フジフィルム ファインピクスF420について


FinepixF420

310万画素級とはいえ素晴らしい画像を写しだす
壊れていなければ

☆ジャンク度☆
電池消耗に異様に弱し
撮影可能


FinepixF420 FinepixF420
 ファインピクスF410を踏襲したスクエアボディ。
 信頼性に問題の有ったスライド式レンズカバーは2分割に変更している。


FinepixF420 FinepixF420
 光学3倍ズームのフジノンに310万画素級のハニカムCCDを組み合わせる。
 絵作りは素晴らしいですよ。ちゃんとカメラとして動作すれば。


FinepixF420 FinepixF420
 ファインピクスF410より薄くなったのに、液晶ビュワーは大きくなった。


FinepixF420 FinepixF420
 ボディ上面はレリーズボタンのみを配置し、スッキリとしている。


FinepixF420 FinepixF420
 ボタン類は小さいが、モールドを工夫して誤動作を押さえている。
 ただ、どうもこの爪型のズーミングレバーの節度の悪さが気になる。


FinepixF420 FinepixF420
 液晶は当時としては標準的な見え具合。
 光学ファインダーはあまりあてにならないが、ないよりましか。


FinepixF420
 電源は単四型電池の他、乾電池を2本束ねたような専用電池を使用した。

 拙僧が傾倒していたソビエト連邦が崩壊したのがハイティーンの頃である。左利きの社会科教師と「東シベリアの部分的な独立の可能性」などを討論していた拙僧は少なからず動揺した。とはいえ、中間期末テストで漢字で名前を書ければ5点くれた高校で、 モスクワ放送を聞いていたのは拙僧くらいだったから、影響は実に個人的だった。人並みに同級生女子の髪型の変化に関心を持っていれば、もっと潤いのある青春時代を過ごせたはずなのに、例の8月のクーデターで写しだされた戦車が、やれモスクワ軍管区のタマンスキー親衛戦車師団所属だとか、そいう方面が関心の主だったのが惜しい。他には麻雀くらいしか記憶にない。あえて弁護すれば、ソビエト連邦と構成するソビエト赤軍は当時ミステリアスな存在で魅力が有ったのだ。その霧のベールに包まれた謎への関心の大きさは、某キャンドルアーティストの生計などとは比較にならない。戦車マガジンでちらりと写る東ドイツで列車移動するT−64の識別番号がマスクされていたのも、別にチラリズムの淫靡さを強調するのではなく、撮影者が特定できると「まじでヤバい」ことになったのだ。そういう意味では北挑戦の未修正動画が流出するくらいだから、かの国も先が見えるなあ。
 そのソビエト赤軍のミステリアスの一つに複雑に階層化した防空システムがあった。端から説明すると膨大になるので、前線に密着した地対空ミサイル網だけ紹介すると、長射程高空自走ミサイルはSA−4ガネフ(当時はアメリカ・NATOの識別コードしか知られていなかった)。その手前はSA−6ゲインフル。その手前はSA−8ゲッコーと、徐々に短射程低空にシフトしていき、もっとも身近な肩撃ち式携帯ミサイルのSA−7グレイル、或いは23mm対空砲が底辺を担っていた。SA−7は60年代のプリミティブな赤外線ホーミングミサイルで、中東戦争などでは評価が低いが近年でもSA−7、或いはその派生型をテロリストが発射し、旅客機(貨物機かも)に命中させる映像が残っている。また、北挑戦のパレードにも、走行車両に不器用に取り付けているのも確認できて楽しい。ソビエト赤軍の防空システムは航空機だけを取り上げても興味深いので、興味のある方は調べてほしい。もっとも、その効果や有効性は別の話だ。
