☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能
フジノンが嬉しい光学3倍ズームレンズ。
シンプルなボディ上面。
電源ONはボディ上面のスライドスイッチにて行う。
小型のグリップ。
ファインピクスA310ではここがスライドして電源ONする。
シーンモードもなく、シンプルな背面。
個人的にはこの指ではじくズームレバーが手に合わない。
上が本カメラ、下が後裔機のファインピクスA310である。
外観は似ている。
シーンモードがないのが本カメラ。
必要十分であるし、セルフタイマーが独立しているのはシーンモードより実用的。
「ファインピックスフォトモード」の有無が大きな違いである。
本カメラは2002年9月に登場した300万画素級デジカメである。単三型電池2本を使用する廉価モデルだが、当時に300万画素級というのは中々魅力であったに違いない。同時に登場したのが固定焦点(パンフォーカス)で200万画素級のファインピクスA202なのだから、そういう需要はまだまだあったわけだ。後裔機種として半年後にはファインピクスA310が登場する。凄まじい開発スパンだが、この当時はそういう時代だったのである。本カメラとファインピクスA310はコンセプトは同じでルックスもパッと見は殆ど変わらない。実際、拙僧は本カメラを拾い上げて自宅で弄り回すまでファインピクスA310を拾ったつもりでいた。しかし、本カメラとファインピクスA310はマイナーチェンジには留まらない大きな違いがある。
最大の違いが心臓部ともいえる受光素子(CCD)だ。ファインピクスA310がフジの肝いりのハニカムCCDを搭載するのに対し、本カメラは常識的な従来型CCDである。当時、既に1/1.7型の300万画素級ハニカムCCDは存在したが、より小型の1/2.7型は存在しなかった。1/2.7型の200万画素級ハニカムCCDは存在してファインピクスF401に搭載している。半年を待たない2003年3月にはファインピクスF401を踏襲し、1/2.7型の300万画素級ハニカムCCDを搭載したファインピクスF410が登場する。ファインピクスA310の登場はその翌月である。興味深いのは、当時のフジの機種名は画素数+ボディ形状を表していたのだが、この頃からそのこだわりが薄れたようだ。その命名規則というのは、300万画素級の本カメラならA303、同系ボディに200万画素級受光素子を搭載したならファインピクスA203になる。130万画素級で固定焦点の廉価ボディならファインピクスA101といった具合である。ならば200万画素級のファインピクスF401は命名規則に合わないことになるが、当時のフジはハニカムCCDの出力画素数は通常の倍であるとし、200万画素級でも400万画素級であると公称していた。それで値段が200万画素級並みで画像が美しければ文句は少なかったと思うのだが、初期のハニカムCCD機であるファインピクス4700Zは当時の300万画素級の普及クラスより高かったので顰蹙を買うことになった。当初は公然と400万画素級を謳い「4.3M」のプレートを掲げていたが、ユーザーを含めた様々な方面から批判があり外すことになる。これはフジにとっても不幸なことであったが、実際に定価に近い価格で買ったかたもいらっしゃるから、そういう方にとっては正に悪夢だったろう。しかし、ハニカムCCDは価格さえ妥当なら美しい画像を写すことができた。それにファインピクスF401に搭載された第3世代を言われる以降は高感度に強くなって汎用性が増している。もっとも、ファインピクスF401で可能だったISO1600モードは300万画素級のファインピクスF410やファインピクスA310では省略されていて上限はISO800までである。高画素数化にあたってノイズ除去処理が叶わなかったのだろう。ファインピクスF401のISO1600モードにしろファインピクスF410やファインピクスA310のISO800モードにしろ、画素数が100万画素級に制限されてノイズも多かった。この辺の技術的な限界と解決に対する意欲が後のフジの高感度デジカメの技術の基盤になっていると思われる。
他には電源ONがボディ上部のスライドスイッチがボディ前面のグリップ部のスライドに変更になったり。ファインピクスA310ではシーンモードが搭載されたりしているが、基本的な構造は殆ど変わらない。
☆ ☆
