カシオ エクシリム EX−Z1000について


EX_Z1000
妙な飛び道具で勝負する後裔機に比べてオーソドックスな機能で纏めている。

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能



EX_Z1000 EX_Z1000
今時、38mmから始まるズームレンズは凡庸と言わざるを得ない。
ズームレンズを搭載したスリムボディを売りにしたEX−Zシリーズも、今や肥大して普通になった。

EX_Z1000 EX_Z1000
ステンレスボディはヒヤリとして心地よいが、指の引っかかりは悪い。
拙僧は底ストラップをつけた。

EX_Z1000 EX_Z1000
伝統の有るシリーズなので操作系はこなれている。

EX_Z1000 EX_Z1000
大型で見やすい液晶ビュワーだが、解像感はイマイチ。


EX_Z1000 EX_Z1000
カシオ自慢のベストショット。これはこれで悪い物ではない。
本カメラではマニアル設定もある程度対応する。

EX_Z1000
バッテリーは信頼性の高いタフなNP−40。

2011年は日本にとって受難の年であった。まあ、それは拙僧のような下賎の者が総括してもしかたがないので、カメラの話をしたい。今年になって益々コンシューマーカメラの競争は激しくなり、ペンタックスのコンシューマーカメラ部門をリコーが吸収した。そもそも、HOYAがどこまでペンタックスを大事にするのか不信感を持っていたが、結局、将来的に有望なメディカル・ヘルス部門だけ頂いて商売的に難しいコンシューマーカメラ部門は手放してしまったわけだ。ペンタックスもリコーも戦後の復興期に日本のカメラ・写真ファンを支えたブランドであるから、持続的な展開を期待したい物である。拙僧の周辺では中判カメラ・レンズの価格が下落しており、もっとも底辺の拙僧の海岸まで辿り着くようになった。特にマミヤが増えている。名古屋中古カメラ大バーゲン戦役で奪取したマミヤ645 1000Sが凄く良いカメラで嬉しいのだが、当面150mmF4の1本でゲリラ作戦を展開すると宣言したのにもかかわらず、210mmF4が増えてしまった。しかし、これなんて落札価格600円で送料も600円なのである。幾らなんでもスルーは出来ない。まだ、撮影には使っていないが、傷も曇りも無く良いコンディションである。デジカメ方面では1000万画素級のコンパクトデジカメが普通に500円で転がり始めた。ちゃんとしたジャンクも掴んでいるので、濡れ手に粟というほど儲けてはいないのだが、やはりそこそこの価格帯で処分できるので嬉しい。本カメラも1000万画素級で、傷は有るものの不足の無いコンディションだ。
 拙僧はカメラ好きだが、デジカメは殆どジャンク籠でしか出会わないし、肝心な撮影はフィルムカメラを使うので最新情報には疎いのだ。カメラ雑誌だって図書館のバックナンバーを借りるか、ブックオフで105円のものしか買わない。ごく稀に315円の物も買うが、清水の舞台から飛び降りる思いだ。なので1000万画素級を誇る本カメラも最近のものだと思っていたのだが、なんと2006年発売であった。コアクラスのコンパクトデジカメが1000万画素級になってから、既に5年も経っていたのだ。なんてこったい、マシンの進化がこれほど速いとは。GSX−Rと接したキリンの思いである。歴史的には、コンパクトカメラで1000万画素を超したのは本カメラが最初である。エクスリムの採番は分かり辛いのだが、コアクラスでも上級機として800万画素級のEX−Z850があり、普及機として600万画素級のEX−Z600があり、本カメラは普及機のEX−Z600の後裔機とされるようだ。両者には画素数の他にも前者がマニアル操作を考慮しているのに対し、後者はオート主体の違いがあるそうだ。そうなると、拙僧の師団に配備していたことのある700万画素級のEX−Z700のポジションが気になるところだ。EX−Z700は外観もオート主体の操作系もEX−Z600を踏襲しており、直接の延長線上にある。伝統的にエクスリムEX−Zシリーズはオート(ベストショット)以外の操作を難しくしている。しかし、本カメラはある程度のマニアル操作の柔軟性を持たせており、また、外観もEX−Z600/700とは大きく異なっている。なので、本カメラはEX−Z850とEX−Z600/700の中間に位置する新カテゴリーと言える。
                    ☆             ☆
 デザインはEX−Z600/700の最中みたいなもっさりとしたものから幾分引き締まり、エッジは丸まっているが適度なハード感を残している。直線基調だった初期のEX−Zシリーズに比べるとソフトになった。EX−Zはスタイリッシュ・スリムが売りで始まったシリーズだが、既にスリムとは言いがたいサイズになっている。もっとも、本当のスリムはエクシリムEX−S1シリーズが興っているので、気兼ねせずに標準クラスのデジカメとしていられるのだろう。それにしてもパッとしないデザインだと思う。女子色の強いEX−Z80あたりはビッとしたスタイリングだと思うのだが、煮え切らないな。そういう点では同じ1000万画素級デジカメでもソニーやパナソニックは上手い。もっとも、このもっさりとしたボディには信頼性の高いバッテリーNP−40の採用が前提となっているのかもしれないな。
