京セラ ファインカムM400Rについて


FinecamM400R
ほどよく纏まったデザインだと思うのだが、ステッカーべた張りは如何なものか?

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能


FinecamM400R FinecamM400R
 京セラブランドの光学10倍ズームレンズ。
 伸長にはやや時間が掛かる。

FinecamM400R FinecamM400R
 手動でポップアップするフラッシュ。
 勝手にひからないのは嬉しい。

FinecamM400R FinecamM400R
 確かに美しいEVF。
 ステッカーで誇示するのは粋でないが。

FinecamM400R FinecamM400R
 あまりステッカーが多いと自信のなさを悟られないか。

FinecamM400R
 のっぺりとしたボディ上面。


FinecamM400R
 単三型電池仕様が嬉しい。


 そのびっくりするほど不細工な一眼レフカメラを始めてみたのは拙僧がモノクロを始めた頃だった。まだ桶川にコースがあった頃、オフロードバイクのレースでチームメイトの女子が持ってきたのだ。それはガンダム風というと褒め過ぎで、それ以前のザンボットスリーか率直に言うと飛騨の伝統家屋にしか見えなかった。今から思えば210AFか何かだと思うのだが、どうにもあか抜けないペンタフラッシュが脱着可能と知った時には悪いジョークにしか思えなかった。なんだか京セラの上層部にはカメラ製造を苦々しく思っている方がいて、ワザと売れなさそうなデザインを選んだとも思える。反対にコンタックスブランドの一眼レフのシリーズは共通性を持った心地よいデザインであるし、やはりあれは意図的であったのだろか?コンタックス愛好家の方々も、その素性が京セラにあることは直視したくない姿勢が表れていた。当時の拙僧も既に京セラのカメラにはサムライと出会っていたのだが、認識の範囲外であった。
 デジカメのパイオニアはカシオのQV−10だろうが、フィルムカメラの代用品として認識され始めたのは1998年のフジのファインピクス700辺りであろう。それまで牧歌的なデジカメを出していた京セラが本気で売ろうとしたと思われるデジカメ版サムライを出している。かつて大ヒットを成した京セラはAPS判カメラやソーラーパネルにまでサムライの名を冠したのだ。しかし、デジカメ版サムライはさっぱり売れなかったらしい。確かにムービースタイルのサムライは主流にはなれないだろうが、当時のデジカメがニコンはレンズ回転スタイルのクールピクス900、キヤノンはガリバーズIXYのパワーショットA5ズームだったのだから、格別に奇をてらったデザインだとは思えない。きっと撮影後の記録に尋常じゃないくらい時間がかかるとか(意外と機敏という説あり)、電池が鬼のように持たないとか、カメラとしての基本性能に問題があったのだろう。次に京セラが目立った動きを見せるのがファインカムS3である。当時は高価だった300万画素級の受光素子は1/1.8型とちょっと大型。商売的にはどうだったのかよくわからないのだがコニカにはKD−300Z、マクセルにはハリバートンモデルのZD3として供給され、電池が異様に早死にする以外は完成度の高いカメラだった。しかし、これで京セラのデジカメブランドである「ファインカム」が世に浸透したかというとそうは思えない。恐らく、普通にカメラファンの方々にとってファインカムを(というか京セラのデジカメを)比較的有名としたのはSL300R/SL400Rではないかと思う。レンズの飛び出ない薄型フラットボディに意欲的なレンズ回転スタイルはTVCMでも印象に残っているのではないかと思う。SL300Rの方は若干のレンズのチューンを経てコンタックスブランドでも発売されている。実はコンタックスブランドのデジカメとしては、その前にもコンタックスTVSデジタルとして発売されていて、ここでも京セラらしい栄光あるネーミングの使いまわしがみられる。これらはフィルム時代のコンタックス信者よりもガジェット好きの連中の一部を賑わせたようである。