ニコン クールピクス880について


Coolpix880

僅かに汚れ(塗装ムラ?)が有るものの美品
使用感が全く無いのだけれども、前オーナーがよっぽど大切にしていたのか死蔵していたのか・・・

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


Coolpix880 Coolpix880
 ニコン者としては、例え末端とはいえ「ZOOM NIKKOR」に惹かれるのである。
 このパームグリップが末代までベーシッククラスのクールピクスシリーズに受け継がれる。


Coolpix880 Coolpix880
 ボディ上面と背面のレイアウト。
 パッケージングは殆ど完成されていて、後裔の機種と比べても違和感は無い。


Coolpix880 Coolpix880
 ボディ上面のコマンドダイヤルと十字キー+コマンド/ショートカットキーによる常識的なインターフェイス。
 お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ここまでのコメントはクールピクス775と同じです。

Coolpix880
 本来は購入時に付属する専用リチウム電池を使用するのだけれども、汎用電池の2CR5の使用も可能。
 拙僧のようなボディのみのジャンクものを拾う者としては有りがたい配慮だ。
 しかし、入力電源が8.7Vというのは如何な物かと思うのだけれども・・・。


Coolpix880
 マニアル露出、絞りAE・シャッター速度AE・プログラムAEのマルチモード搭載。
 測光パターンは256分割やスポットなど4種類のマルチモード搭載。被写体の輪郭誇張調整機能搭載など、イージス艦みたいなハイテクコンパクトデジカメだ。


Coolpix880 Coolpix880
 後裔機のクールピクス885と並べてみた。
 レンズは本カメラの方が口径が大きいように見えるが、明るさは同じ。


Coolpix880 Coolpix880
 液晶ビュワーはクールピクス885の方が若干小さい。
 これを「退化」と感じる方もいらっしゃるだろう。



 クールピクス775のコンテンツで、この筋の祖たる田中長徳氏が本カメラに対して「どの購買層にも全く魅力を感じさせないルックスながら、画像を記録するには極めて優良」という趣旨の評価をしていたと記述したけれども、長徳氏が実際に仕事に使っていたのは300万画素級の本カメラのようだ。これは過去のカメラジャーナルで確認した。また、本カメラはニコン製デジカメの時間軸に当て嵌めると後裔のクールピクス775やクールピクス885の先行試験生産型だとも断言しているが、これも実際に入手し、撮影を行ったところ的を得ていたなと思わせる反面、そうではないとも評価できる。
 その辺りを中心に今回はコンパクトにコンテンツを纏めたい。何故なら、結局のところ世紀を跨いだ事のニコンのデジカメの総括は、クールピクス775のコンテンツに重なると思われるからだ。
                   ☆               ☆
 まず手に取ると意外に大柄なボディに少し驚く。クールピクス775の時もそうであったが、あれと比べても大きいのではと思う。しかし、ホールディングは良好である。もっとも、拙僧は指が長いので苦もないが、クーピーママが握るには少し大きいかもしれない。このボディマスはIXYデジタルよりも遥かに北米市場にはマッチしたのではと思う。ここで、修正したいのは前回のクールピクス775のコンテンツは少しピントを外していた事実なのだ。21世紀も7年も過ごした現在においては200万画素級も300万画素級も大した違いに思えないけれども、当時においては200万画素級はベーシック、300万画素級はスタンダード、或いはハイクラスに属す暗黙のルールがあったのだ。これは、現在のコンパクトデジカメの600万画素級と700万画素級の違いなど大した問題にならないけれど、パフォーマンスやアドバンテージの程度に形容できる差ではなく、決定的にクラスが異なるのであった。本カメラに対するニコンの挑戦はイージス艦並の豪華な装備を見ても分かる。それはニコンの意地と誇りを感じるゴージャスな機能が満載なのだ。
 細かく説明すると長くなるので箇条書きで失礼する。

 ・1/1.8型300万画素級CCD搭載。
 ・ワイド側F2.8の明るいライカ判換算38〜95mmの3倍ズーム搭載。
 ・レンズ前4cmのマクロモード搭載
 ・F5譲りのマルチ測光モード搭載
 ・よりシャープとみなしうる画像を自動的に選択・記録する「ベストショットセレクタ(BSS)」搭載
 ・40秒までの動画撮影可能。

 これだけでも、本気度を知る事が出来るのだが、驚くのはこれからだ。

 ・低圧縮のTiff形式ファイル保存モード搭載
 ・露出、フォーカス、ホワイトバランス、輪郭強調、階調等を被写体に合わせて最大11種類の「シーン撮影モード」の設定機能搭載。
 ・液晶ビュワーで合焦した被写体の輪郭を強調して確認可能。

