フジフィルム ファインピクスM603について


FinepixM603
縦型が伝統のファインピクスだが、本カメラは異端児である。

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能


FinepixM603 FinepixM603
 スーパーEBCフジノンを冠した光学2倍ズームレンズを搭載。
 液晶ビュワーは、当時としてはかなり大型。


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 このボディ側面に位置したレリーズボタンがスチル撮影の足を引っ張る。


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 撮像素子は300万画素級だが、フジフィルム肝いりのハニカムCCDを搭載しており、600万画素級モードが存在する。
 バッテリーは複数のメーカーのコンパクトデジカメで幅広く採用したNP−60。
 そこそこの耐久性を持ち、使い物になる個体は多い。

 本カメラを初めて知ったのは何かしらのコンテンツだったと思うのだが、何だか場当たり的に二階建てを増築したような違和感を持ったものだ。フロントパネルを分割するブルーのラインが目立つので、これはミノルタディマージュVのようにレンズ部が分割出来たりするのかとも思ったが、勿論、そんな妙なギミックではなく、単純にバッテリーの蓋がパカッと開くのだ。そういえば、フロントパネルからバッテリーを挿入するカメラは他に思い浮かばない。多分、エンジンとトランスミッションをフロントに持って行って、被弾時に乗員の生存性を高めるメルカバのような設計思想なのだろう。縦型のスタイリングはフジフィルムにとってはファインピクス700から連なる伝統的な物だが、本カメラのポリシーは少し違うところを目指しているようだ。本カメラは「動画に強いデジカメ」として登場した。動画デジカメというと、古くから三洋が力を入れていた。本カメラの登場した2002年末には、その三洋からもDSC−MZ3が登場している。三洋が複数の光学機器メーカーにデジカメモジュールを供給していたのも今は昔で、現在では三洋電機というブランドはパナソニックの参加になってしまった。しかし、声を大きくして言いたいのだが、パナソニックのEVOLTAなんて使い物にならない。信頼できるのはエネループである。
 動画デジカメとして見ると、本カメラも説得力のあるものらしい。拙僧は良くわからないのだが、複数のコンテンツで「ムービーカメラのようだ」と本カメラを称している。確かに、本カメラのスタイリングとデザインは幾つか特徴的である。液晶ビュワーは当時としては大型で、軽く傾斜して視認性を高めている。なんでも純正ではホースマンプレスやハンドカメラのようなフードが付属していたらしい。見るだけでも効果がありそうだ。概ね、本カメラのインターフェイスは高く評価されていない。電源等の操作系は背面の真ん中あたりに位置し、確かにボタンは小さいし、円形の十字キーの節度もそれなりだが、拙僧個人は悪くは無いと思う。レイアウトで特徴的なのはカメラを構えて右サイドに追いやったレリーズボタンとズーミングレバー、フラッシュモードやマクロモード切替ボタンだろうか。こういう、変則的なレリーズボタンのレイアウトは、大抵の場合はロクな結果にならないのだが、本カメラは問題ないように思う。但し、本カメラは両手で構えるのを前提としている。ボディを構えて背面の左下に指あてがあるのだが、これは完全に左手の親指だろう。右手だけでホールディングするとなると、右手親指が液晶ビュワーに当たるか、不自然に曲げる必要がある。カメラを水平に構えるのも少々事だ。両手でホールディングすると、人差し指が自然にレリーズボタンやズーミングレバーに触れるので、見た目に比べて遥かに操作性は良い。
 撮像素子はフジフィルムの言うところの「スーパーCCDハニカムIII」である。ハニカムCCDとしては第三世代に相当し、動画機能を重視したデザインになっているそうだ。拙僧も本稿を執筆する際に、複数の本カメラを扱ったコンテンツを読んだが、動画は兎も角、スチル画像のクオリティの評価は低めだ。確かに、拙僧が撮影した限りでも色ノリがイマイチだなと思われるカットもあったが、かなり日が落ちてもほど良く粘る。それに、限定的とはいえISO1600まで用意するので、かなり暗い地下道でもひとまず写すことが出来る。無論、画素数は100万画素級に制限し、画質もそれなりだが写るのと写らないのでは大違いである。それに、あっしはこういう無理目に増感した画像が満更嫌いでもないな。動画の方は使わないので言及は避ける。ただ、現在の視点ではMPEGではなく、MotionJPEGなのは使い勝手が限定的になるだろうな。
 使い勝手で問題があるとすれば、起動時にデフォルトで100万画素級モードになることだろうか。基本的には電源オフ時の情報を覚えているのだが、バッテリーを交換した際には忘れてしまうので気を付けた方が良いだろう。純正のNP−60は複数のメーカーで幅広く採用したもので、入手は容易である。なんでも、スチル画像で130枚撮影できるそうだ。これは現在では少ないという見方もあるだろうが、通常の撮影スタイルでは問題にならないだろう。とてもありがたいのは記録媒体がxDピクチャーカードとコンパクトフラッシュの併用なのだ。xDピクチャーカードなど、今更手に入れようとしたらアホみたいな出費が必要だから、半端なサイズのコンパクトフラッシュが使えるのはありがたい。フジフィルムのデジカメは結構コンパクトフラッシュを併用できるモデルが多く、これは暗に大容量の画像や動画を撮影するにはxDピクチャーカードは不経済だと、フジフィルムも認めているのだろうな。
 300万画素級撮像素子ながら、例のハニカム構造の理屈で出力画素は600万画素級を実現するのだが、信じれば吉である。なにも、相手は自己啓発系マルチ商法ではないのだから、真に受けるのも一興だ。今では64〜128MBの半端サイズのコンパクトフラッシュを皆さんお持ちだろうだから、目くじらを立てなくても良いのではないだろうか。パワー不足なのはレンズがライカ判換算で38〜76mmの光学2倍ズームレンズであろうか。ボディマスが結構大きいので、意外とズームの範囲が狭いのに驚く。しかし、大抵のコンパクトデジカメがNDフィルターを噛ませた2段の絞りなのに対し、多段式の絞りを採用しているのは立派だ。
              ☆              ☆
 拙僧は本カメラで動画を撮影したいと思わないので評価はできないのだが、動画再生時にズームアップが出来るなど、割と手厚い機能を搭載しているらしい。何れにしろ、2002年時にはコンパクトデジカメにも色々と可能性を模索していたのだろうな。
 本カメラには、そういう中途半端な模索の経緯が見え隠れしてキュートではある。

   では、撮影結果(名古屋散歩編)を見て下さい。

(了:2013/4/4)

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