NHJ Mach Power DX350について


DX350

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


DX350
 擦り切れて全く解らないが、どうやら鏡頭に焦点距離が書いてあったらしい。
 ライカ判換算の焦点距離は不明。
 光学ファインダーはパララクスが少なくて助かる。本カメラは電池消耗に弱いのだ。

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 MachPowerというのがシリーズネームらしい。ニチメンの「Che−ez!」みたいなものだろう。
 「5.1MEGA PIXEL DEGITAL CAMERA」と記述してある。
 出力画像サイズに限っては偽りは無い。

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 すっきりとしたボディ上部は電源ボタン+コマンドダイヤルという常識的なレイアウト。

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 ボディ背面。普通のデジカメの顔をしているから油断してしまうな。

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 再生画像のサムネイル表示やズームも可能。

DX350
 操作系は十字キー+2つのボタンのみなのだけれども、困ることは有りません。

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 撮影モードの表示画面。
 電源起動時には「NHJ」のロゴを表示する。

DX350
 パワーソースは単三型電池を2本使用。外部媒体はSDカード。


 トロツキストの拙僧が言うのも何だけれども、人類みな平等という訳にはいかず、身分相応というものがあるようだ。本コンテンツで度々登場するおもちゃデジカメというジャンルは、35万画素で液晶ビュワーレスで市場に通用する頃にはそれなりに使い道が有ったし良心的な製品も多かった。しかし、ちゃんとした300万画素デジカメが中古で2万円を切るようになると泥沼のスペック戦争に巻き込まれてしまうことになる。チェコの38t軽戦車は東部戦線の初期にはそれなりに使い勝手があったのだけれども、ロバート・キャパがコンタックスを担いでノルマンディに上陸する頃には流石に通用しなかった。とは言ってもミュンヘンもドレスデンもB−17によって焼け野原になっていたから、とりあえず動く車体をほおって置くわけには行かず、手元にある75mm対戦車砲を積んで必要最低限の装甲板で覆ったのがヘッツァーということになる。
 果たしてヘッツァーが役に立ったのか?そもそも、本カメラがヘッツァーに相当する名脇役に相当するのか?まずはボディを手に持ってみよう。
                   ☆               ☆
 ボディは多少厚いが正面積はクレジットカードサイズを保っている。黒野樹脂の塊にコマンドダイヤルから電源ボタンを経て、ボディを前後に分割するグレイのセパレートパーツが目を引く。ぱっと見はスマートだが、ジャンク籠で入手した本固体はかなり多くのすり傷が目立つ。アルミ製のレンズ鏡筒は、当初はデザイン的に削り出しそのままにしたのかと思ったのだけれども、どうやら焦点距離を記述したシルク印刷は擦り切れてしまったらしい。恐らく、素材や加工など、かなり安普請に作られたカメラなのだと思われるな。