 なんで今は亡きソビエト連邦の話を持ち出したかというと、2005年頃までのフジフィルムのファインピクスのラインナップも、見事な程、階層化して鉄壁の守りだったのだ。例えば新世紀になった2001年から本カメラの登場した2003年まで32機種を送り出している。種類の数ならソニーやキヤノンの方が多いが、よく見るとマイナーチェンジが多かったりして、フジフィルムの底辺の簡易(トイ)デジカメから頂点の一眼レフデジカメまでの幅広いニーズへの対応は特異であった。所得層に合わせた幅広いライナップの点では、ソニーも固定焦点(パンフォーカス)で単三型電池の廉価機を出しているが、当時ヒットしたサイバーショットPシリーズと同線上のポリシーでデザインし、それらしい外観のサイバーショットP20をまとめている。キヤノンは廉価だって固定焦点のカメラなんか 出しませんよ。最下層のカメラだって、単焦点ながらAFユニットを搭載したパワーショットA200/A100である。その点、各ニーズに対するフジフィルムの設計は柔軟で貪欲、かつユニークである。そして共通するのが価格の割に綺麗に写ることだ。もっとも、勇み足で200万画素級のファインピクス4700Zを補完出力で400万画素級カメラとして発売し、価格は200万画素級の物よりかなり高かくて総スカンを喰らったこともあった。一方では固定焦点の単三型電池2本使用のファインピクスA201ファインピクスA101や、完全にトイカメラとして一線を越えたてしまったiX−130も、クラスに応じて綺麗に写るのもフジフィルムの実力であろう。
              ☆              ☆
 本カメラはファインピクスF410のマイナーチェンジとしているコンテンツもあるようだ。確かに、スクエアを基調としてボディや操作系は踏襲している。しかし、ボディはかなり薄くなり、液晶ビュワーは大型化し、電源も単四型電池2本と兼用できる専用電池に変更になったから、変化はマイナーチェンジに留まらない。
 フジフィルムの公式アナウンスによれば、ファインピクスF410に比べて、「本体容積で約2割、本体質量で約1割もの大幅ダウンサイジング・軽量化を実現」したそうだ。確かに手に取った感じでもスリム化は顕著に感じる。真四角に近いスクエアボディはエキゾチックには遠いが、安定的な印象でこれはこれで好ましい。フジフィルムが高らかに掲げているのが「素材感の異なる2つのデザイン「W(ダブル)フェイス」なのだが、これはフロントパネルに「メタリックシルバー」と「ホワイトシルバー」の2種類を用意しただけの話だ。東芝のSORAやペンタックスのようなフロントカバーが交換式でカスタムできるというものではない。大したことではないが、「メタリックシルバー」の品の無い感じは、ちょっと魅かれる。
 レンズはライカ判換算で35〜108mmF2.8〜4.8と、ファインピクスF410に比べると少し広角側にふってある。この点からしても、ただのマイナーチェンジとは言い難い。撮像素子は1/2.7型310万画素級のハニカムCCDで、これは同じもののようだ。基本的にはオートカメラで「オート撮影モード」「マニアル撮影モード」を搭載するものの、「マニアル撮影モード」でも露出補正とホワイトバランスの操作が行える程度である。但し、重要なのは「マニアル撮影モード」なら、フラッシュモードを覚えるのだ。街中スナップで勝手にフラッシュが光ることほど、みっともないことは無いから肝心である。任意で選択できるわけではないが、絞りは10種類のポジションを自動選択する。この種のコンパクトカメラだと絞りは2〜3段と簡素な機種も多いのに本カメラは豊富で、もしかしたら虹彩絞りを採用している可能性もある。
 フロントパネルの一部がスライドして電源ボタンを形成している。メタリックボールが3つ縦に並んでいるので引っ掛かりになる。電源ボタンをスライドすると、レンズが伸長して4秒ほどで撮影可能状態なる。但し、これはフラッシュモードを「発光禁止」にした場合で、シャッターチャージに時間が掛かるので「オート撮影モード」だと倍ほどの時間が必要だ。起動するとフロントパネルの「FinePix」のロゴが青白く光るのがチャームポイントである。
 操作系は背面に集中する。液晶ビュワーの上にある「DISP」「BACK」「MENU/OK」のコマンドボタンと、左右ボタンと爪型のシーソー式上下キーを組み合わせた十字キーによって、主な操作を行う。ボタン類がかなり小さいのだが、モールドを工夫して誤動作を抑えている。気になるのが爪型のシーソー式十字キーの節度であり、ズーミングレバーとしても操作するのだが、微妙な入力は難しい。撮影時に頻繁に設定するマクロモード、フラッシュモードは左右キーに割り当て、画像サイズやISO感度は白抜きの青色ボタンのフォトモードボタンにて専用のメニューを立ち上げる。フジフィルムらしく、カラーモードとして「モノクロ」「クローム」「ノーマル」を用意する。「クローム」はポジフィルムで撮影したようなビビットなカラーリングになるようだ。この(変形)十字―とフォトモードボタンの組み合わせによる操作系は、この時期のファインピクスのポリシーとなっている。シンプルな操作系で迷うことは少ないだろう。
