ニコン クールピクス5600について


E5600
伝統的に廉価モデルに弱いニコンの送り出した単三型電池仕様の廉価モデル

☆ジャンク度☆
不具合なし
撮影可能


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 ニッコール銘が嬉しい光学3倍ズームレンズ。


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 ナイスグリップが効果的なクーピースタイル。


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 小ぶりなボディはコロッとして可愛い。
 電源がレバー式から押しボタン式に変更になった。
 節度はイマイチ。


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 液晶ビュワーは小ぶりだが、光学ファインダーを大事にしている。


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 ボタンは小ぶりだが、こちらの節度は良い。


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 電源は単三型電池2本を使用。記録媒体はSDカード。



 

 時折素晴らしい画像を写しだすが、何かと使い勝手に問題がある。キムタク以前のクールピクスはそういうカメラだった。いや、キムタクの起用で全てが生まれ変わったようにパーフェクトになったわけではないのだが、ひとまず、安心して誰にでも勧めることができるようになった。
 本カメラの直系の祖先は2003年に登場した、クールピクス2100/3100である。ナイスグリップが特徴的なクールピクス775のスタイリングを踏襲し、単三型電池2本で駆動する、ニコンの最も廉価なクラスのデジカメとしてシリーズが始まった。本カメラは、400万画素級のクールピクス4100の後裔機として、2005年に発売となっている。710万画素級のクールピクス7600の姉妹機として登場した500万画素級デジカメだ。それまで下三桁に100番をあてていたのに、600番を与えるように変更になった理由は不明だ。同じようなスタイリングのカメラとして、前年に登場したクールピクス4200/5200のラインがあるが、こちらは電源を専用電池とし、撮像素子も1/1.8型と本カメラの1/2.5型よりも大きい上位機種である。
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 手に取るとコロッとしていて愛らしい。拙僧の手のひらにはすっぽり入るキュートなカメラである。上位機種のクールピクス5200では外装にアルミ系合金を採用していたが、本カメラは恐らく樹脂であろう。電源が単三型電池なのでクールピクス5200に比べて厚さが増している。電池室を兼ねたグリップは、張り出しは抑えぎみだが、ホールディングには十分な効果がある。大抵の普及機・中級機はIXYデジタルのようにフラットなフロントパネルだが、やはりグリップの効果は高い。ニコンは「ナイスグリップ」と呼んでいたが、残念なことに市場の反応はイマイチで、ニコンもキムタク以降はクールピクスS500のようなフラットスタイリッシュ路線に変更している。もっとも、ライバルのIXYもIXYデジタル450/500の頃だったから、割ともっさりしていた。同世代の同じようなコンセプトだとソニーからはサイバーショットDSC−W1が登場している。スタイリングだけで判断すると、本カメラの野暮ったさは否めないな。
 背面に目を移そう。気になるのが液晶ビュワーの小ささである。従来モデルに比べると少々大きくなったらしいのだが、ヨドバシの店頭でサイバーショットW1の大型液晶ビュワーの隣に並んでしまったら、贔屓目に見てもくすんでしまう。もっとも、ボディマスは本カメラは本カメラの方が1〜2周り小さいから、軽量性を求める女子層にはある程度の効果が有ったようだ。ニコンのこのクラスのコンパクトデジカメのパンレットをみると、ターゲットがフェミニン・コンサバ系なのを見ることが出来る。このナイスグリップを採用した初代のクーピースタイルであるクールピクス880クールピクス775は、驚くほど女子に人気が無かった。クーピースタイルとは、それまでスイバルのクールピクス950や、市場試験的な要素の強かったクールピクス800とは一線を画し、幅広い市場に対応した戦略モデルであったクールピクス880の登場の際に、販売促進としてクレイアニメのクーピー一家を創出したことから、同様のスタイリングを踏襲したモデルに対し、拙僧が勝手につけている命名である。子供からパパ・ママまで柔軟なニーズに対応しとうとした意図をくみ取ることは出来るが、かえってキャラクター性をあいまいにしてしまって市場に響かなかった。この点ではキヤノンの「クールな中田のIXY」のイメージ戦略に敗北したと言える。
 本カメラのニコンの公式コンテンツを見ても、「はじめてのデジタルカメラは、わからないことだらけ。「クールピクス5600」は、そんなあなたのためのカメラです。」なんて書いてある。その後には「かんたん」「きれい」「失敗なく写せる」の文言が並び、本カメラのコンセプトと、ニコンの偉い方々の表現力の限界を見ることが出来る。本当に「かんたん」「きれい」「失敗なく写せる」のか、その実感は少し先延ばしにして、本カメラの諸元から実力を読み取ってみよう。