ボディは片手にすっぽりと入る。単三電池使用のカメラだと思うと小型だろう。電源をONするとレンズカバーが退避し、光学3倍ズームレンズがミューンと伸長する。いきなりスローモーな立ち上がりでびっくりするが、これはフラッシュのチャージに時間がかかっている為である。フラッシュを発行禁止にすれば気になるほどではない。注意しなければならないのは初期設定ではピクセル(画質)モードが100万画素級である事だ。何故かこの頃のフジのデジカメはそうなっている。余程100万画素級の画像に自信があるのだろうが、当時の大容量メディアが高額だった事で気を使っているのかもしれない。実際にはせっかくお金を余計に払って300万画素級を手に入れた方が、ちまちま100万画素級で撮影すると思えないのだが。幸いなことにフラッシュモードにしろピクセルモードにしろ、一度設定をすれば電池を抜くまで電源をOFFしても覚えているのでイライラさせられることはない。こんなことを利点として書かなければいけないは、そういう重要な設定を忘れてしまうカメラが多いのである。
液晶ビュワーは小型だが晴天下で真っ黒になってしまうこともなく好感触である。ピントの確認はできないのだから、大きさよりこういうことの方が大切である。光学ファインダーも付いているがあまり使う機会はない。コマンドダイヤルには「セルフタイマー」「マクロモード」「撮影モード」「再生モード」「動画モード」が割振りられているのみでシーンモードなどは存在しない。これは潔くて心地よいものだ。大体光学3倍ズームのエントリーコンパクトデジカメにちまちまとしたシーンモードは要らない。レンズはライカ判換算で38〜114mmF2.8〜4.8の標準的なものである。通常モードで60cm、マクロモードで10cmまで寄れる。マクロモードでは広角側に固定されてしまうが、本カメラのような割り切ったカメラには充分だろう。AF測距点は中央1点であり、合焦スピードも素早くはないが当時の標準的なコンパクトデジカメに比べれば劣ってはいない。不規則に動く被写体を撮影するのは困難であるが、そのような被写体を確実に撮影できるコンパクトデジカメは当時は限られていた。取り立てて欠点には当たらないだろう。
ズーミングレバーは上下に倒す爪付きの変形シーソーレバーで、これははっきり言って節度がなく使いづらい。微妙な操作は不可能だ。フジのカメラによるズーミングはシングル8時代から使い勝手の良いものではない。
基本的にはフルオートの自動カメラである。フジのコンパクトデジカメは伝統的にオート撮影モードとマニアル撮影モードを切り替えることができるが、マニアル撮影モードと言っても別に任意の露出を設定できるのではなく、露出補正とホワイトバランスが指定できるくらいだ。本カメラの性格上それで十分だろう。ただ、撮影して困ってしまうのは感度がISO100相当で固定されて変更できないことだ。広角側が開放値F2.8でも薄暗い昼間の商店街のレベルでたちまち被写体ブレや手ブレが発生してしまう。じゃあ、フラッシュを使ったらどうかというと、拙僧が使った限りではチャージに時間が掛かる上にAFが怪しくなり、シャッタースピードも遅くなって結局ブレた画像になってしまうのだ。三脚必須とは言えども、本カメラの性格上三脚を抱えるのは煩わしいだろう。このような問題は後裔機のファインピクスA310では全て解決している。ハニカムCCDの功績は画質云々より高感度化にあるだろう。
もう一つ。本カメラの重大な欠点はファイルネームの採番が簡単にリセットされてしまうことだ。リセットを防ぐには既に採番されたメディア内の最新ファイルを削除しないことしか方法が無い。これはひどく不便でカメラからPCにファイルを転送する際に上書きしてしまう可能性が高い。この頃のファインピクスは普通にそうなのが理解に苦しむところである。
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ファインピクスA310は頻繁にジャンク駕籠で見つかるが、本カメラはあまり見かけないようである。やはりISO100相当でしか使えない使い勝手の悪さから敬遠されたのだろうか?ただ、ファインピクスA310はちゃんと動けばパフォーマンスは高いが壊れている個体が多く、拙僧の手元には都合7台が辿り着いたが満足なコンデョションのまま手放したのは2〜3個である。トラブルはAFや絞りの動作不良だったのでハニカムCCDの歩留まりが原因では無いだろうが惜しいカメラである。
そういう意味では本カメラもせめてISO400相当を搭載していれば小気味よい秀作になったのに惜しい。ファインピクス700の時代ならともかく、何故もうひと頑張りできなかったのか残念である。