エプソン CP−80Zについて


CP-80Z
エプソンCPシリーズ後期に登場した奇妙なデザインの廉価カメラ。

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


CP-80Z CP-80Z
 スライドスイッチと連動してレンズカバーがスライドし電源がONする。

CP-80Z
 ライカ判換算で35〜70mmF3.3〜4.6の光学2倍ズームレンズ。

CP-80Z
 メインボディ上部はレリーズボタンのみ。
 どの角度から見ても妙なデザインのカメラ。

CP-80Z CP-80Z
 撮影メニューは1段(基本機能)と2段(便利な機能)に階層化されている。

CP-80Z
 ズームボタンを押下するとズームインディケーターを表示する。

CP-80Z CP-80Z
 記録媒体が未挿入の場合に表示するアニメーション。

CP-80Z CP-80Z
 再生ビューと階層メニュー。

CP-80Z
 印刷ボタン。表示画像に印刷枚数を設定する。

CP-80Z CP-80Z
 光学ファインダーとズームボタン。
 光学ファインダーはパララクスがあり、あまりあてにならない。

CP-80Z CP-80Z
 階層メニューは液晶ビュワー右のリターンボタンとその下のメニューボタン。液晶ビュワー下の2つのボタンで操作する。
 説明が気が無く無愛想だが、下のボタンは取説には左が「A」、右が「B」とされている。

CP-80Z CP-80Z
 階層メニューは液晶ビュワー右のリターンボタンと下の2つのボタンで操作する。
 説明が気が無く無愛想だが、下のボタンは取説には左が「A」、右が「B」とされている。

