ニコン クールピクス775:について


Coolpix775

一部メッキがはがれているものの美品
使用感が全く無いのだけれども、全オーナーがよっぽど大切にしていたのか死蔵していたのか・・・

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


Coolpix775 Coolpix775
 ニコン者としては、例え末端とはいえ「ZOOM NIKKOR」に惹かれるのである。
 このパームグリップが末代までベーシッククラスのクールピクスシリーズに受け継がれる。


Coolpix775 Coolpix775
 ボディ上面と背面のレイアウト。
 パッケージングは殆ど完成されていて、後裔の機種と比べても違和感は無い。


Coolpix775

Coolpix775 Coolpix775
 ボディ上面のコマンドダイヤルと十字キー+コマンド/ショートカットキーによる常識的なインターフェイス。


Coolpix775 Coolpix775
 本来は購入時に付属する専用リチウム電池を使用するのだけれども、汎用電池の2CR5の使用も可能。
 拙僧のようなボディのみのジャンクものを拾う者としては有りがたい配慮だ。
 しかし、入力電源が8.7Vというのは如何な物かと思うのだけれども・・・。


Coolpix775
 記録媒体はコンパクトフラッシュ。


Coolpix775
 無いよりはましなんだけれども、この光学ファインダーはあてになりません。


Coolpix775
 同世代のライバルと並べてみた。




 この筋の祖たる田中長徳氏が本カメラに対して「どの購買層にも全く魅力を感じさせないルックスながら、画像を記録するには極めて優良」という趣旨の評価をしていたと記憶している。そのカメラこそ、長らく続くベーシッククラスのニコン製デジカメシリーズのパッケージングの元祖となった200万画素級デジカメのクールピクス775だ。実際には300万画素級のクールピクス880が半年ほど先行して発売されているのだけれども、これは、まあソビエト製軍用機にありがちな先行試験生産型と言えないこともないので、やっぱりニコンの本気ベーシッククラスデジカメは本カメラと300万画素級のクールピクス885といえるだろう。拙僧はこのシリーズを「クーピースタイル」と呼んでいる。拙僧の記憶が正しければ、本カメラの登場時にニコンは「クーピー一家」という狐とネズミの合いの子のような粘土アニメーションのキャラクターを用意して万全の体制で販促に挑んだ。その経緯は多分ニッコールクラブのコンテンツの傍ら辺りにひっそりと影を残しているはずだけれども確認していない。誰だって自分の大切な思い出が「だいたひかるの結婚式」扱いされているのを目の当たりにしたくないだろう。なんていったって恋敵のロワークラス労働者階級の支持する野蛮なスポーツ選手は藤原紀香扱いなのだから同じ結婚式としても部が悪い。
 当時といえば前年にキヤノンがIXYデジタルを発売している。とうとう、キヤノンが本気を出し始めたのだな。同じ頃にオリンパスはC−2000シリーズの完成形であるC−2040を発売している。この辺りがオリンパスの黄金時代の頂点といえそうだ。本カメラの同世代はマイナーチェンジを経たIXYデジタル200と少し遅れてソニーのサイバーショットP2が発売されている。正に200〜300万画素級デジカメ同士が血で血を洗う戦乱の始まりであった。ニコンのラインナップを眺めても直前に戦局を左右する本気デジ一眼レフのD1XやD1Hを発売しているし、本カメラとクールピクス885の発売直後にはナンバリング規則が変わって4桁の採番の4桁目が画素数を表すようになった。実際に前年の後半辺りから形成されつつあったハイエンドコンパクトデジカメとしてクールピクス5000が登場している。ハイエンドコンパクトデジカメなんて、なんだか訳が分からなくなってブリッジカメラのように淘汰されると思っていたのだけれども、2007年の現在になっても光学10倍ズームトリプル手ブレ補正付きとか、スチルカメラなのかムービーカメラなのか良く分からないアンダーパスポートサイズとか破天荒なデジカメがキタムラの店頭を賑やかにしているのだけれども、そういうクラスレスとかボーダーレスとかは、そもそもサイバーカルチャーの具骨頂だと思うので良いことなのであろう。少なくても飛躍的にテクノロジーは向上したし選択肢は豊富になった次第だ。そういう意味でも本カメラが登場した時代は戦車や航空機が戦場に現れた第一次世界大戦に匹敵するな。
 問題は売れるだけ売りつけた合衆国や、ちょこっと青島辺りに上陸しておこぼれに預かった帝国主義政権下の日本のように我ニコン陣営が儲かったかということなのだけれども、この件に付いては少し後回しにさせていただきたい。