 何しろシルク印刷が擦り切れているので焦点距離やF値は不明だけれども、レンズはマクロモード付の固定焦点。液晶ビュワーの他に光学ファインダーを持つ。勿論、フラッシュ付。インターフェイス回りは電源ボタンに、撮影/再製モードを切り替えるコマンドダイヤル、十字キーにメニューボタンと液晶ビュワー表示モードの切替ボタン、それにレンズの焦点モード切替スイッチである。これだけで撮影には必要十分。ルックスだけ見ると普通に使えるデジカメに見えてしまうな。
 ボディ上部の電源ボタンを押下すると液晶ビュワーに「NHJ TOKYO JAPAN」のロゴを表示し、撮影可能状態になる。立ち上がりは迅速で待たされるという感じは無い。同じくボディ上部のコマンドダイヤルによって「動画撮影、再生、スチル撮影、SCN、SETUP」の各種モードに切り替わる。「SCN」というのは初めは良く解らなかったのだけれども、どうやらシーン撮影モードらしく、メニューボタンを押下すると「逆光、人物、スポーツ、スノー/ビーチ、風景」の各種撮影モードが選択できる。もっとも、本カメラは固定焦点・固定絞りの簡易デジカメだから、恐らくシャッタースピードのさじ加減によって露出補正とフラッシュモードの設定を行う程度であろう。十字キーの上下でデジタルズームを操作し、左バーでフラッシュモード、右バーでセルフタイマーモードを選択する。動画撮影モードでは大した緒設定はできないが、スチル撮影モードではメニューボタンを押下すると液晶ビュワー下部にメニューを表示し、画素数モードを100〜500万画素級の5段階に設定できたり、ISO感度をオートとISO200モードに選択できたり、ホワイトバランスモードの選択ができたりで、これらを弄っている限りではおもちゃデジカメどころか中々立派なデジカメのように見える。他に背面には液晶ビュワー設定ボタンがあり、「撮影画像+緒設定表示、撮影画像のみ、液晶ビュワー非表示」が選択できる。とりあえず、コマンドダイヤルをスチル撮影モードにしてレリーズボタンを押下すれば、「ちょっとレスポンスがたるいかな?」っと思う程度で記録時間が少々かかっても、まあ500万画素級のデータが書きこまれていると思えば不満も無く、快適にスナップ撮影を続けることができるだろう。
 この段階で目に見える難点は電池消耗にかなり弱いことで、ちょっと疲れた充電池ではあっという間に撮影不可になってしまう。なので、ここは少し割りきって液晶ビュワーを非表示にしてマクロ撮影の時以外は光学ファインダーで撮影するとよい。レンズの同軸上に光学ファインダーがオフセットされているのでパララクス視差は殆ど問題にしなくて良いだろう。レリーズボタン押下後には撮影結果がちゃんと液晶ビュワーに表示されるので安心できる。本カメラは固定焦点だし、このクラスのデジカメで真面目にフォーカシングを確認できる液晶ビュワーを求めるのは無理な話だし、この点は妥協できる。本気デジカメだって電源オフ時にいちいちフラッシュ発光モードを忘れたり、マクロモードに切り替えるのに3アクションも必要だったり、いらいらさせられるシチュエーションは多々あるのだから、このようなおもちゃデジカメでさくさく撮影できるのは心地よいものだ。なんだか、レリーズ後に一瞬だけ表示する撮影画像が歪んでいるようにみえるのだけれども、スナップ撮影に熱中するあなたはそれに気付かないだろうな。
                   ☆               ☆
 これで話がハッピーエンドで終わればこんな良い世の中はない。しかし、それはある意味不平等だろう。カメラ雑誌の後の方のモノクロページに細長い帯のような枠で紹介されている「性能に自信有り!!脅威の価格破壊!!世界最大のカメラショーXXXで欧米のフォトレポーターに絶賛された純国産超望遠レンズ」なる6万円台の800〜1200mmの超望遠ズームレンズ。あれが、本当に自分で言うほどの高性能なのであればネイチャー写真の大御所さんも命がけの報道写真家さんも、わざわざ嵩張る普通自動車が買える位の高額レンズを抱えてドバイ国際空港をうろうろしなくても済むはずだ。