移民で構成するアメリカ人が薄っぺらい家系図を作らせて血統文化に憧れるようなものだろう。しかし、そもそもデジ家電は普遍的な価値とのカウンターから出発したもので、最新モデルこそが正義だから高級路線は似合わない。かつて漆塗りのパソコンや携帯電話が登場したが成功した話は聞いたことが無い。そもそも、拡張とリプレイスというデジ家電の本質にデジ一眼こそがぴったりハマっている。TVSデジタルにしろコンタックスSL300Rにしろコンパクトデジカメとしては価格は異様に高く、丁度、中古のデジ一眼の価格帯と重ねったこともあってか、フィルムカメラ時代の頃のように胸を張ってデジ版コンタックスを使っていますと表通りを闊歩した方は少ないようだ。
                   ☆            ☆
 前置きが長くなったが、SL300R/SL400Rの陰でひっそりと発売されたのが本カメラである。いや、デジタルニュースコンテンツでは光学10倍ズーム機としてトップで紹介されているのだが、拙僧の知る限り店頭では見たことが無い。SL300R/SL400Rなら中古コーナーでもジャンク駕籠でもそこそこ見かけるのに。拙僧がジャンク駕籠で見かけた時もオリンパスのC−740か何かだと思って手に取るのも躊躇した。よく見るとちょっと不細工なので手に取ったら京セラだったのだ。物珍しくて500円を払って持ち帰る。調べると本カメラを最後にして京セラはカメラ事業から撤退したようだ。本カメラには姉妹機としてファンカムM410が存在する。違いはM410の方がボディがブラックでレンズが沈胴せず、その代りに起動が速いらしい。他にはM410はフィルタネジが切ってあってテレコンやワイコンが付けられるららしいのだが、本カメラもレンズ基部にはネジが切ってあるので下駄を履かせれば付けられるだろうし、サードパーティ製のコンバージョンレンズを付けたコンテンツも見られる。また、M410の鏡筒にはラバーが張ってあってフォーカスリングとして使えそうなのだが、京セラのHPに掲載されているM410の取扱説明書をダウンロードしても、開いてみると本カメラ(M400)の取扱説明書なので確認できない。コンポーネンツは殆ど同じものを2種類用意するのはユーザーの選択肢が増やしてくれているという見方もあるだろうが、態度が煮え切らないようにも思える。M410の方が5000円ほど高かったようだが、それで高級志向として注目された様子もない。
 肝であるレンズはライカ判換算で37〜370mmF2.8〜3.1の光学10倍ズームレンズである。ライバルのオリンパスと比べると望遠側が若干明るい。最短撮影距離はマクロモードで広角側が10cm、望遠側が90cmである。オリンパスがスーパーマクロモードで3cmまで寄れるのでおよばない感じだが、実際には階層メニューを掘り下げる必要があるので手軽には使えない。受光素子は400万画素級である。
 拾い上げた個体のコンディションは良好だったのだが、「240枚一気撮り」とか「美しく優しいファインダー搭載。ぜひその目で・・・お試しください!!!」とかステッカーが貼られていて、所沢のパチンコ屋の雰囲気を漂わせていて一カメラファンとしては悲しい限りである。展示品流れではないと思うので、このまま使っていたのだろう。拙僧にとってデジカメは速やかに右から左へ受け流す物なので、ネットオークションで掲示するときにステッカーの張り跡を露わにするのが嫌だから剥がさないが、自分で長く使うのならメーカーのプロパガンダなどは速やかに剥がしたい。ブランドロゴがでかでかと主張するストラップを好き好んで使いたい方もいらっしゃるのだから、この種のステッカーにステイタスを感じるのだろう。