 本カメラを手にれたのは随分前だったが謎の多いカメラだった。ところが今回のコンテンツ作成の為に情報収集を始めたら、結構集まったのでびっくりしている。エプソンのデジカメの採番は、旧世紀の35万画素級デジカメCP−100の頃から「CP−」+「3桁眼が連番」+「2桁眼がサブタイプ」+「0」+「Z(ズームレンズ搭載機の場合)」というルールになっていたが、本カメラは異なっていたのでいつのカメラなのか分からなかった。しかし、今回の調査で2001年の9月に発売されたことが分かった。これは、300万画素級多機能デジカメのCP−920Zよりも後で、採番の冠に「CP−」が付くカメラとしては最後のモデルに当たる。この後、エプソンは1年半のブランクを経てL−300/400を出すがパッとせず、コシナと提携した距離計連動機R1−Dを出して以降カメラ販売は撤退したようだ。スキャナとプリンタで充分儲かる土台が出来たのであろう。兎も角、エプソンのデジカメの一時期の区切りを付けたカメラとしては充分すぎるほど奇天烈で難しいカメラである。
 まずルックスが過激である。ティアドロプと言うか涙型と言うか、そういう名前をつければ可愛いのだけれども、実際のデザインは四角いボディの角を無理やり丸めてあり、色彩からして間延びしたハットリ君のにも見れる。これが小さく、ペンダントのように吊れるのならファッショナブルかもしれないけれども、本カメラは単三型電池を4本も使用しガタイも大きくゴツイ。また、重さも結構あるので女性の首に吊るすには不適当だろう。外装はプラで青い部分はいかにもデジものに使われそうなムクの安プラスチックである。銀の部分もプラだがこちらはラバーめいた加工がなされていて手に粘つく。まあ、お陰で滑らずグリップできるのだが、もう少し節度のある加工はなかった物かと思う。拙僧は初め防水カメラかと思ったが、勿論、そんなお金のかかったカメラではない。CP−800Sでは金属外装だったりして、不器用なりに見栄えをよくしようと言う努力が見えるが、本カメラのそれは完全に明後日の方向に暴発している。
 本カメラのコンセプトは明確で、要は「可愛いデザインで難しいカメラの基礎知識を身につける必要も無く操作が出来、綺麗な画像を作り出す安価なカメラ」ということだろう。可愛いデザインかどうかは人によるところもあるのだろうけど、拙僧にはどうももともとゴツイボディの角を丸めて無理やり可愛らしさを装っていると思える。体育会系男子が女装しているようなものだ。まあ、それはいいとしてもカメラの基礎知識を極力排除している方向性はかなり徹底していて、逆に操作を分かり辛くしているようにしか思えない。実際、本カメラは取説が無いと素のままでしか使えないカメラだ。ボタン類には必要最低限の表記もしておらず、レンズの焦点距離や画素数の表記も省略されている。カメラらしい表記はモデルネームととメニューボタンの「MENU」、辛うじてレンズ鏡筒に書かれた「ASPHERICAL LENS OPTICAL 2x ZOOM」の文言だけである。階層化されたメニューは全てイメージ化されたアイコンであり、これが直感的に分かり辛い。そもそも、メニューを表示するのも一苦労なのである。メニューボタンはあるのだが、じつはこのボタンは階層化されたメニューアイコンを表示するために存在するのではない。液晶ビュワーにルートメニューアイコンや諸情報の表示非表示、液晶ビュワーの表示非表示を設定するものであり、常識的なカメラなら「DISP」とか「表示」とかそういう表記をされるべきボタンなのである。実際の階層メニューの展開は液晶ビュワー下の2つのボタンの左側を押下する事で行う。このボタンは取扱説明書ではAボタン、Bボタンと示されいるのだが、実際には左ボタンに「▲」印が表記されているだけで味気ない。他にリターンの表示の有るキーが液晶ビュワーの右にあるがこれはCボタンとされている。これは、伝統的にエプソンのデジカメの諸設定ボタンの意味はボタンのすぐ隣の液晶ビュワー内に表示された表示されることに因を発してるところにある。実際に左ボタン(Bボタン)のすぐ上には液晶ビュワー内にカバンをイメージしたアイコンがある。この状態で左ボタンを押下するとアイコンがカバンを開いた物に変化し、機能をイメージしたアイコンが液晶ビュワー右側に並んで表示される。
 さて、折角表示したアイコンも直感的には分かり辛く苦労する。もっとも、幸いエプソンは面倒見の良いメーカーなので今でも取扱説明書がダウンロードできるので安心だ。表示したメニューは基本機能といわれるもので上から「セルフタイマー」「チューリップ(?)」「人と日光」「豆腐に切れ目」「開いたカバン」のアイコンを表示するが、それぞれ「セルフタイマー」「マクロ撮影」「逆光時撮影」「便利な機能への遷移」「メニューを閉じる」を意味する。メニューは階層化され「便利な機能への遷移」で便利な機能メニューを表示する。便利な機能は上から「H」「封筒と写真」「三日月」「WB」「切れ目の開いた豆腐」のアイコンを表示する。これは上から「ハイパー」「Eメール」「夜景を撮影する」「ホワイトバランスを固定する」「基本機能への遷移」を意味する。「ハイパー」はエプソン独自のデジタルカメラ専用画像処理技術Hypict(EPSON Hyper Picture Technology)というもので、要は本当は200万画素級受光素子なのだけれども画像情報の補完で300万画素相当の出力画像データを得られると言うものだ。