フジフィルム ファインピクス4900Zについて


Finepix4900Z
スマート路線だったファインピクスシリーズに加わったエグいマッチョカメラ

☆ジャンク度☆
AFとMFの切り替えに難?
撮影可能


Finepix4900Z Finepix4900Z
 寸詰まりで野太いレンズがワイルドな雰囲気を演出してそれまでのファインピクスと一線を画す。
 パナのDMC−FZ10の先を行っているな。

Finepix4900Z
 この角度でレンズが沈胴した状態で紹介冴されていることが多い。

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 光学6倍ズームで明るいレンズが伸長した所。
 鏡筒のリングでMFも可能。

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 効きそうなフラッシュ。
 ホットシュー付きの本格派だ。

Finepix4900Z
 ファインピクスシリーズ初のEVF搭載機。

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 ファインピクスシリーズ初のEVF搭載機。
 ズーミング操作は鏡筒脇と背面の2系列。

Finepix4900Z
 ワルを感じさせるボディ上面。


Finepix4900Z Finepix4900Z
 マルチモード搭載の本格派。


Finepix4900Z Finepix4900Z
 鏡筒の操作系がSFっぽさを感じて良い物である。
 ディマージュ7の先を行っているな。

 例外はあるが、ファインピクスの命名規則は世紀を跨いだ辺りまで100番台がボディ形式、1000番台が画素数を示していた。例えば150万画素級の縦型ボディならファインピクス1700Z、200万画素級のスクエアボディならファインピクス4500といった具合である。200万画素級なのになんで4000番台を割り振っているかというと、フジフィルム自慢のハニカムCCDは出力画像が倍の400万画素級だという理屈なのだ。その辺はファインピクス4700Zで報告している。
 それで900番台は何かというと、初代はファインピクス2900Zである。これは採番でもわかるようにハニカムCCDでない通常タイプの200万画素級撮像素子を搭載したものであった。レンズは常識的な光学3倍ズームレンズだったが、絞り優先AEやマニアル露出が可能な上級モデルである。シャッター速度優先AEが非搭載なのは絞りがF4とF8しか用意されていないからだろう。また、当時のデジカメとしては珍しくホットシューまで搭載していた。更に専用地図ソフトとリンクして、パソコン上やカーナビゲーションシステムでの活用を可能にしたらしいのだが、ちょっとどういう使い方をしたのかイメージが沸かない。そんなことより、それまでのファインピクスシリーズのスマート・オシュレ方面のデザインと比べると、レンズを強調したエグいルックスが異色を放っていた。実際に手に取ると、無暗な豪華さがイモくさくて微笑ましいのだが、「女子供」を寄せ付けぬパワーのあるルックスである。その辺がフジフィルムの言うところの「上級者向けの機能を装備」のニーズであり、「幅広いお客様にお薦めする」ファインピクス1500と差別化を図っている。
 本カメラは、その上級者路線を踏襲したのだが、特筆すべきはライカ判換算で35〜210mmF2.8〜3.1の明るい光学6倍ズームレンズを搭載しているのだ。この大口径レンズはフジフィルムも自慢したかったらしく、宣材写真は沈胴した状態でパースを付けて強調している。高倍率ズームレンズ(当時)を搭載したデジカメの始まりはソニーと意外なことにカシオである。カシオの開拓精神にはデジカメ史において注目する必要があるだろう。ソニーはDSC−F505Kに200万画素級撮像素子とツアイス銘の光学5倍ズームを組み合わせ、カシオはQV−8000SXに130万画素級撮像素子と光学8倍ズームレンズを組み合わせていた。ソニーが男性のウタマロ願望を満たす立派なルックスに対してカシオは従来モデルと大きな差はない。興味深いのは双方ともレンズを右端にオフセットした回転レンズ型なのである。恐らく、発想の基にムービーカメラから影響を受けているのではと想像している。そもそも、デジカメはムービーカメラの延長上に位置するものなのだ。
 本カメラはやはりレンズは左端にオフセットされているもの、フィルム時代のレンズ一体型一眼レフカメラを髣髴させる常識的なパッケージングである。EVFの搭載も特記すべき事項であろう。フジフィルムの公式的な呼び方だったかは定かではないが「ネオ一眼」と呼ばれていた。アマチュアが辛うじて手が届く価格帯の一眼レフデジカメのEOS−D30が登場したのは本カメラの登場の数カ月先である(2000年)。それだって30万円位したから誰でも手に入る代物では無なかった。そこでフジフィルムは、従来の一眼レフに準じた使い勝手のEVF+高倍率ズームの組み合わせに注目したのだろう。