 ファインピクスのハニカムCCDは、その名の通り蜂の巣状に並んだ撮像素子が特徴で、同クラス撮像素子より効率の良い撮像を誇っていた。本来は310万画素級なのだが出力画素数は600万画素級というのがフジフィルムのアピールポイントなのだが、拙僧はそもそも300万画素級の画像で十分だと思っているので600万画素モードは使わない。第一、xDピクチャーカードは高いので1GB以上の物は2つしか持っていないのだ。フジフィルムも、このクラスのコンパクトデジカメに高画素数は不効率と思っているらしく、電池を入れ替えるとデフォルトの記録画素数は100万画素級なのだ。逆にちょっと不親切である。豊かなISO感度もハニカムCCDの特徴で、本カメラはISO160〜800までを用意する。ISO800では撮影画素数は100万画素級に抑えられるし、それなりにノイズは乗るが使いようだろう。
 ファインピクスシリーズも熟成期に達しており、使い勝手は良い。但し、満足に起動していればの話だ。ファインピクスF410と大きく異なるのが電源である。ファインピクスF410はNP−60を使用していた。これは先代のファインピクスF401も採用した物である。コンパクトデジカメにはちょっと大きめだが、持続性も耐久性もそこそこあって、ファインピクスシリーズが数多く採用しているほか、カシオのQV−R4/R3や初期のペンタックスオプティオ、パナソニックや東芝のデジカメまで、幅広いメーカーのデジカメが採用している。大変実績のあるバッテリーなのだが、本カメラでは単四型電池2本になってしまった。実際には単四型電池を2本束ねた、専用電池NP−20が存在するのだが、拙僧の知る限り本カメラでしか採用は無く、現在入手は困難である。ロワあたりのサードパーティで取り扱いがあるが、本カメラの市場価値からして入手は割に合わないだろう。ACケーブルも細軸の3Vで、これも方々のキタムラやリサイクルショップのジャンクコーナーを探したが、未確認である。
 それで単四型電池で満足に稼働すれば文句は無いのだが、酷く消耗に弱いせいか、エネループでもアルカリ電池でも運用に堪えない。再生モードだと起動するのだが、撮影モードにするとレンズが伸長したきりで電源が切れてしまう。壊れているのかと思ったのだが、100円ショップの単四型充電池を詰めた時だけ、満足な撮影ができた。100円ショップも侮りがたしである。
              ☆              ☆
 別のメタリックシルバーの個体も持っているのだが、これは100円ショップの単四型充電池を詰めても撮影は出来ない。オーナーの方々のコンテンツを読むと、本カメラの信頼性の低さが嘆かれており、電池消耗に弱いだけでなく、本当に壊れているのかもしれない。たまたま、本コンテンツで使用した個体が稼働できなくもないコンディションだったのだろうか。
 本カメラも他のファインピクスシリーズのように美しい画像を撮影できる。やや、誇張気味の発色・絵作りが気にならなくもないが、デジカメらしくていいだろう。問題は信頼性である。とにかく、200〜600万画素級のファインピクスの故障率は高い。CCDの不具合のように公式でクレーム対応したものもあるが、レンズカバーとかAFユニットのエラーとか、不具合が多いのだ。巷のジャンク駕籠の物は大抵の場合、本当にジャンクである。
 冒頭のソビエト赤軍の防空システムも本来の性能を発揮していたとは考えにくい。そうでなくても、ベレンコの亡命や西ドイツ青年の赤の広場への強行着陸など、ボロが出ている。それでも、スホーイのセールスが好調なところを見ると、ソビエト崩壊も一昔になって、西側に匹敵する信頼性を確保しているのだろうか。ファイインピクスもEXRの世代になると、信頼性は向上する。

     では、撮影結果(梅祭り編)を見て下さい。

(了:2012/3/5)

クラデジカメ系列メニューへ戻る
「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system