エプソンではCP−700Zにも搭載された機能である。「Eメール」はEメール用に780x480ピクセルの小さな画像を記録するモードである。操作系も分かりやすくした努力は見え隠れするのだが、基本的には左ボタンでアイコンを選択し、リターンキー(Cボタン)で決定する。決定されたアイコンは液晶ビュワー左側に表示され、現在のモードが確認できるようになっている。これは説明すると分かりやすそうだが、取扱説明書が無いと中々直感的には分かり辛い物だ。基本機能の機能と便利な機能の機能は両立でき、例えば逆光時撮影をハイパーモードで撮影したい場合、基本機能メニューで「逆光時撮影」アイコンを決定し、便利な機能メニューに移行すると小さな「逆光時撮影」アイコンが液晶ビュワー上部に表示され、「ハイパー」アイコンを決定時にも保持されるので両津は可能である。ちなみに、液晶ビュワーの上部には撮影可能枚数、ズームインディケーター、電池の残量インディケーターなどが表示される。
 本カメラの緒元の説明が後回しになったので紹介すると、受光素子は200万画素級で補完処理により300万画素相当の出力画素データを撮影可能。ライカ判換算で35〜70mmF3.3〜4.6の光学2倍ズームレンズを搭載し、絞りはF6.3の切り替え。シャッターは1/2と1/8〜1/1000まで。感度はISO100固定でフラッシュ使用時にはISO200モードに増感になる。最短撮影距離はノーマルモードで50cm〜無限大、マクロモードで30cmまでだから少々物足りない。マクロモードは望遠側に固定されるが、ブツ撮りなら広角側に固定される良い効果があるだろう。
                 ☆              ☆
 実際に撮影してみよう。ハットリ君めいた面構えでどうしても緊張感に欠ける。特に尻尾が右指に当たって不快だがホールディングに致命的に影響を与えるほどではない、当たり前だが。電源スイッチをスライドさせると連動してレンズカバーが待避しレンズが伸長し、液晶ビュワーを表示し撮影可能状態に至る。この間、約5秒で新世紀デジカメとしては遅い方だろう。フラッシュのチャージが必要な場合更に遅くなる。液晶ビュワーは晴天下では真っ黒になり殆ど実用に耐えない。新世紀デジカメとは思えないくらいびっくりする程チープな液晶ビュワーだ。かといって光学ファインダーはかなりパララクスがあるのでこれも実用には難しい。定価ベースで39800円と言うのは同じ2001年9月に発売されたフジの固定焦点(パンフォーカス)、単焦点廉価カメラのファインピクスA201と同じだから安普請なのは仕方ないのかもしれないが、あまりにも酷いな。
 そういう訳でフレーミングも困難なカメラだが、レリーズボタンも節度が無い。初めは半押しのフォーカスロックが出来ないのかと思ったが、取扱説明書には出来る旨が記載されているので出来るのだろう。ちなみにレリーズボタンは取扱説明書上は「シャッタボタン」となっており、ファインダーは「ファインダ」、モニターは「モニタ」になっていて、なるべく「ー」を省略する方向性になっているのはどういうアイデンティティなのだろう?レリーズボタンを押下後は撮影画像が約5秒間プレビュー表示される。この時、液晶ビュワー左下には「OK」と表示されるが、その下にあるAボタンを押下するとプレビューはキャンセルされる。尚、プレビュー中でもレリーズボタンを押下すれば撮影は可能だ。
 完全なオートカメラでユーザーが任意で設定できる項目は限られている。画像サイズの変更も出来なければ圧縮率の変更もできず、露出補正も出来ない。出来るのは前述の通りアイコンで表示された逆光補正と夜景モード、ホワイトバランスの固定と300万画素モードくらいである。
 再生モード切り替えボタンを押下すると、液晶ビュワーが真っ暗になってから5秒ほどしてモザイク上の画像を表示し、さらに3秒ほどすると鮮明な画像を表示する。いったん、粗い画像を表示するのは旧世紀デジカメのニコンのクールピクス950等にもよく見られたギミックだが、本カメラの場合には緩慢な印象はぬぐえない。
                  ☆              ☆
 そういう訳でかなり不思議ちゃんカメラというかとほほカメラには違いない。子供や女性を意識したコンセプトなのだろうが、ボディサイズが大きすぎて手に余ると思われる。これなら、2倍ズームを単焦点にしても単三型電池2本仕様にしてボディマスを小さくするべきだっただろう。
 とにかく、コンセプトが開花していないのは兎も角、カメラとしての基本性能がお粗末過ぎる。エプソンのデジカメはカメラと言うよりはPCの周辺機器として発展してきたのだが、それなりに綺麗な画像を作り出すカメラとして認知されていた。本カメラもラチュードが狭くて背景が白飛びしてしまう傾向にあるものの、メインの被写体は現実に近い発色でそれなりに綺麗である。しかし、CP−700Z辺りから向上してきたカメラとしての基本性能が本カメラでは台無しになっているのが残念である。もっとも、本カメラ以降、エプソンのデジカメに対する熱意は急速に萎んでいくから時代的に必須なあだ花だったのかもしれないな。

   では、撮影結果を見ていただきたい。

(了:2009/10/24)

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