パナソニック ルミックスDMC−FZ10について


DMC-FZ10
ギミックで始まったFZシリーズが画質を手に入れ本物のカメラになった。

☆ジャンク度☆
不具合無し
撮影可能


DMC-FZ10 DMC-FZ10
 大口径のレンズが目立つ。
 フラッシュも高い位置にあって効果的である。

DMC-FZ10 DMC-FZ10
 ライカ判換算で35〜420mmF2.8の強力な光学12倍ズームレンズを搭載する。
 迫力のある鏡筒。

DMC-FZ10 DMC-FZ10
 ボディはルミックス、レンズはライカブランドである。

DMC-FZ10 DMC-FZ10
 レンズのボリュームを生かしたパッケージング。
 グリップの効果はイマイチ。

DMC-FZ10
 マルチモードAEを搭載する本格派。


DMC-FZ10 DMC-FZ10
 EVFは軽視されているようでだが、晴天下で液晶ビュワーが見え辛い時など重要である。


DMC-FZ10 DMC-FZ10
 それ程、合理化していないのが返って使いやすい。
 操作系は他のルミックスと異なっていて、同時に使うには混乱するだろう。

DMC-FZ10
 専用電池使用。ライバルのオリンパスやキヤノンは単三型電池を採用している。

DMC-FZ10
 DMC−FZ1を並べると、デザインを踏襲しながらスケールアップしている。

 コンパクトカメラのボディサイズに高倍率ズームレンズの組み合わせで成功したのは、光学10倍ズームレンズを搭載したオリンパスC−700UZが最初である。それまでの高倍率ズームレンズ機は、かなり高かったり大柄だったりしてママがお子さんの運動会用にハンドバックに入れるのには仰々しい物だった。2001年時に200万画素級は同世代のIXYデジタル(初代)だってそうなのだから、格別パワー不足と言うわけではなかったが、オリンパスも想像したよりこのジャンルのニーズが有ると知れたから、翌年には光学8倍ズームレンズに300万画素級受光素子を組み合わせたC−720UZが登場し、僅か数か月後には光学10倍ズームレンズに戻し、更に完成度を増したC−730UZが登場する。翌年の2003年にはマイナーチェンジを行った、C−740UZと400万画素級の撮像素子を搭載したC−750UZが登場して、この辺りが一定の完成形となる。
 ライバル会社の反応は慎重であった。カシオにはQV−2800UX/2900UXがあったが、この回転レンズ式ボディと光学8倍ズームレンズの組み合わせは歴史が古く、特にオリンパスに啓発されたものではない。明確に反応したのはパナソニックである。パナソニックのデジカメ市場参戦は意外と早いのだが、どうも煮え切らないカメラを細々と出していた。早い時期に300万画素級デジカメを投入してもいたが、満足な評価を受けた形跡はない。パナソニックが全面戦争に参入する覚悟を決めたのはルミックスブランドを興したDMC−F7であろう。冷めた目で見るとどうと言うことのない光学2倍ズームレンズを搭載した200万画素級コンパクトデジカメなのだが、金属係数が高い押しの強いパッケージングにライカブランドのバリオエルマリートと、当時、平家の栄華を誇っていた浜アユの起用で百鬼夜行のデジカメ戦場で一躍ネームバリューを確保する。この辺りは家電メーカーの覇者であるパナソニックにしてみれば易い仕事だろう。ところが、出だしは良かったのだが、続くモデルが地味なルミックスDMC−L20だったりして市場にインパクトを与えるには至らなかった。そこで目を付けたのが高倍率ズームレンズとコンパクトボディの組み合わせだ。パナソニックは更に手振れ補正機構をプラスした。ムービーメーカーとして豊富なノウハウのあるパナソニックにしてみれば容易いことだ。先行するオリンパスには手振れ補正は無いし、充分にイニシアティブを取れると思っただろう。
 かくて登場したのがルミックスDMC−FZ1である。オリンパスのC−730UZの登場に遅れること2ヶ月の2002年11月にデビューした。C−730UZのライカ判換算38〜380mmF2.8〜3.5の光学10倍ズームに対してライカ判換算35〜420mmF2.8の光学12倍ズームレンズを搭載。気が利いているのがF2.8通しの明るさを確保した点だ。勿論、コンパクトタイプ高倍率ズームレンズ搭載機としては初の手振れ機構を搭載する。俄然、ガジェット好きは沸騰した。ルックスも秀悦で、戦闘的ながらどこかエルマノックスに通じるようなアンティークな雰囲気を醸し出しており、京セラコンタックスの一眼レフにベルビアを通すようなオールドタイプの関心も引いたようだ。420mmF2.8なんてフィルム時代には考えられなかったスペックである。