 これまでのニコンのスタンダードクラスのデジカメがクールピクス800なのを考えれば、まさにゴージャスな機能満載である。まるで股間のポケットに大気圏突入用フィルムを内蔵した試作モビルスーツのようだ。現に拙僧は後者の機能などは殆ど使った事は無い。しかし、クールピクス800こそ、そこそこバランスの取れた秀作なカメラだけれども、その前のスタンダードクラス以下のニコン製デジカメがクールピクス700やクールピクス600のような煮えきれないカメラだったことを考えると革新的である。端的に言うと、当時のニコンのデジカメはエキスパートクラスのクールピクス900シリーズと一眼レフのD1シリーズこそ敬意を持って紹介されていたが、スタンダードクラスやベーシッククラスのデジカメ、いわゆる「普及期」にはやる気の無さを感じるのに充分であったからニコンファンは堂々としていられた筈である。少なくてもクーピー一家の干渉が無ければ。
 兎に角、これらの機能の殆どは当時のエキスパートデジカメのクールピクス990をそのまま踏襲したもので、特にTiffファイルの保存なんてどの程度需要が有ったのか疑問だ。このモードで撮影すると記録だけで15秒以上は確実に消費するし128MBのコンパクトフラッシュで12枚前後しか撮影できない。それに、「シーン撮影モード」も個別に輪郭協調や諧調思考の設定を行わなければならず、普及層ならずともちょっとデジカメの事情がわかった方々でも面倒な作業だったと思われる。この辺りが先行試験生産型と称する所以であり、後裔機のクールピクス775はクラスが違うとはいえごそっと省略、あるいは合理化されており、「シーン撮影モード」は夜景とか遠景とかポートレイトとか判りやすく記号化された。
                   ☆               ☆
 実際の撮影はレスポンスは時代相応に遅いけど、当時としては俊敏な方である。レンズが沈胴する分、900シリーズより部が悪いように思えるけど、同世代の他社製300万画素級デジカメに比べれば劣るものではない。操作系は撮影モードはボディ上部のコマンドダイヤル。マクロモードやフラッシュ禁止モードなど諸設定は液晶ビュワー上部にオフセットされた独立したボタンで行う。個人的には、頻繁に使おうであるマクロモードの設定がセルフタイマー>無限遠>マクロモードとボタンを2回も押さなければならないのは如何なものかと思う。ニコンのデジカメは伝統的にマクロモードの素早い移行に関心が無いようで、クールピクス775で完成されたクーピースタイルのデジカメも煩雑さでは似たようなものだ。メニュー階層で設定するプロパティは十字キーと液晶ビュワー右側にオフセットされた専用ボタンで行う。この辺りも先行試験生産型の面影があり、操作系は900シリーズを踏襲しながらも後裔機種へとつながるものだと思える。つまり、本カメラで試行錯誤された結果は、充分に後裔のクーピースタイルのデジカメに継承されているのだ。中には5つのフォーカスエリアを自在に選択できるマルチエリアオートフォーカス機能など、削減されて惜しいものもある。
                   ☆               ☆
 拙僧は本カメラの正常進化系のクールピクス885を所有しているが、こちらは殆ど使用実績が無いのでクールピクス775と比べてしまうけど、ある意味、大盤振る舞いでニートやコアな機能を満載した本カメラから余分な贅肉を殺ぎ落としたクールピクスは実用カメラにしろベーシッククラスデジカメにしろバランスが取れていると思う。本カメラは少し機能もボディマスも欲張りすぎた感がある。
 しかし、本カメラはニコンにとって画期的なデジカメだったのは確かだろう。ニコンは既にD1を世に出していたとはいえ、デジカメ等というものはまだまだコンシューマー層のメインにならぬと思っていた節があり、故にアッパークラスの900シリーズにしろ、ロワークラスの割り切りすぎたデジカメにしろ、カメラとしてのスタンダードなスタイルを意図的に避けていたように思える。本カメラはニコンとしては初めての本気豪直球スタンダードクラスデジカメである。
 ニコンフォロワーの末端の拙僧としては重要なマイルストーンとして一度は手にしていただきたいな。きっと本カメラの旧世紀ながらのゴージャス振りに驚かれると思う。ちょっと動作が緩慢な点を除けば、基本的な使い勝手も良い現在にも通用するデジカメである。

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2007/8/3)
クラデジカメ系列メニューへ戻る
「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system