                   ☆               ☆
 拙僧がそのクーピースタイルを初めて入手するにはクールピクス7600まで待たなければならなかった。ヨドバシカメラの店頭で見かけても触りもしなかったクーピースタイルものを拙僧にしては希有な新品として購入したのは700万画素級が1.3万円を切っていたのに驚いてしまったからであった。実際に撮影に使用してみると、そのキュートなボディに反してなかなかのじゃじゃ馬だったのだけれども、手のひらに包み込まれる700万画素級は、ぴたりと決まれば差し引き無しで美しい画像を提供してくれた。それまでもカラーはデジタルでフィルムはモノクロが残ればいいやと嘯いていたのだけれども、その時のカウントダウンが確実に進んでいたことに今更ながら気づかされた。実際のところ今、つまり本稿執筆時にはすでにその時は過ぎているのかもしれない。0円プリントの消滅がフィルム運用の終了だと思っていたが、先に感材の方が雲行きが怪しい。まあ、その辺りの事情を掘り下げると収拾がつかなくなるので話題の矛先を改めよう。
 クールピクス775というデジカメは一度買い逃したことがある。拙僧の戦域内のハードオフのジャンクコーナーにいい感じにやれたボディのみの物件が780円だかで転がっていたのである。ところが、その当時拙僧は単三型電池原理主義者だったので愚かにもパスしてしまったのである。勿論、後日思い直して単車を走らせたのだけれども後の祭である。あのハードオフは大抵の場合ろくな物は無いのだけれども稀に美味いブツが転がっているので気が抜けない。いや、本当のところ拾い上げるのに躊躇した理由があるのだ。それは拙僧が記憶していたよりボディマスが大きかったのである。その頃は既にクールピクス7600を手にしていたから、あれに比べるとハムスターとモルモット位の大きさの違いが有った。まあ、それは大げさだけれどもなんだかがっかりしたのは確かだ。冷静に考えると、3倍ズームレンズと液晶ビュワーと受光素子と単三電池2本を組み合わせたら殆ど余分なスペースなんて無いはずだから、世代による技術の差を目の当たりにさせられるな。それに実際に手に取ると意外と無骨なのである。この無骨というキーワードは重要になる。それは兎も角、2006年を紅白の上げ上げブギで心地よく見送った後の2007年のいやに暖かい新春に本カメラをキタムラのジャンク籠からサルベージした。価格は多分1000円くらいだったと思う。
                   ☆               ☆
 本コンテンツのポリシーは「いい加減な推測と都合の良い妄想」なのだけれども、今回は真面目な数字を述べたい。珍しく、ニコンの公式HPもチェックした。もっとも、理由は「ちょっと、おうつで外に出られない」という個人的かつ情けない事情なので、何時もの通り暖かい目で見てやっていただきたい。
 受光素子は1/2.7インチの200万画素級で当時の標準並。しかし、レンズは非球面2枚を含む3倍ズームレンズを搭載している。焦点距離はライカ判換算で38〜115mmと標準並だけれども、広角側でF2.8の明るさとマクロモードで4cmまで寄れるのは立派で、撮影画像を眺めても湾曲は否めないもののレンズのパワー不足を感じさせられることは無く、ニッコールの名に恥じない。凄いのはここからで、256分割測光はF5のテクノロジーを導入し、ボディ上部のダイヤルによってポートレイトや日中シンクロなど7つのシーンモードを選択できる。このシーンモードの選択肢は増えに増えて、あまり良く覚えていないけれどもクールピクス7600になると30種類以上のモードが用意されていた気がする。それぞれに詳細なヘルプ情報が用意されていたから、車中2泊の昆明〜北京の列車旅行の時間つぶしにはもってこいだったな。撮影は他のカメラでしたけど。
 細かいところでも良く考えられていて、撮影モード時でもショートカットキーを押せば速やかに撮影画像を表示できる。当たり前のように思われるかもしれないけれども、オリンパスなんて割と最近のμデジタルだって画像を表示するためには一度レンズカバーを閉じて再度電源ボタンを押下するなんていうすっとこどっこいな作業を必要としていたのだ。(追記:っと、思っていたのだけれども、μデジタルの場合「QUICK VIEW」ボタンをダブルクリックすると再生モードに移行するのだ。そもそも、その他のオリンパスのシェルカバー式のデジカメも何らかの形で再生モードに移行できるらしい。自分の無知に乾杯。ご指摘くださったKITA殿、ありがとうございます(mm。)電源だって基本的には付属する専用リチウム電池を使用するのだけれども、汎用リチウム電池の2CR5も使用できるから軽油でも灯油でも動くどこぞの国の2stディーゼルの主力戦車みたいだ。