本カメラの登場した2001年夏と言うのは既にデジカメの主流は200〜300万画素級に写りつつあったが、まだまだ高額と言う事もあって各社130万画素級の普及機も用意していた。何せ64MBのコンパクトフラッシュが1万円近くしていた時代である。拙僧が始めて手にしたキヤノン
パワーショットA10もそんな廉価機の一つであっただろう。しかし、3倍ズームとAFユニットを搭載するパワーショットA10に比べて本カメラは遥かに割り切っていた。レンズはライカ判換算で42mmF4.5の単焦点、マクロモード付き固定焦点(パンフォーカス)でAFユニットまで廃していた。上位機種の
サイバーショットDSC−P30とは一線を隔している。もっとも、DSC−P30と本カメラは同じP二桁シリーズでも別物と言えるだろう。DSC−P30が上位機種のDSC−P50と外観的によく似ているに対して、本カメラのものは大きく異なっている。透明の樹脂製のパネルが埋め込まれているたりとデザイン上の工夫が見られるが、ボディサイズは固定焦点のカメラの割には大柄で、なにか安っぽい物が無理に豪華に見せている感が無きにしも無い。同じ、固定焦点デジカメと言うとオリンパスのC−100や
ファインピクスA101に比べると随分大柄である。もっとも、これには理由があってソニー独自のリチウムイオン・スタミナバッテリーが使用できるのだ。これによって撮影枚数は大幅に増え
ファインピクス2700なら32MBのスマートメディアを交換するたびに専用バッテリーを交換しなければならなかったが、本カメラは64MBのメモリースティックを3/4ほど撮ってもバッテリーの交換は必要なかった。ちなみに64MBのメモリースティックで116枚ほど撮れる。もっとも、ファインピクス2700は旧世紀のデジカメなので単純な比較はフェアではない。ただ、せっかくのスタミナバッテリーキットは別売りだったようで折角の2万円台のボディもキットを購入すると人並みの3万円台になってしまったらしからコスト安と言う点ではどうだろう。もっとも、ソニー製品にしては気が利いていて単三型電池2本でも動くので当面はそれを利用できるのだが、ソニーの公式会見ではあくまでも単三型電池の使用は緊急時と言う事なので、やっぱりキットも買ってくれと言う事なのだろう。そうすると、タダでさえ割高なメモリースティックも買わなければならないし、やっぱりソニーのフォロワーの方々の為の廉価機という感は否めない。
☆ ☆
それは兎も角使ってみよう。本カメラには電源スイッチの他に手動のレンズカバー用レバーが設置されており、それぞれはリンクしていない。なので、レンズカバーを開けるのを忘れて電源をONすると液晶ビュワーに「レンズカバーが閉まっています」とエラーメッセージが表示されるのだけれども、液晶ビュワーを非表示の場合は警告音が出るだけなので少し戸惑ってしまう。それでも、レンズカバーの自動化で要らぬ故障を誘発するカメラを山と知っているのでこれはこれで良いだろう。電源スイッチがイマイチ押し辛いが起動は迅速で当然ながらAFユニットが無いから撮影レスポンスも上々でついつい撮影枚数が増えてしまう。これは快適だ。液晶ビュワーは晴天下で殆ど見えなくなってしまうのだけれども、それでも正確なフレーミングでぱちぱち撮るのがこのカメラは楽しいと思う。
光学ファインダーの左にマクロモードの切り替えスイッチがあり、マクロモードにすると15〜20cmのマクロ撮影が出来るが、フォーカスが確認できるほどの液晶ビュワーではないので困難だろう。予め指の長さを測って指標にするのが良いと思う。
他の固定焦点カメラに比べて大柄で高いのが難点だが、良い事もある。カメラの基本機能が優れているのだ。例えばISO400モードがあって、レンズが暗いので過度な期待は出来ないが薄暗い室内程度ならフラッシュレスで撮影できる。インターフェイスはプッシュ式の十字キーがメインとなるが、当初は苦手だったがこの種のカメラを使っているうちに慣れてしまった。
撮影距離は60cm〜∞だが、流石に1mを切る被写体と遠景は厳しいようだ。大体、1.5〜5mほどの被写体がよく写るようである。発色やホワイトバランスは問題なく、流石21世紀カメラである。レンズが暗いので収差も少なそうだ。
☆ ☆
固定焦点のデジカメと言うと、もっと安価でコンパクトなデジカメが多くある。また、キットを含めた価格帯ならAFユニットを搭載したデジカメも候補に入ろう。ただ、本カメラはソニーのデジカメに共通するエッセンスを含んだカメラであり、これでなくては駄目と言う市場も有ったと思われる。最近元気の薄いソニーだが、ソニーだから買うと言う層もまた出てきて欲しいものだ。
では、
撮影結果を見て頂きたい。
(了:2009/5/6)