拙僧など比較的治安の安定した北京だってフィルム一眼レフは肩にぶら下げても、兌換製の高いデジカメはレリーズボタンを押す瞬間までは内ポケットの中に入れて外目に曝されない様に気を配っている。赤鉢巻の白レンズを抱えて英語も北京語も通用しない地域を歩くなんて考えただけでも恐ろしいな。もっとも、件の大御所さんも実は撮影はシグマの軽量高倍率レンズで済ませておいて、雑誌記者のインタビューの時にはパンドラの箱に封印してあるのかもしれないけれども、これ以上の散策は拙僧の度量を超えそうなので話題を本カメラに戻したい。
 さて、本カメラが使用するSDカードは需要に対する供給が資本主義の理念に限りなく理想的なので1Gの容量の物が地方の三河でも千円台半ばで普通に入手が可能なのである。なので画像出力データが500万画素級でも撮影枚数を気にすることなくサクサク撮影できる。これがコンパクトフラッシュだと事情が多いに異なり、埼玉への帰郷の際には秋葉原まで足を伸ばす口実ができる程だ。ところが、SDカードをリーダーに挿し込み、画像データをPCに転送してインターネットエキスプローラーなりペイントショップなりで表示すると儚くも夢は崩れ去るのであった。
 固定焦点(パンフォーカス)なのだから、合焦している範囲は限られるので例えば遠景などの描写はそれなりなのは承知しているのだけれども、本カメラの吐き出した画像ときたら、まず合焦する範囲が狭いのである。固定焦点が成立するのはレンズの焦点距離が広角であり、見かけの合焦する範囲が広いので結果的に焦点調節をしなくても取りあえず鑑賞に堪える画像(写真)が得られる事にある。逆さ富士や雪の結晶のようなクリティカルな撮影はそれに適したカメラを使ってもらうとして、大抵の撮影はスナップ写真の部類であろうから、ライカ判のフィルムカメラでも28mmF11位のレンズで焦点を3〜5mに固定しておけば見かけは1.5m〜無限大に「それなりに」焦点が合っている写真が撮影できるのだ。端的に言うと「写るんです」はそういう理屈で成立っている。拙僧は固定焦点のおもちゃデジカメ/簡易デジカメをかなり評価しており、実際にそれに値する良いデジカメも多く手にした。それは、デジカメの受光素子はライカ判フィルムのアパチュアーに比べれば遥かに小さく、したがって焦点距離は極端に短くなるので固定焦点の恩赦に与れるのだ。例えば、目の前にあるAFユニット搭載を搭載するキヤノンのパワーショットA5は85万画素級単焦点デジカメだが、発売当時は紛れも無く本気デジカメ(キヤノンがこの当時、どの程度デジカメに本気だったかはともかく)だが、レンズの焦点距離は5mmだ。受光素子の大きさが2歳児の親指の爪とどっこいだから、これでもライカ判に換算すると35mmの焦点距離になる。
 ところが、そういう理屈とは全く関係無く、本カメラの焦点は極めて不安定なのである。まず、合焦する範囲が狭い事は既に報告させていただいたが、合焦する距離も不安定なのである。手前1mほどの地点に合焦したかと思えば5m位の所だったり、しかも合焦する範囲が画像の中央だとも限らない。というか、素直に中央に合う事は稀で左下の画像全体の1/4位の範囲だったり、合焦の範囲が近景から遠景まで斜めに横切ったりする。稀に、あまり完成度の高くない120判カメラで、いいかげんなロールフィルムの巻き上げを行うと、フィルムの平面性が不均衡になってアオリを使ったような画面の一部の近景から遠景までピントが合っているネガができることが有るけど、似たような極端な現象が起きるのである。しかし、そのくらいで驚いていては幾らバファリンが有っても足りないな。ホントに頭痛を覚えるのはこれからだ。まずは元画像へのリンクを用意したので「ロモグラフィも裸足で逃げ出す迷走画像」を見ていただきたい。