 ネットコミュニケーション上でも瞬く間に話題の中心となった。しかし、実際にブツが浸透すると早い段階から不満の声がネット上に走り出す。一つは流し撮りモードやポートレイトモードなど、高倍率で明るいズームレンズを生かすシーンモードを搭載するものの、基本的にはオートカメラであり、任意の露出を設定できないなどマニアル要素が無い点であった。もう一つは画質である。特に肝心の望遠側の画質には失望の声が上がった。実はDMC−FZ1が高倍率で明るいズームレンズを実現の為に1/3.8型の小さな撮像素子の採用していた。200万画素級であることも不満を助長したようだ。レンズの望遠側の問題は、レンズのパワー不足が露見したのであろう。そもそも、パナソニックが想定したニーズは気軽に高倍率ズームレンズと手ブレ補正機構の組み合わせをギミックとして楽しんでほしい程度であったと思われる。ガジェットマニアはあれこれ弄り回すのが好きだし、300mmF4にテレコンを噛ませて露出をバラして鳥を撮るようなオールドタイプの満足も満たすことが出来なかった。そこで前線では、画質はイマイチで柔軟な運用は出来ないが手振れ補正機構を搭載したDMC−FZ1と、画質は申し分なくきめ細かな戦闘に対応できるが手振れ補正機構が未搭載のC−730UZの選択肢に悩むこととなった。当時は専用電池と単三型電池の優劣による対立も拮抗していたから、この点でも代理戦争が行われたことになる。
 露出の選択については、翌年の2003年8月に登場したルミックスDMC−FZ2にマルチモードAEを搭載し、ファームウェアのアップデートでDMC−FZ1も同様の仕様を実現できた。しかし、画質に関してはそもそもの撮像素子が小さいので如何ともし難い。勿論、パナソニックもこの問題に関心が無かったわけではない。そして登場したのが、このページの主題であるルミックスDMC−FZ10である。
                ☆           ☆
 まず外観から眺めてみよう。直線基調のボディに円筒の鏡筒の組み合わせのDMC−FZ1を踏襲したデザインなのだが、ボディ幅が大して変わっていないのに鏡筒がアンバランスにでかいので相当に押しの強い面構えになっている。細身の体に豊満なバストという感じで、普段女性に接する機会の少ないガジェット好きの琴線に触れるものだろう。よく見るとボディ表面は縮緬モールドがなされているのに鏡筒はきめ細かいマット面であり、レンズを取って付けたイメージを演出しているのだろう。その巨大な鏡筒に収まるレンズはライカ判換算で35〜420mmF2.8の光学12倍ズームレンズである。スペックはDMC−FZ1と同様だが、素性は只者でない。ライカ判換算どころかライカブランドのバリオエルマリートなのだ。ネームバリューはガジェット好きにもオールドタイプにも響くのだろう。撮像素子の大きさもライバルのオリンパス並みに1/2.5型になった。当然、イメージサークルを大きくする必要があるから、レンズもデカくなるのだ。400万画素級なのは浜アユを登用したギラツキ感からすると喰い足りない気がするが、パナソニックもそういう実感が有ったらしく、翌年には500万画素級撮像素子を搭載したDMC−FZ20が登場する。
 背面の電源スイッチをスライドすると、レンズが伸長して撮影可能状態になるまで約4秒である。当時のこの種のカメラとしては及第点だろう。撮影間隔は待たされることは無く快適である。ただ、望遠側になると合焦に少々手こずるようだが、大抵の場合は気にならないだろう。インターフェイス周りも基本的にはDMC−FZ1を踏襲している。階層メニュー等のデザインが、然程合理化していないので逆に感覚的に操作しやすい。ただ、この頃のルミックスの操作系は統一が取れていないので、DMC−FZシリーズ以外のルミックスと併用すると混乱するかもしれない。液晶ビュワーは標準的な物で格別優れていない。晴天下ではちゃんと満足に確認できなくなる。本カメラはそういうジャンルなのでEVFを搭載しているが、これも小さく感心できないな。EVFが見事なのは京セラ(当時はツアイスブランドを持っていた)のファインカムM400Rなのだが、これも知れざるカメラである。DMC−FZ二桁シリーズの特権としてMFモードを搭載する。この時に中央を拡大してフォーカシングを助ける機能が働くのだが、実用に耐えるものではない。AFがあてになるので大抵の場合は気にならないが、せめてフォーカスインディケーターを表示してくれれば置きピンとか絞りを絞ってスナップとか使い勝手があるのに残念だ。
  本カメラはDMC−FZ1の上位機種として位置付けられるが、シリーズとしては小型路線のDMC−FZ一桁シリーズと本格撮影に耐えるDMC−FZ二桁の2シリーズを並行して展開した。水冷4バルブのパワーソース(150馬力越え)もできたんだけど、空冷パンタ系モンスターを残すドカティの商売と似ているのだろう(そうか?)。ポリシーを共有しながらスケールが異なるのはステージに合わせてXR−250とXR−600を乗り分けるようなロマンがあるな。
 肝心の画質がどうなのか。それは各ライバル達の撮影結果と比べて頂きたい。
                ☆           ☆
 我々がジャンクで拾うのに気になるのは専用バッテリーのことだ。本カメラで使用するDMW−BM7は初期のDMC−FZ一桁シリーズとDMC−FZ二桁シリーズで採用しているものだ。ジャンクに入っている場合も多いだろうが、端子が小さな溝の中に奥まっているタイプなので、汎用充電器が使えない場合がある。最近、ケンコーブランドで、この種のバッテリーにも使えそうな汎用充電器が転がっているので、そいう需要もあるのだろう。この種の端子はムービーカメラに多いので、ジャンクムービーの趣味もある方には福音でないだろうか。
 もっとも、キタムラで3000円弱の価格帯だから、500円で拾ったカメラの為に調達するのは勇気が要るな。

 では、撮影結果を見て頂きたい。

(了:2011/9/1)

クラデジカメ系列メニューへ戻る 「意してプラカメ拾う者なし」へ戻る

inserted by FC2 system