 撮像素子は510万画素級、これに光学3倍のズームニッコールレンズを組み合わせる。焦点距離はライカ判換算で35〜105mmF2.9〜4.9と標準的だが、スペック的には不足は無いだろう。マクロモードはズームポジションがミドル域になるが、4cmまで寄れる。手ブレ補正機構は非搭載。手振れを感知して警告する機能があるが、これは単にシャッターが遅くなったら機械的に表示するのだろう。大した機能ではないので、初期のクールピクスも搭載している。これも本カメラが初ではないのだが、画像処理機能の「D−ライティング」は逆光時や露光不足の時に暗い所を自動的に明るくするものだ。確かに逆光時や暗い場面での撮影時に、妙にビビットな色彩になるので、そのような画像処理を行っているのかもしれない。他に、伝統的なニコンのデジカメの機能として「ベストショットセレクター(BSS)」がある。これはレリーズ時に何枚も連続で撮影し、ブレの最も少ない画像を撮影画像として自動選択するものである。物撮りには便利なのだが、レリーズのタイムラグは影響しない物の、記録が若干遅くなるので注意したい。
 さて、実際の使用感だが、これが芳しくないのだ。今回はオリンパスμデジタル30とディマージュF100を併用したのが、最も近代的な戦闘に不適格なのが本カメラである。なにしろ電源ボタンを押下してから、撮影可能状態になるまでが長く、10秒くらいかかる。3台の中で最も早く起動するのがμデジタル30なのは、これだけが専用電池なので単三型電池2本を使用する他のカメラよりも条件がイイのは仕方ないにしろ、21世紀のデジカメでこんなに起動が遅いカメラは久しぶりである。2年以上前に登場したディマージュF100は半分以下の時間で起動を完了する。もっとも、本カメラは実売で2万円台中判だったというから、価格帯はディマージュF100の半分以下だ。スリープ状態からの復帰も同じくらいかかるので、気分が萎えてしまう。レリーズのタイムラグやAFの速度は標準的だが、記録にこれがまた時間が掛かる。拙僧の安SDカードでレスポンスを求めるのも酷かもしれないが、500万画素級撮像素子のデータ記録時間が3秒以上かかって、しかもバッファリングによる連続撮影ができないというのは、いかに廉価モデルでも使い辛い。また、十分な明るさの光源下であればビビットでほれぼれとする美しい画像を描くのだが、ちょっとで日陰だとたちまち手ブレしてしまう。また、「D−ライティング」の効果なのか、妙にしらっちゃけた画像になる場合もある。ニコンの公式HPではISO感度は公表していないが、撮影画像のプロパティを見ると、撮影モードをオートにして撮影した場合、地下鉄のプラットフォームのようなかなり暗い場所でもISO感度は50で、びた一文ゲインアップしていなかった。どうも、夜景モードやサンセットモードだとISO100辺りまではゲインアップするようだが、夜景とかサンセットとかではなく、普通に部屋が暗いというモードは無い。「かんたん」「きれい」「失敗なく写せる」のがポリシーなので在れば、撮影モードがオートの場合でも、手ブレを防ぐために感度を自動的にあげるべきだろう。被写体の光源を鑑みて近似値をはじき出す撮影モードを選ぶようなカメラは「かんたん」とはいえないな。クールピクス7600に近い仕様だとすればISO感度は上限でも200だろう。ちょっとした日陰でも、たちまち手ブレを誘発するようでは困る。
 ちょっと許せないと思うのがマクロ撮影である。これが木の枝の梅といった被写体に全く合わない。実はクールピクスは伝統的にマクロに強いと言われるが、コントラストなどの条件の良い被写体だけの話である。クローズアップモードだろうがオート撮影モードでマクロONにしようが、木の枝の花の様な小さな被写体は全く結合しない。マクロ撮影したいのはデニーズのドリアとか照明下のアクセサリーだけではないのだから、この点は何とかしてい欲しい物だ。
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 繰り返しになるが、本カメラはキムタク以前の典型的なニコンのデジカメである、つまり、条件がいい時はすこぶる美しい画像を写すが、少しでも日が陰ったり、マクロ撮影で小さな花を撮影しようとすると、途端に上手くいかなくなってしまう。
 そうい指向を修正したのがキムタク以降のニコンのデジカメである。キムタク起用の背景には、ニコン内でも「このまま家電メーカーの覇権を許してはやばい」という危機意識が発足したのだろう。それで看板をキムタクに任せるのは、古いニコンファンとしてはがっくりだが、市場のニーズを読み取るという発想で商品開発を始めたのはよい事であり、実際にニコンのシェアが一定に確保できたのは良かった。実際、カメラの出来も飛躍的に向上している。
 しかし、デジ一眼のムーブメントで再びニコンは揺れているようだ。デジ一眼の難しいのは国内シェアと海外シェアがアンバランスな点であり、つまり、海外では日本のようなムーブメントにはなっていないのだ。それで今の所はキヤノンは静観しているのだが、ニコンは自社規格のデジ一眼を出してしまった。まだ、成功なのか失敗なのかは分からないが、自社規格というのはオープンソースや無料画像の世の中で、どの程度受け入れらるのか心配である。

   では、撮影結果(岡崎南公園散歩編)を見て下さい。

(了:2012/2/26)

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