ラグジュアリーカー
キャブトンマフラー

 不思議なのは大抵の場合、被写体のキャッチなポイントに焦点が合っているのである。これは偶然の賜に過ぎないはずなのだけれども、前出の車はフレーミングを斜めに傾けて撮影しているにも関わらず、上手い具合に画像を斜めに横切る形でフロントマスクにピントが合っている。後者のキャブトンマフラーは上手い具合にカワサキのロゴに合焦している。この辺がおもちゃカメラの憎めないところだな。それでは、そろそろ頭痛薬を用意していただきたい。

大須
リサイクルショップ


 どうだろう?少しは笑っていただけただろうか?
 なんで、このような画像が出来上がってしまうのか真面目に分析すると、恐らく、本カメラはレリーズ後の画像記録にかなり時間がかかってしまうのではないかと思う。なのでレリーズ後も画像記録が完了するまでしっかりカメラをホールドしないと手振れで画像が波うってしまう。極初期(よく解らないけど赤軍革命の前かもしれない)のフォーカルプレンシャッターで撮影した自動車レースの写真で、タイヤがチキチキマシン・猛レースみたいに斜めに楕円に歪んでいるのを見たことがあるけど、あれは縦走りのシャッターが遅いので露光中に被写体が動いてしまうのでああいう写真になるのだそうだ。丸いタイヤが斜めに写してしまった写真を生理的に嫌悪する方々がいらっしゃる事は拙僧もしっている。しかし、欠点とも受け取れる当時のメカニズムを巧みに活用し、写真表現に生かしたと言う点は大いに見習う柔軟性を持ちたいものである。拙僧はネットコミュニケーションなどで知り合った「友人」の方々の写真は興味があるけど、実際に会う機会も無い(多くの方々は墓の下だ)「大写真家」の方々の写真は全く興味が無いとは言わないまでも、とりあえず記憶には残らない場合が多く忘れてしまう。件の自動車レースを撮影なさった方は自身もブカッティかなにかでレースをしていた数奇者の貴族の方だったと記憶している。そんな数奇者だから、当時のハイテクノロジーの写真撮影技術も斜めに使って、世の人々をあっと驚かせたかったのだと思うな。この辺りの記憶、全くあてにならないので真に受けないでくださいね。
                   ☆               ☆
 さて、被写体が歪む理屈は何とかそれらしく説明が付いたのだけれども、合焦する撮影距離が不安定なのは理屈に合わない。そもそも、本カメラは固定焦点だから画像全体が何となくピンボケで何となくピントが合っていると言うのなら解るけど、撮影画像を見る限り、明らかに合焦するエリアがあり、その周辺はアウトフォーカスになっている。これはレンズがへっぽこで収差がぐるぐる渦を巻いているとか、低画素だから情報を適当に補完しているとかではないようだ。500万画素級っていう数字は話半分にしても、被写体の合焦している部分はエッジも滑らかで、アウトフォーカスのさじ加減も滑らかと言うのは褒めすぎだとしても、ライカ判望遠レンズで絞りを開放にしたときの感じに似ていて、単純に受光素子やレンズが安普請だからと決め付けがたいものがある。
 いや、実際にはこのような不可思議な画像を作り出すのは受光素子やレンズ、そして処理系チップが安普請だからなのには間違いないのだけれども、不思議なことに被写体のツボとなる部分にのみ焦点が合う場合が多いのだ。例えば、1m先の単車のタンクのロゴや、3m先の電車内で斜向かいに座る女学生の指先、15mほど先の看板の文字など確かに撮影時に意識した部分にピントが合っている場合が多いのである。それで、被写界進度はツライチだったりするので実に不思議な画像を撮影できる。これは、ロモグラフィーやポラロイドで非鮮明な写真に傾倒なさっている方は一度手にして頂きたい物である。本当に不思議な写真(画像)が撮れるから。
 では、拙僧にとってはどうかと言うと、確かに本カメラで撮影した画像は不可思議で面白いのだけれども、そのアバンギャルドの度合いが既に35(歳)の呼び声を迎えたプレ・おっさんには刺激的過ぎて手放すつもりである。
 是非、スズキのチョイノリに骸骨ステッカーを貼って命がけで甲州街道を経由してデザイン系専門学校に通う女学生や、ヘソやその下の大砲に安全ピンをずらりと突き刺すパンク青年に愛用して頂きたい物である。
                   ☆               ☆
 冒頭でヘッツァーの話題に触れた。ヘッツァーは、もともと外国製(チェコ製)の罫線者の車体に、実用となる48口径の75mm対戦車砲搭載して、必要最低限の装甲板で覆ったものだ。主砲は中心線から右側にオフセットされて乗員の大半は左側に一列に登場する。その関係で重量バランスは弱く、そもそものパワーソースが貧弱だったことから、重量やサイズほどには軽快な機動と言うわけにはいかなかったようだ。タダでさえ、被弾性を考慮した楔形の戦闘室に、元々37mmというか弱い戦車砲を搭載した軽戦車のシャシーに、連合軍の主力戦車を打ち砕くだけのポテンシャルを持つ対戦車砲を積んだのだから、車内は狭く構造上右側の視野が極めて制限されるなど、欠点は決して少くなかったようだ。
 では、戦場で全く役に立たなかったかと言うとそんな事は無く、戦後もチェコで生産が継続され、一時的にスイス陸軍でも運用されていたようだ。つまり、ヘッツァーは対戦車自走砲であり、そのような運用化では大いに威力を発揮したのだ。前線でファイヤフライに肉薄しているドイツ軍歩兵からすると、何故見方の戦車が前線に突入してくれないのか不満だったと思うが。迂闊に遮蔽物の無い原野に出ようものならファイヤフライどころか、37mm砲のM3軽戦車にだって苦戦を強いられただろう。反面、ヒットアンドウェイという駆逐戦車/自走対戦車として適切な運用を行えば光るのだ。つまり、35万画素級のデジカメでもコンセプトとベースとなる技術が明確ならばそれなりに役に立つのである
 しかし、本カメラはどうひいき目に見ても数字で消費者を誤魔化した安物デジカメに過ぎない。勿論、そういうことが承知なのであれば充分なのだろうけど。
 兎に角、個性的なカメラなので一度は手にとってほしいものである。勿論、アンダー1000以下ならの話だが。
 本カメラに相当するのは、コンセプトと独自性tと当時の技術レベルが仇となって、まともに運用できなかったフェルディナント重突撃砲かもしれないな、

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2007/6/29)

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