 電源が単三型電池4本なので、手持ちのエネループで動くのはありがたい。拙僧のように複数のカメラを転がしている者は、常に特定の充電池が稼働状態にあるとは限らいないのだ。無論、このような環境は褒められたものではないが。起動は光学10倍ズームレンズが伸長し、4〜5秒で完了する。2004年当時のカメラとしては満足なものだろう。ステッカーで主張するように「240枚一気撮り」と「美しいファインダー」が売りのようである。一気撮りというのは、連射モードでメモリ一杯まで撮影が可能だということのようだ。つまり、その当時のカメラは連射モードでも一度のレリーズでは撮影枚数に制限があったということなのだな。本カメラは高倍率ズーム機としては後発であり、特徴として連射を掲げたようだ。コンティニュアンスAFが効いた状態で秒間2枚の連続撮影は中々大したもののようだ。拙僧個人は活用できなかったのだけど。AFの反応は良いようである。特にレリーズボタン全押しから記録までのレスポンスはオリンパスのC−7xxシリーズ辺りに比べても良い印象だ。「美しいファインダー」の方は実感できる。初期のパナのDMC−FZシリーズとは比べ物にならない程美しい。リフレッシュもスムーズである。本カメラは手ブレ補正機能は搭載していないから、EVFファインダーを使用し、がっしりとホールドすれば効果的だろう。ただ、暗い場所ではノイズが乗るので多少見づらくはなる。背面の液晶ビュワーは小さめだが、拙僧はフレーミングの確認位にしか使わないので特別欠点だとは思わない。
 シーンダイヤルは「SETUP」「再生」「オート撮影」「連射撮影」「シーン撮影」「EXT.撮影」「動画撮影」を用意している。「シーン撮影」は「スポーツモード」「ポートレートモード」「夜景モード」「夜景ポートレートモード」の4種類を用意している。20以上ものシーンモードを搭載しているカメラと比べると物足りない気がするが、実際にはきめ細かなシーンモードなど使わないから、この4種類で十分である。「EXT.撮影」では絞り優先AEによる撮影ができる。使いようによってはスポット露出計としても使用可能だ。フラッシュのポップアップは手動で行い、スナップ撮影でいきなり光ることはなく便利である。また、マクロモードは電源を切っても記憶しているタイプである。
                   ☆            ☆
 実用のオリンパス、ガジェットアイテムのパナやソニーに比べるとイマイチ存在感をアピールできないのが本カメラである。しかし、カメラの基本性能は悪くない。撮影画像も発色が抑え気味で地味な感じだが、派手で目立つ発色に嫌味を感じる方もいらっしゃるだろうから、これはこれで悪くないと思う。これはこれで悪くないという程度のカメラでは、カメラ事業が生き残れなかったのが歴史の冷酷さを表している。
 近年の安原製作所の安原氏による著書によると、京セラのカメラ事業撤退は社内の政治的な都合によるものとある。何だか意味深な言葉だが、一技術者としての自分に誇りを感じる氏にとっては、役職を誇示したい連中の祭りごというのは苦々しいであろうから、幾分皮肉を込めているのかも知れない。京セラがカメラ事業から撤退した頃のことは覚えているが、カメラメーカーがフィルムカメラから撤退すると株が上がる風潮だったと思う。コニカミノルタも後を追うようにカメラ事業から撤退し、ペンタックスもブランドは残ったがHOYA傘下になった。カメラ趣味者にとっては冬の時代が到来する。
 そもそも、京セラという企業はマテリアルやモジュール単位の製品で充分に儲けていた企業だと思えるし、実際、今でもそうなのではと思う。むしろ、何故民生カメラに興味を持ったのか不思議だ。いや、実際にはさほど興味もなくて、ヤシカが安かったから儲けが出る程度に回してみたのだろう。拙僧の私見では、一時期は確かにカメラは携帯電話についているもので沢山だという風潮だった。一眼レフを持っているだけでマニアかオールドスタイルと思えたものである。だが、デジペンの登場以降は写真を撮りたいという欲求を、撮影専門のカメラ(というのも変な表現だが)を操ることで明確なスタイルとして表現しているようである。それはツアイスだとかフルサイズCCDだとかは問題ではなく、京セラのブランドが入り込む余地はないが、確実に京セラの部品が浸透して儲けを出しているのだろう。

   では、撮影結果を見て下さい。

(了:2011/3/14)

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