだ。もっとも、当時を振り返るとミノルタよりペンタックスの方がよっぽど不安であった。
 ペンタックスのデジカメ参入は意外と古い。1997年にはEI−C90というリコーのDC−2Lに似たカメラを出している。しかし、後が続かず次にペンタックスがデジカメを出したのは世紀末の2000年である。オーソドックスなコンパクトカメラのEI−200と一眼レフのEI−2000である。目ざといカメラ民族の方ならEI−2000は記憶にあるかもしれない。110判から67判まで、我が国の一眼レフカメラのパイオニアがペンタックスであるから、レンズ固定とはいえ一眼レフを選択したペンタックスにメディアもフォロワーも沸いたようだ。写真で見る限り、大胆な曲線で構成されたボディもグラマラスで魅力的である。しかし、実の所、拙僧は実物を見たことが無い。別に拙僧が新品のデジカメに強い興味を持っていなかったからだけではなく、実際に手に取ったことのある方が稀であろう。どうも、カメラとしての出来がどうこうではなく、EIシリーズ時代のペンタックスはデジカメの量産に積極的でなかったようだ。優良な販売チャンネルにも消極的な売込みがなされたようである。比較的、流通を意識したのはオーソドックスなEI−200だったようだが、可もなく不可もなくでは血で血を洗うデジカメ戦線で存在感を誇示するのは難しかった。拙僧は秋葉原のジャンク屋で一度だけEI−200が転がっているのを見たが、今更、200万画素級デジカメに1000円も払うつもりにはなれずスルーした。
 ペンタックスがデジカメ市場に消極的だった理由は諸説ある。APSで遅まきに参入して大失敗した経験もマイナスに響いただろう。拙僧の記憶が確かならデジカメが優勢となった旧世紀末になってもデジカメ戦線の不参加をトップが公言していた気がする。時期を正確に特定できないのだが、「使い捨てデジカメ」というジャンルを開拓しようとし、やはり失敗した事もある。HOYAとの合併の際も取締役員の反対抗争があったと聞くし、どうもデジカメ参入の遅れに伝統的光学メーカーならではのお家騒動があったのではと勘ぐってしてしまうなあ。
 ペンタックスのデジカメが商業的に評価されるようになったのは新世紀になった2001年7月に登場したオプティオ330からである。これは1.8型とコンパクトカメラにしては大型の300万画素級撮像素子を搭載し、当時のライバルに比べて小型軽量を謳ったカメラである。小型軽量はペンタックスの伝統的なポリシーだからブランドも引き立ったであろう。安心して買えるデジカメが登場してペンタックスファンは安心したのではないか。以降、オプティオはシリーズ化し現在に至る。同年11月には400万画素級撮像素子に換装したオプティオ430が登場し、年を跨いで200万画素級の本カメラが登場する。
                ☆           ☆
 本カメラに託されたのはエントリーユーザーの確保だろう。先のオプティオ330/430のように大型撮像素子と小型軽量は踏襲していない。2.7型の200万画素級撮像素子は普及クラスのデジカメが幅広く採用していたものだし、ボディマスもクラス相応である。但し、本カメラは単純に低価格で勝負したカメラではない。定価ベースで65000円はライカレンズを搭載したルミックスDMC−L20と比べて25000円も高い。ペンタックスなりにデジカメらしい付加価値を付けて価格帯を維持しようとした形跡が見受けられるのだ。
 電源はそれまでのオプティオ330/430がフジフィルムのNP−40互換の専用充電池を採用したのに対し、単三型電池2本を使用した。当時はデジカメの電源は専用充電池と単三型電池が拮抗しており、普及価格帯の物ほど単三電池を採用していた。これはエントリーユーザーの確保には好都合だと言える。ルックスが地味なので気づきずらいが、液晶ビュワーは水平方向に180度回転し、正面に向けることができる。恐らく自分撮りのニーズを狙ったのであろう。フィルムカメラでは不可能な工夫だ。そしてペンタックスが最もアピールしたかったのは「3D撮影モード」の搭載であろう。これは1枚目の画像を汎用名で表示し、それをガイドにして2枚目の画像を撮影するキヤノンの「パノラマ撮影モード」に似たプリミティブな方法で実現しているが、パケージに標準で立体使用の「3Dイメージビュワー」を同封しているからペンタックの本気度が感じられる。
 レンズはライカ判換算で38〜114mmF2.6〜5の光学3倍ズームレンズである。若干明るいがオーソドックスな焦点距離であろう。通常モードで最短撮影距離が40cm。マクロモードなら10cmまで寄れる。コマンドダイヤルにて「動画撮影モード」「夜景撮影モード」「フル撮影モード」「オート撮影モード」「再生モード」を切り替える。いわゆるシーンモードが「夜景撮影モード」しかないのは分かっているなあと感心する。実際、必要なのは「勝手にフラッシュを発光しないモード」なのだ。「オート撮影モード」は基本的にカメラ任せで撮影を行う物で、設定できるのはマクロモード・遠景モードにフラッシュモード、画質モードくらいである。「フル撮影モード」ではMFモードの他、ホワイトバランスの選択も可能である。このクラスにMFモードがあるのはペンタックスらしい配慮だが、中央部を拡大しフォーカスインディケーターを表示するものの、液晶ビュワーの精度はきめ細かなフォーカシングに耐えるのもではなく、フォーカスインディケーターもスケール(撮影距離)を表示しないので実用的でない。せめて3mか5mに表示があればスナップモードとして活用できるのだが。
 起動は電源ONから撮影可能状態になるまで7秒程時間が掛かる。これはクラス標準的なものだが、フラッシュチャージにはかなり時間が掛かるので注意が必要である。本カメラは電源OFF時にもフラッシュモードを記憶しているので、発光禁止にしていれば不便はない。AFやレリーズ後のレスポンスも緩慢だが、当時の標準的なレベルである。困ったのは電源で、単三型電池を採用しているのだが電池消耗に極めてナーバスである。ちょっと疲れたエネループではほぼ実用にならない。手持ちの電池で本カメラを稼働するためにはCR−V3を使用しなければならない。CR−V3は高価だし、どこにでも売ってるものではないので本カメラを稼働するには足かせになるだろう。
                ☆           ☆
 本カメラはペンタックスなりに遊びの要素を取り入れ、コンシューマ層に価格だけではない価値を提供しようと努力がみられる。しかし、オプティオシリーズがデジカメブランドとして固定化するには飛躍的なクラス最小最軽量のオプティオSの登場を待たねばならない。
 HOYAとの合併にもごたごたしたが、現在ではユニーク路線でペンタックスのブランドは健在である。本コンテンツ執筆時にペンタックスが手のひらに乗る小型のレンズ交換式デジ一眼(レフではない)を発売するニュースが飛び込んできた。カメラ女子好みのワタシ色のキュートなカメラとしてだけではなく、かつての110判一眼レフカメラのオート110の記憶も新しい老ペンタックス者にも明るいニュースではないだろうか。
 一時は消滅も危惧されたペンタックスのブランドが活性であるのは喜ばしい。

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2011/6/23)

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