ジャンク籠でよく見かけるサイバーショットと言えばまず海坊主型のPシリーズ、それから屈曲光学系の薄型ボディーのTシリーズ、最近は少なくなったのが回転レンズのFシリーズだろうか。UシリーズとかFシリーズでも高倍率ズームレンズのF505とかF707はあまり見かけない。何と言ってもPシリーズはかつてのソニーの顔であったから種類も多く、相当売れたのだろう。Tシリーズは比較的年式も新しく、ヒットもしているので数は多いのだが、例の撮像素子の不具合で完全に使えない物が多い。Fシリーズは根強い人気があったが、主流となるモデルではない。
拙僧のようクラシックデジカメばかり使っている者からするとWシリーズは最近立ち上がったもので、ジャンク籠での発見頻度も高くない。妙にこだわりのあるデザインが多いサイバーショットシリーズの中でも常識的にまとめた廉価シリーズという位置づけのようだ。実売が2万円半ばだったというから、ソニーの製品としては安い部類だろう。とはいえ、本カメラはツアイスブランドのバリオテッサーを搭載した720万画素級デジカメで、単なる安デジカメとは一線を画している。
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レンズはライカ判換算で38〜114mmF2.8〜5.2である。望遠側の暗さがちょっと気になる。いわゆる光学手ブレ補正機構は搭載していない。ソニーの公式HPによると積極的に感度を上げて手ブレや被写体ブレを防ぐのがポイントだそうだ。感度はISO1000相当までアップし、高感度でもノイズの発生を防ぐ技術を搭載しているそうだ。
外装はパッと見に金属の鈍い光沢を思い出させるがプラである。拙僧の個体は酷使されて傷だらけ。エッジは削れて樹脂面が露出している。レンズが沈胴してもレンズカバーが閉まらない状態だが、撮影時に開かないのに比べたら問題ではない。ソニーにしては常識的なパッケージングで光学ファインダーも搭載する。2007年登場のデジカメとしては珍しい。小型のコマンドダイヤルにて撮影モードを変更し、再生は専用のボタンが割り当てられている。Tシリーズだったらチマチマとしたスライドスイッチでの操作を強いられるところであろう。コマンドダイヤルを操作すると、液晶ビュワーにダイヤル状に配置したアイコンが切り替わり、なかなか楽しい。撮影モードはオートモードやプログラムモードを含めて10種類である。「ISO」のアイコンを割り当てているのは高感度モードであり、積極的に感度を上げて暗いシーンでもブレの少ない画像の撮影をアシストする。こういったモードを階層化したメニューから選択しなくてもいいのは便利である。
気になったのはUSB端子を保護するカバーがチープなのと、バッテリーのロックが無いことである。電池蓋を空けるとバッテリーが落っこちてくるのは野外だとトラブルの元になりそうだ。バッテリーは平たいかまぼこ型のNP−BG1で持ちは良い。誇らしげに張られたプロパガンダのステッカーに380枚の撮影が可能と書かれているが、実際にそのくらいの撮影には堪えるだろう。
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インターネット検索をしてもヒットするカメラではない。エントリークラスのデジカメが700万画素級に至った時代に、既にこの価格帯のデジカメを積極的に取り上げる趣味人の方はいらっしゃらないようだ。コンセプトに強い主張が無いせいか、メディアの扱いも小さかったようである。
しかし、拙僧は結構気に入っている。大体、ソニーのエキセントリックなポリシーは実際の使い勝手に比例していないものだ。ソニー臭さの少なさが、本カメラのメリットであろう。
では、
撮影結果(岡崎散歩編)を見て頂きたい。
(了:2011/6/11)