三洋 DSC−MZ3について


DSC-MZ3

三洋のデジカメが爆速動画デジカメを謳っていたのも今や昔

☆ジャンク度☆
液晶ビュワー破損
撮影可能


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 ノーブランドの光学三倍ズームレンズを搭載。


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 「STILL&MOTION」で動画デジカメをアピール。


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 印刷は擦り切れている。


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 オーソドックスな操作系。
 液晶ビュワー非表示モードがあるのが時代を感じさせる。

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 メニューもよく考えている。


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 記録媒体はコンパクトフラッシュ。
 バッテリーはオリンパスも広く採用したタイプ。  

 拙僧がティーンエイジや20代前半の頃、白物家電やオーディオを物色すると、ちょっと色気の異なるデザインで安い物件が商品棚の端の方に置いてあった。値段の安さで買うと、どうも店頭で見たよりも立てつけが悪かったり実際に壊れたりして、値引き率ではなく価格相応の商品を選ぶことの重要さを教えられたものである。それが三洋電機である。関西での評価は違うようだが、首都圏では三洋電機の”ウォークマン”を使っていると、「ああ、安物を買ったんだな。」と思われたものである。実際の所、事実その通りだったわけだし。なんで埼玉TVで再放送していたジャングル大帝のオープニングがフルコーラスでないか不思議だったが、あれも三洋電機が関わっていたのを成人してから知る。
 そんな三洋電機が「デジカメ」の商標を保有しているのは世紀に埋もれた事実である。だから他のメーカーは自社の製品を「デジタルカメラ」と紹介しても「デジカメ」とは言わない。「スピードライト」とか「エレクトロニックフラッシュ」と「ストロボ」の関係と同様である。ただ、既に「デジカメ」は一般名詞化しているので、マスコミや量販店が使用しても、いちいちクレームは付けないようだ。なにも形骸化した商標ではなく、ある時期までは三洋電機の製造するデジカメのシェアは世界トップであった。もしかしたら、今もトップクラスかもしれない。なのに三洋のデジカメの認知度が低いのはもっぱらOEMとして供給しているからだ。だから、我々がキタムラの店頭で手に取るあれやこれも実は三洋電機が組み立てている可能性はある。もっとも、そのデジカメの単価下落が三洋電機を傾けた要因の一つであろう。
 三洋電機が自社ブランドでデジカメを発売したのは1997年3月である(それ以前に、ImagePCというデジカメが存在したらしいのだが、エプソンのCP−100と同一のようだとしか分からない)。モデル名はDSC−V1でペットネームは「マルチーズ」。35万画素級なのは標準並みだったが内蔵メモリ機というのは少々時代遅れである。それでも、同時期のニコンはクールピクス100でキヤノンがパワーショット350なのだから、手堅くカメラらしくまとまっていた。同年11月には81万画素級でスマートメディアを採用したDSC−X1を出している。三洋電機のデジカメが注目され始めたのは翌年に登場した35万画素級のDSC−V100であろう。35万画素級と撮像素子は踏襲したが、撮影1秒再生0.8秒の爆速デジカメとして他社とは差別化を図っていた。当時、そんな高レスポンスのデジカメは無かったのである。また、音声動画撮影機能も目立った特徴であった。どうもOEM先に動画デジカメというジャンルで競合しない姿勢を示すお家事情もあったようだ。同年には81万画素級のDSC−X100が登場する。拙僧は5ヶ月後の1999年3月に登場したマイナーチェンジ後のDSC−X110を持っているが、中々美しい発色をする佳作である。単三型電池2本で起動するのも当時としては珍しかった。無論、持ちもそれなりだったが、何しろ8MBのスマートメディアが普通だった時代だから、単三型充電池で1日に30枚も撮れれば満足だった。ただ、爆速の実現の為か単焦点レンズなのはともかく固定焦点(パンフォーカス)なのは主力として使うには不安がある。それでも、当時はデジカメでは動く被写体は撮影できないとされていたから、フォーカシングレスの高レスポンス、連射撮影の存在意義はあった。以降、三洋電機は単焦点レンズを基本にして爆速と動画機能に磨きをかけて固定ファンを形成しつつ21世紀を迎える。
 21世紀早々に登場したのはIDC−1000Zであった。これは全く知られていないカメラで拙僧も本稿を執筆時に初めて知った。三洋電機は一方でビデオカメラメーカーだったから、そっちの分野の技術者にとってはマルチーズの動画機能など子供だましにしか見えなかったようだ。それでビデオカメラの要素を大幅に取り入れて満を持しての登場だったようだ。しかし、写真で見るからにも大柄で、記録メディアも専用の光磁気ディスク「iDPHOTO」を使用し、如何にも使い勝手が悪そうである。せめて、ソニーみたいにCD−Rにすれば二次使用も便利だったと思うのだが。技術先行でニーズを無視した典型的な失敗である。