 手に取るとずっしりと重い。それまでのアルミ系金属ボディからステンレス系金属ボディに変更となった。確かにひんやりとした質感は無し地加工と共に美しい。ボディの摩擦係数は低く、正面の「EXILIM」のロゴがエンボスで浮き上がっている他、背面の 親指の当たるところにドットのモールドを施しているが、うっかり手を滑らせないように注意が必要だ。拙僧は100円で拾った三脚座につけるハンドストラップをつけていた。背面の大型液晶ビュワーは晴天下でも見やすい。何でもEX−Z50よりも3倍明るいシャア専用機のようなチューンを行っているそうだ。但し、解像度は高くないらしく、液晶ビュワーではもやっとしてピントが合っていないように見えてもPCで見るとちゃんとピントがあっていた。エクスリムシリーズの伝統を継承してMFモードを搭載するが、精密なフォーカシングは難しいだろう。
 撮像素子は1010万画素級でライカ判換算で38〜114mmF2.8〜5.4の光学3倍ズームレンズを組み合わせる。2006年時点でも凡庸な焦点距離である。最短撮影距離はマクロモードで6cmと褒めた物ではないが、エクスリムシリーズは伝統的に接写に弱く、最短撮影距離が20cmなんていうカメラもあるのでマシな方である。実際、後裔機のEX−Z1080では最短撮影距離が10cmとスペックダウンしている。6cmと10cmじゃ大きな違いである。カシオは不思議なほどマクロ撮影に疎い。
 エクスリムシリーズ共通の操作系として電源ボタンの他に撮影と再生のショートカットキーを搭載する。撮影の場合は赤いカメラマークのボタン、再生の場合は緑の三角マークのボタンを押下すれば速やかに撮影・再生モードに移行する。起動は1秒+αと高速。AFは9点で素早いのだが、木の茂みなどはもやっとしてフォーカスが合っているのか良く分からない場合が多い。特に日陰だと謙虚でレンズのパワー不足を感じる。どうもエクスリムEX−Zシリーズのレンズはペンタックスブランドを排してからレンズのパワーが落ちた気がするなあ。
 エクスリムはフォーカスモードもAFの他にMFやPF(パンフォーカス)が選べたり、十字キーに任意の設定項目を割り当てたり、きめ細かな設定が可能なのだが、操作系はオートを主体としており、カシオ独自のシーンモードであるベストショット以外で撮影しようとすると、すこぶる操作性が悪い。ベストショットは撮影済みの画像を呼び出してカスタムベストショットとして登録できるので、一度、面倒な操作で諸設定を行い、撮影した画像を登録すれば次回からはワンタッチで任意の諸設定で撮影できるのだが、なんだかカシオの都合に合わせるようでいい気持ちではない。本カメラではそのベストショットの偏執が緩んで、画素数やフラッシュモード、ISO感度モードを右端にアイコンとして表示し、センター付き十字キーで設定しやすくした。これは大きな進歩で柔軟な運用が可能である。
 手ブレ補正機構は非搭載である。手ブレ軽減モードがあるが、多分感度をゲインアップしているのであろう。ソフトウェアでも補正しているかもしれない。ISO感度はマニアルで400まで設定できるが、手ブレ軽減モードだとISO800まで自動でゲインアップする。関心なのはベストショットの「高感度」である。ISO3200までゲインアップし、かなり暗い被写体でも気合を入れればブレずに(ブレづらく)撮影できる。無論、粒子は粗くノイズは乗るが、拙僧は別に気にならない。むしろ、通常の撮影モードでラチュード(ダイナミクスレンジ)が狭いのが気になる。晴天下でなくても簡単に白飛びしてしまう。また、光線状態によって描写の傾向ががらりと変わってしまう。別に小型の撮像素子のダイナミクスレンジの不利とかそういうことではなく、カシオの想定する画質の水準のレベルが高くないのとソフトウェアが被写体を決め打ちしてさじ加減を加えているのではないか。色ノリが薄いかと思えば、べたっとしたビビットな発色になったりする。拙僧は冴えた目を持っているわけでもないので画質の良し悪しは余程顕著でないかぎりあまり気にしないのだが、かなり気になるレベルだ。
                    ☆             ☆
 レンズは広角側で顕著に歪み、設計の古さを感じる。カシオは伝統的にカメラとしての出来や描写力より、新しい遊び方といったニーズの開拓を表看板に出してきた。それはそれで結構である。画質が最優先ならクールピクスかIXYデジタルを買えばよい。それにしても、そろそろベースの改新を行わないと設計の古さが目立つ。拙僧はハイスペック至上主義者ではないが、戦場では絶対的な数値性能が勝敗を決定する場合もある。
 しかし、カシオは仕様でほとんど変わらず、むしろ最短撮影距離ではスペックダウンしたボディにYouTubeモードなどという基本性能とは無縁の機能を付加してエクスリムEX−Z1080を出した。まあ、そういうフォロワーの方々がいらっしゃるのならいいけど。

   では、撮影結果その1を見て頂きたい。

(了:2011/12/10)

クラデジカメ系列メニューへ戻る 「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system