 
                   ☆            ☆
 

 では、本カメラを手に取ってみよう。大口径レンズのマッスを強調したデザインは只者で無さを髣髴させる。一方でオリンパスのLシリーズにも通じるパッケージングはフィルム世代の方にも取っつき易いだろう。オリンパスも同時期に光学10倍ズームレンズを搭載したC−2100UltraZoomを送り出している。キヤノン製レンズに光学手振れ補正機構を搭載した先進的なモデルだが、本カメラよりもかなり大柄なのでクラスが違うと言えよう。
 レンズは既に紹介した通り、明るい光学6倍ズームレンズでスーパーEBCフジノン銘を与えている。手ブレ補正機構は時代的に非搭載だが、当時唯一手振れ補正機構を搭載したオリンパスに比べると、コンパクトで使い勝手の良いボディサイズを実現している。撮像素子は大振りな1/1.7型の240万画素級スーパーハニカムCCDである。400万画素相当の出力画像は眉唾だとしても、同クラスでは一歩画質でリードする。特筆すべきはISO800モードの搭載である。手振れ補正機構は非搭載だが、レンズの明るさと高感度で幅広い撮影シーンに堪える。大型のグリップが効果的なので、更に手振れを抑えるのに有利だろう。また、鏡筒が張り出しているので左手の収まりも良い。EVFの枠に立派なゴムカバーが付いているのは評価が高い。拙僧のようなメガネ者はファインダーをメガネに押し付けて手振れを防ぐのだ。
 軍幹部の電源ボタンを押下すると、レンズが伸長し約6秒で撮影可能状態になる。世紀末時代のデジカメとしては標準的なレスポンスである。電源ボタンを軸として撮影・再生モードをレバーで切り変える。軍幹部で特徴的なのはコマンドダイヤルである。実はこれは二階建て構造になっており、基部がリングになっている。上部コマンドダイヤルで「セットアップ」「マニアル露出」「絞り優先AE」「シャッター速度優先AE」「オート撮影」「シーンモード」「動画撮影」を切り替え、基部のリングではシーンモードの選択などのカーソル移動や露出設定に使用する。シーンモードは「ポートレイト」「遠景」「スポーツ」「夜景」の4種類で、各選択で微妙に露出が変わるのは当然なのだが、微妙にEVFの明るさも変わるような気がするのが不思議だ。マクロモードやセルフタイマーなど、ボタン一つに役割を割り当てているので操作に迷うことは少ない。一方で小さなボタンが所狭しと配置しているのだが、ゴージャスで拙僧は悪い気はしない。ズーミングは背面と鏡筒脇の2系列で行える。EVFを使用した状態では鏡筒側、液晶ビュワーを使用した状態では背面側で行うのが便利だろう。鏡筒先端部はリングになっており、MFモードで使用する。中央部を拡大してフォーカシングを容易にする工夫はされているが、EVFにしろ液晶ビュワーにしろ満足なフォーカシングが可能な精度ではない。また、拡大ボタンを押しっぱなしにしないと拡大をキープできないのは如何なものかと思う。タダでさえピントが掴みづらいのに指がつる。
 起動時にはズームレンズは広角側から若干手前の位置となる。あまり気持ちの良い物ではないが、起動時に最望遠になるクールピクス950に比べれば気が利いているだろう。ズーミングボタンの押しっぱなしで速度は加速し、広角側から望遠側までの移動は約3秒である。気になるのはズーミング最中にアウトフォーカスになるのだ。もしかしたらバリフォーカスレンズなのかもしれない。AFのレスポンスは当時としては良好の部類だろう。精度もほぼ満足である。ただ、連続撮影は苦手である。オリンパスのようなバッファリングがされてないのだろう。面白いのが連射モードで、一度レリーズを行うと0.2秒間隔で最大5コマの撮影が出来る。一度、このモードで撮影すると記録中で暫く撮影できなくなるが、相撲の頭から当たる瞬間を撮影するときなど有効である。
 電源はかまぼこ型のNP−80を使用する。これはファインピクス1700Zなどファインピクスシリーズの他、リコーや東芝など幅広く採用したものである。流石に古いバッテリーであり、個体差もあるだろうが1回の充電で50〜60枚程度の撮影が可能である。如何にも少ないとも思えるが、何しろ64MBのスマートメディアが1.5万円もした時代である。64MBのスマートメディアで400万画素モード・画質ノーマルだと77枚の画像が撮影できる。


                   ☆            ☆

 実売価格で10万円前後だったそうだから建付けは良く、質感も所有欲をキープするものである。デザインセンスも後の名機であるディマージュ7やルミックスDMC−FZシリーズの先を行っているだろう。驚くのはスマートメディアや予備バッテリーの値段の高さである。1000枚以上の撮影が可能な現代とは隔世を感じるものだ。晴天下では抜群の写りを誇るものの、室内だと肌色が変な具合に偏るので使い勝手には工夫がいる。適切なホワイトバランスを選べばマシになるのだろうが。
 本カメラの登場の後、フジフィルムはトイカメレベルのiX−130からFマウント一眼レフカメラまで隙間の無い幅広いラインナップを展開する。フィルムメーカーだからこその裾野から頂点までのデジカメ普及に万進したのだろう。実際、それは成功したかに見える。一方で110判フィルムが終了し、とうとうシングル8も終了直前だが、これらが21世紀まで息が続いたのも業界リーダーとして余裕があっての慈善事業だと言えよう。
 本稿執筆時にもコダックが120判モノクロフィルムの価格を上げたが、暫くはフィルム環境も残していただきたい。その為にもフジフィルムにはデジカメやメディカル・サプリメントで儲けていただきたいものだ。

   では、撮影結果を見て下さい。

(了:2011/7/26)

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