 真打はDSC−MZ1であろう。念願の光学3倍ズームを搭載し、撮像素子も大型の1.8型の200万画素級を奢っている。現在ではコンパクトデジカメの撮像素子の大きさなんて誰も気にしないが、当時は撮像素子が小型で一つ一つの素子の面積が狭くなると解像・ノイズ・ダイナミクスレンジに著しく悪影響を及ぼすと固く信じられていたのだ。それは確かに本当なのだろうけど、大抵のデジカメに対するニーズは早朝の箱根ターンパイクでの限界走行ではないのだから、雑誌やネットレビューで言われるほど売り上げに響いていなかったようだ。それは兎も角、自慢の動画機能には磨きをかけ、連射機能の応用として明暗2枚の画像を取り込み、合成することで広いダイナミクスレンジを実現した「ワイドレンジショット」など、独特な撮影モードを搭載していた。
 しかし、それで従来のコアな三洋ファンが満足したかというとそうでは無いようだ。つまり、爆速の部分がスポイルされてしまったのである。撮影間隔はそれなりに短いのだが、起動とAFのレスポンスは人並みなのである。独特な操作系と特殊な撮影モードには三洋電気の意欲を感じるが、実際には他社の標準的な光学3倍ズーム機に比べても魅力に感じる程でなく、ちょっと取っ掛かりのイマイチさが否めない。
              ☆              ☆
 本カメラは2002年9月に登場したDSC−MZシリーズの最終モデルである。間にDSC−MZ2を挟むが、これはDSC−MZ1の改良機に過ぎない。本カメラは外観も操作系も一新した。
 外観はDSC−MZ1の三洋電機らしいエグさが無くなった。率直に言うと大阪人がデザインしたIXYデジタルである。ボディシェルも安っぽさが魅力だったアルミ素材からステンレス系素材になっている。グリップが無くホールディングに悪影響が出そうだが、表面の処理とボディの厚さで思ったほどではない。それでもグリップがあったほうが安心感はある。撮像素子は1.8型200万画素級を踏襲している。補完処理で300万画素級相当の画像が撮影できるとあるが、それほどありがたみがあるとは思えない。レンズはライカ判換算で37〜111mmF2.7〜4.9の光学3倍ズームレンズ。最短撮影距離は50cmでマクロモードだと10cmまで寄れる。常識的なスペックである。
 操作系もガラッと変えている。特徴的だったジョグダイヤルと十字キーの組み合わせは廃し、常識的な十字キーとボタンの組み合わせになっている。既にDSC−MZ1を手放して何年も経つが、操作系の印象が残っていないのは感動するほど良い使い勝手ではなかったのだろう。メニューを液晶ビュワーの左端に縦に並べて、左右でモードを変更するレイアウトは継承している。案外凝っていて絞り優先AEモード・シャッター速度AEモード・マニアル露出モードを搭載している。絞りは細かいピッチで変更できるので虹彩絞りを搭載しているのだろう。フォーカスモードもマクロ・無限遠の他にマニアルフォーカスモードを搭載する。ISO400モードで絞りはF8、フォーカス位置を5mに固定して速やかなスナップ撮影が可能だ。拙僧は大して必要性を感じないがTIFFファイルでの保存も可能である。通好みの機能の搭載が目立つ。
 グリップが無くなったのは電源が単三型電池2本から専用電池に変更になったのも一因であろう。正直言ってDSC−MZ1は電池消耗に弱かったから改良と言えよう。専用電池はオリンパスがμデジタル等で採用したものと同一でよく持つ。
 背面の電源ボタンでレンズが伸長し起動する。撮影可能状態になるまで5秒弱必要なので、この点では爆速とは言えない。しかし、AFのレスポンスはかなり向上している。同年登場のパワーショットA30/A40やクールピクス2500に比べたら高レスポンスである。撮影間隔も1秒に満たない。当時としては抜き出ている。連射モードでは1秒に15枚の画像を撮影できる。カメラを構えると親指の位置に左右に操作するシーソー式のズーミングボタンを配置しているが、DSC−MZ1の上下に操作するレバーに比べて使いやすい。人にもよるのだろうが、拙僧はどうもズーミングを上下の動作で行うのに抵抗がある。背面の上下に移動するセレクターで撮影モードと再生モードを切り替えるが、液晶ビュワーオフでの撮影モードを用意しているのは時代を感じさせる。
 本カメラの最大の欠点はレリーズ後にプレビューを表示しないことである。いくら撮影間隔が短いと言っても撮影画像を速やかに確認できるのがデジカメの大きな利点なのだ。これは従来の三洋電機のデジカメも同様で、どうも三洋電機のデザイナーは問題にしていなかったようだ。
              ☆              ☆
 単焦点時代に与えた「マルチーズ」銘は本カメラからは表記しなくなった。この後、三洋電機は「Xacti(ザクティ)」シリーズを立ち上げる。これは液晶ビュワーを持ったガングリップタイプのデジカメで、どこかシングル8のシネカメラを髣髴させる。実際、MPEG4を採用したムービー指向のデジカメで、従来の「ムービー撮影もできるスチルデジカメ」から「スチル撮影もできるムービーデジカメ」に大きく転回をした。拙僧も1台持っているが、取り回しがよく室内でペットのウサギと遊ぶ妻を撮影するには好都合なカメラである。
 それで「Xacti」はムービーに特化したデジカメとして進化するのかと思いきや、つまらない安デジカメにも与えたりして、どうも三洋電機はブランド管理が上手で無いようだ。そんな三洋電機もパナソニックに吸収されてしまう。HOYAもペンタックスのコンシューマ向けカメラ事業を手放してリコーに吸収されてしまうようであるし、自社ブランドでカメラ事業を形成するのはますます難しいようだ。

   では、撮影結果(春散歩編)を見て下さい。

(了:2011/7/3)

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