拙僧なんて、そんな事は知らなかったから本カメラを暫く寝かせていたくらいだ。欠点は光学ファインダーがまるであてにならない位だけれども、電池が比較的持つので致命的な欠点にはならないだろう。むしろ、液晶ビュワーを使うとあっという間に電池が無くなってしまうデジカメが当たり前のように転がっていた時代なのだから妥当なものだろう。これで下馬評ではIXYデジタルと同等のボディマスだというからニコン者はCAPAのリリースニュースだけ眺めていれば枕を高くして寝られるはずだった。南国は温暖でフルーツがてんこもりで褐色の娘さんもナイスボディだと聞かされていたからガダルカナルへ向かう船の底で辛抱していたのである。しかし、待っていたのはクーピー一家だったのだ。嗚呼、松本零士の戦場まんがシリーズが読みたくなってきたな。
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 ここからは拙僧の全くの妄想だ。現在、クールピクス7600は手放してしまったのだけれども、同じクーピースタイルの末裔のクールピクス3100と比べるとある推測ができる。プッチモニとしてある種の方向性が整ったクールピクス3100に対して本カメラは意外と無骨だ。ボディラインは下部から直線のまま立ち上がって上面直前で急に弧を描いている。しかも、上面はスパッと切れてエッジは鋭い。一見、同じように見えるパームグリップもおにぎりを彷彿させるクールピクス3100に対して、丸く面取りがなされているけどほぼ長方形。しかも、その張り出しはレンズ鏡頭と面一になっている。IXYデジタルが印象深いのでそう思い込んでしまうのだけれども、実際には本カメラはコロッとした丸いカメラではなく、R34スカイラインみたいな角張ったカメラなのである。
 恐らく、ニコンは本カメラに掛け値無しで本気を注ぎ込んだのではないかと思う。それは、今手元に有るクールピクス775よりもっと骨太で筋の通った本気カメラだったはずだ。しかし、ここでクーピー一家が介入してしまう。真面目な技術屋さんがしたたかな広告代理店にいっぱい食わされたのか、販促部隊が焦点を誤ったのかは分からないが、クールピクス775は一家全員のあらゆる購買層に受け入れられる方向に転向してしまい、結局あらゆる購買層に魅力に欠けるカメラになってしまった。この辺のお家事情を知ってか知らぬかが冒頭の長徳氏の発言ににじみ出ているのではと邪推するのだけれども、考え過ぎだろうか?
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 2006年は様々な意味でカメラ民族にとって激動の年だった。拙僧なんてのんきにクラデジカメにうつつを抜かしていたら、気づけばアグファもコニカも無くなってαシリーズはソニーに降ってしまった。クールピクスシリーズもLとかPとかになってからは(いや、それ以前からも)全く把握していないのだけれども、どうやらクーピースタイルはどっこい生きているようである。そう言えば、恋敵のIXYデジタルシリーズも800万画素級になった辺りから少し疲れてきたように見える。例のロワー労働者のスターもどこかへ雲隠れしてしまったようだし。
 久しぶりに随分長いコンテンツを作る気になったのだけれども、それは本カメラのポテンシャルの高さが市場に正当に評価されなかった、っというか拙僧自身も評価していなかったが悔しく思ったからなのである。拙僧はクールピクスシリーズの取り分けマクロモード時のコンティニュアンスAFを全く評価していなかった。それは、初期の傑作機のクールピクス950も、近年のクールピクス7600も全く同様に合わないのだ。それもただ合わないのではなく、コンティニュアンスAFでは合焦しているのにレリーズボタンを押下すると再びフォーカシングをして外すという頭痛がするほどのすっとこどっこいなシーケンスで、この点ではD70だって似たようなものなのだけれども、本カメラはすっと合焦するのだ。いや、どの撮影モードにおいても拙僧が手にした全てのクールピクスシリーズの中で最もクレバーなAFユニットを搭載しているのが本カメラだ。
 たまたま、拙僧の手にしたクールピクス775がアタリなのだろうか?そういえば本カメラは殆ど使用痕が無い。自動車の世界では広報車は特別なチューニング(アタリ出し)がなされていると聞くが、本カメラも広報カメラが回りまわって拙僧の手元に届いたのだろうか?まさかねえ。

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2007/5/18)

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